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幼馴染が急に距離を置き始めたので、少林寺拳法始めてみました  作者: 10kg痩せたい
もう一人の幼馴染篇

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第十五話 文化祭

学──


~9月3週目土曜日~


 クラスの出し物がメイド喫茶になった。

 女子はみんな既製品のメイド服を着て接客すること、男子は制服……それが良いらしい……いやわからない。

 メイド服は平日中にクラスの女子が買いに行って、各員に配布済みなのだが、変じゃないか見てほしいという彼女のお願いに従って、今日は北条家を訪れることにした。


 近所の西片くんは部活でいないと言う事なので、特に気にせずインターフォンを鳴らす。出てきた時子に招き入れられるまま、彼女の家に入っていった。階段を上がり彼女の部屋へ一緒に入り、彼女はそのまま服を脱ぎはじ……「ちょちょちょちょい!!!!!!!」


 きょとんとした顔の下着姿の彼女さんはこてんと首を横に倒し「どうしたの?」と問いかける。俺は頭痛が痛くなった……。

 年頃の男を自分の部屋に招き、いきなり下着姿になるのはやめた方が良いと言う事をオブラート2重3重にして伝えたところ、自分の現状を顧みて、顔真っ赤にして俺を部屋の外に追い出した。


 10分ほど待っただろうか。彼女から入るようにとドアを開けられたので一緒に入り、メイド服に身を包んだ彼女を見た。


 なるほどなるほどなるほど。ドンキとかで売ってるなんちゃってメイド服じゃなくて、クラシカルなメイドさんな訳ですか。

 白い靴下に黒いパンプス。メイドさんのひらひらカチューシャにエプロンドレス。長い髪は三つ編みにされて、勉強の時に使っているメガネをかけている。背筋もぴしっとしてポーズは完璧。


 俺はその完璧なメイドさんを見て、言葉を奪われていた。


「変……かな」

 彼女は心配した声で俺に問いかける。


「……綺麗すぎて言葉が出なかった。」

 ようやく絞り出せた言葉を発した。


 俺の彼女はかわいい!とずっと思っていたけれども、これは本当に予想以上であった。

 語彙力が足らない……!完璧なメイドさんがそこにいた。


「そう、良かった……」

 と彼女はホッとした顔を見せたけど、どこかその表情に影を感じた。

 なんだか1週間前から時子が暗いことに気づいていた。聞いてもはぐらかされてしまい、聞けずじまいであったので改めて聞いてみることにした。


「時子、この1、2週間、君が何かを抱えているように感じている。俺に話してもらえないか……?」


 時子はハッとした顔をして、また俯いてしまう。言えないことだろうかと、彼女の手を取り、彼女が話してくれるのをゆっくり待つことにした。


 彼女は大きく息を吸い、覚悟を決めて話し始めてくれた。


「先週の金曜日、東雲さんと会ったの」


 真理愛が爺ちゃんの店に来た日、その帰り道で時子とたまたま会ってしまったと言う事だった。

 彼女は東雲真理愛から南雲学を奪ってしまったことと、自分達の都合でそれを言えない状況になっていることに罪悪感を覚えていた。


 思い出せば朝の学習時間の時に真理愛は時子に話しかけていた。その時も、さっきのような思い悩んだ顔を浮かべていた。


「そもそもだけれど、俺と真理愛は付き合っていない」


「奪った奪われたなんて言うのはナンセンスだ」


「確かに互いに意識するタイミングはあった」


「でも高校生になって、それは変わってしまったんだ」


「気にするなというのは無理だというのはわかっている」


「ただ俺はもう時子のことしか考えられないし」


「君も……俺のことしか考えられないと思っている」


「罪……というものがもしあるというなら、それは俺達2人で背負うべきなんじゃないか?」


 俺は思いのたけを一気に捲し立てた。

 それを聞いても……彼女は悩んだ。それでも、抱えきれなくなったら俺に相談すると約束してくれた。


「相談するから……約束守ってね……守ってくれなかったら……嚙んじゃうんだから」




~10月1週目土曜日~


 いつものファミレス。

 そろそろどういうクジ運なんだ。なんてな、店員さんに頼んでいつもこの席にしてもらってる。遭遇する可能性があるからな。

 そして狙い通りか、今日もお隣が西片くん達だ。


 目の前の俺の彼女さんはなんだかとっても怖い顔をしていらっしゃる。


「おめ~」

「ようやく聖奈とそういう関係になれたわ」

「いやいや下品下品」

「お前もはやくこっちにこいよ?」

「わかってるって(笑」


 話を聞くと、どうやら西片の友達の中田くんがお付き合いしている聖奈さんと大人な関係になれたと言う事らしい。

 ちょっと前に幼馴染から相談されたのは彼らのことだろうか。いやプライベートを探るのは良くない。

 そうプライベートなことなんだから、彼らも少し声量を落としてほしい。お隣の俺達や周りの人に丸聞こえだ……。


 用事があるのか、あっという間に彼らは出ていった。


「はぁ……」


 時子が大きく溜息を吐く。

 いろいろと言いたいことがあるんだろう。俺もそうだな、二言三言は言ってやりたいことがあったかもしれない。


 男女の関係は決してやるやらないだけで解決できる問題じゃない。

 幼馴染にも言ったが、本当に自分を大切にしてくれる人か、本当に優しくしてくれる人か。自分は本当にパートナーを大切に出来ているか、パートナーに優しく出来ているか。


 そこを見落としているんじゃないかなって危惧をした。


 それを互いにできるパートナーが俺にとっては時子であった。

 ごめんな、お前の幼馴染寝取って……という気持ちも無くは無かった。


 真理愛には伝えたから、きっと彼女は間違えないだろう。

 今まで過干渉になっていたけれども、真理愛が幸せになるなら……余計な接触は行わない方がいいのかもな……。




時子──


 クラスの噂好き女子さんから、C組でカップルが出来そうという噂を聞いた。

 東雲さんだ。


 私が学を夏休みの間ずっと占有してしまったから?

 私がいなければ東雲さんと学が付き合っていた?

 私は……。私が……。考えがまとまらない。全部私が悪いという結論につながる。

 私が西片に首輪をつけていたらこの2人は……。




 でも……でも、もう学がいない世界なんて……想像できない……っ。





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