閑話 過去①
コーキ──
いつだったかはもう覚えていない。
本家へ行ったときに、俺はそいつに捕まった。
人を見て、美女という言葉と鬼という言葉を同時に感じることになるとは思わなかった。
黒の長髪。ドレスと帽子が紫色をしていた。ということだけ覚えている。
そいつは才能の塊だった。
没落した本家の末妹、歳は最後までわからなかった。
たった1人で本家を立て直し、あっという間に分家も掌握してみせた。
だからだろう。人一人の人生を戯れに変えることも容易くできた……。
俺はあいつに会ったその日から数年間、本家へ住むことになる。
女の扱いを教え込まれた。
豚の方がまだましって扱いをずっと受けた。
末妹のために何でもやらされた。
ただ、その末妹の戯れのために。
解放されたのは飽きたのか、気まぐれなのか……。
2年の月日が経っていた。
帰ってすぐに俺の妹が泣き出した。
怖い。と。
話し合ったが解決できず、俺1人をこっちに残して家族は逃げて行った。
鏡を見てようやく理解する。
末妹と同じ目をしていた。人を、人と見ないそんな目を。
だめだだめだ。擬態しないと……。こんな目じゃ……妹をまた泣かせてしまう……。
ハルと出会って、やんちゃを始めた頃に……末妹が死んだと聞かされた。




