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幼馴染が急に距離を置き始めたので、少林寺拳法始めてみました  作者: 10kg痩せたい
もう一人の幼馴染篇

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第十八話 すれ違い

時子──


~10月3週目火曜日 文化祭前~


 東雲さんと話をしないと。

 でも、何を話すの。私と学は付き合っている。

 譲るから学と付き合えと?……そんなの……できるわけない。


 ただ、西片については警告をしないと。あの男は絶対にだめ。彼女を必ず傷つける。

 そうして彼女を探すけど、話せるタイミングが見つからなかった。西片や日外さんが近くにいたり、クラスメイトと会話していたから。


 学も東雲さんを避けているように見えた。

 どうしてあんなに仲良かった2人が……わかっている。私と西片のせいだ。

 これは西片だけのせいじゃない。私が、彼女と学を引き裂いた。だから今、彼女は西片の方へ倒れそうになっている……。




 たまたま。本当にたまたま体育館裏に行った。倉庫のイスを借りに行くためだった。


 体育館裏でぼーっと空を見つめる東雲さんを見つけた。……妖精のように可愛いなって思った。


 でも、その顔が怒りの形に歪んだ。

 どうして?もしかして学とのことを知られた?それでも、私は彼女に話さなければならない。


「あの。東雲さん。お話があるの」

「……」


 彼女は私の存在を無視するように。目をつむる。

 ごくりと唾を飲む。私も緊張している。何から話せばいいかわからなくなる。


「お願い。話を聞いて」


 東雲さんはもう一度私を睨み……はぁと大きな溜息を出して、体育館の中へ入って行こうとする。


「ちょっと待って!」


 咄嗟に彼女の手を掴んでしまった。その手を……強く振り払われる。


「あなたと話すことなんか何もない!」




~10月3週目日曜日~


 せっかく作戦会議で集まったのに、今日は学に話しかけられる元気が無かった。

 でも話さなきゃ……。


「あのね、学。東雲さんのことなんだけど……」

「話すことは無いよ」

「……っ!おねがい!少しでいいから話を!」

「……」


 席を立ち、店を出ていく学。


 お願い……お願いだから、話を聞いてよっ!




~10月4週目金曜日~


 クラスの噂好き女子さんからお話を聞く。

 C組で新しいカップルが出来たという話……。


 東雲さんだった。止められなかった……。


 私のせいだ私のせいだ私のせいだ私のせいだ。




 放課後、私に何も話しかけずに寂しそうに帰ろうとする学に声をかける。


「ねぇ、ちょっとお話良いかしら」


 彼はビクリと体を大きく震わせた。後ろめたいことがあるのかしら。言いたいことがあるなら、全部吐かせてみせるんだから。


「場所、変えましょう」




 変な噂が立ってしまって視聴覚室は使えなくなった。

 なので、教室棟のあまり人が来ない廊下で話すことにした。ここならもし見られてもオープンな場所だから変な噂にはならないだろう。

 学に迷惑をかけるわけには行かないから……。


「あいつのクラスメイトから変な話聞いたんだけど」


 クソ男と東雲さんが付き合い始めたこと。C組の男どもがヤったヤってないと盛り上がってる場にそのクソ男もニヤニヤしながら参加していたことを共有する。


「けど普通に付き合っているならそういうことだってあるだろう。特に変なことはないから、もうあとは自分で決めればいいんじゃないかな」


 バチーンと平手打ちをかましてやる。鳩が豆鉄砲を食ったようってこういう顔か、と関係ないことを思ってしまうが軌道修正。


「あなたはそれでいいの」

「……さっき言った通りさ」


 バチーンと平手打ちをかましてやる。ちょっと涙目だ。


「……正直に言うといやだって気持ちはあるさ。でも俺にはもう彼女もいるんだ。互いにもう高校生なんだからさ、ここが離れる丁度いいタイミングなんだって思うんだ」


 バチーンと両平手打ちをかましてやる。両方の頬がもう真っ赤だった。


 これは私の我侭で!自己満足で!偽善だってわかってる!


「でも止められるのはあなただけなの!」


 言葉がまとまらない。感情がまとまらない。どうにもならなくて「もういい」と伝えて逃げ出してしまった。




学──


「何で居るの」


「居ちゃ悪い!!??」


 自宅に帰ってきて鍵が開いていると思ったら、自室に時子が訪ねてきていた。あぁ、そういえば合鍵を渡していた。

 言葉を探していると、近づいてきた時子が氷嚢を俺の頬に当ててきた。


「ごめんなさい……」


 あぁやっぱり俺の彼女は可愛いなぁ……。


「さっきも言ったけど……時子には申し訳ないけど、俺が嫌だっていう気持ちはまだある。でもそれは自分勝手な気持ちだ」


「西片くんは高校に入ってからは真理愛としかデートはしていないと君から聞いていた」


「真理愛はもちろん西片くんだけ見ていると俺は感じている」


「1対1の正しい交際であるならば……なら、俺が口出し出来ることは何もないって考えているよ」


 時子は自分を責めている。真理愛から俺を取ってしまったと、そう考えていた。


 でもそれは違う。俺が時子に惚れてしまったんだ。

 どうしようもなく、惹かれてしまったんだ。

 だから、今があるんだ。


「俺はこの結果を望んだし、今の状況は全部受け入れられてはいないけど、納得しているよ」


「……私は、納得できないぃ……」


 俺の胸に顔を埋めて泣き始めてしまった。

 こんな時子は初めて見たけど、愛しいと感じてしまっている俺の心はもう曲げられないよ。















時子──


 最近、おかしい。西片につけている監視から正確な情報が上がってこない。


 西片と東雲さんが付き合うことになったのであれば、すぐに情報が上がってくるはず。


 なんで学校の噂からそれを知るの?

 イライラする。そんな無能を雇っているわけではない。何かが起こっている。

 私の命令が聞けないのなら、じゃあ誰がその指示を出しているのか。

 わかり切っている。私はまだ子供だと『舐められている』





「お父様、お母様、お話があります!」





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