第十二話 お付き合い
学──
~8月4週目~
誘ってくれた時子さんの別荘へ行くことになった。2泊3日の、初めてのお泊りだ。
駅で待っているとショーパン+浮き輪+サングラスという奇抜なファッションの時子さんがやってきた。テンション上がっているのが見てとれた。
昼には着きたいから朝早めにして良かった。そこまで駅に人は多くない。ちょっと……ほんの少しだけ恥ずかしい……。
「なんか今日変だけどどうしたの?」
「イヤナンデモ」
ただ、俺がおかしくなっているのはそれだけが原因ではなかった。忘れていたが、彼女は周りの目を引くほどの美貌。そんな彼女が俺と目が合った瞬間にホッとしたような笑顔で微笑んだ。俺は自分でもびっくりしてしまうくらい、べた惚れになってしまったようだった。
別荘に着く。
「今日やっぱり変だよ。私、なにか怒らせることしちゃった?」
「した……と言いますか、その、存在が罪、と言いますか」
「そこまで!?謝るから!なにしたのか教えて!ほんとゴメン!」
「オレノカノジョカワイスギ問題です」
「ん?オレノカノジョカワイスギ?」
オレノカノジョカワイスギ
おれのかのじょかわいすぎ
俺の彼女可愛すぎ
……変換が完了すると同時に彼女からボンっと湯気が上がる。
俺は今までなぁなぁになっていた事由を1つ確定させることにした。
「ここで過ごす前に。1つ明確にしておきたいんだけど!」
「は!はい!」
「好きです!どうしようもなく惚れてます!俺の彼女になってください!」
「は!はい!」
………
一瞬の間が開く。
「「ふふふっ」」
もう何度も体を、いや心も重ねているのに俺達は恋人になっていなかった。これは申し開きのしようもないが、俺がヘタレであった、ただそれだけが理由だ。
でももう俺達は互いに互いを必要としていること。互いに相手がいないことを許容できない関係になっていた。
認めて、謝って、もう一度告白して、そしてキスをした。
初日は全部掃除に使った。だけれども、管理会社が入っているおかげか、そこまで大きな清掃は必要が無かった。
2人で夕暮れを見て、一緒に料理を作って、夜を過ごした。
「学、私もあなたのことが好きよ……」




