第五話 監視(デート)引く監視()
学──
~7月2週目金曜日~
金曜日の放課後、北条から話しかけられた。どうやら互いの幼馴染は同性の友人と遊ぶということで、北条も今週は予定がないということだった。
「……あのね、行ってみたいところがあるんだけど」
「OK、何時頃にする?」
「ずいぶんあっさりOK出すのね……」
「わかるだろ、ちょっと疲れた……」
「そうね……じゃあお昼も目当てのお店あるから、10時くらいにいつもの駅でどう?」
「りょ」
いつもの見張りのように合意で返す。お台場へ遊びに行く、と……ん?これって監視()が付かないデートでは?
~7月2週目土曜日~
「ここ~!ドラマで見て来たかったんだ!お台場の海岸~!ビルと海岸が並んでるってなんか不思議だよねぇ!あ、写真撮ろ!」
えらくテンションの高い彼女に連れられあっちへダッシュ!こっちにダッシュ!しながら写真撮影に付き合わされる。
今日の彼女はお嬢様チック。青の星柄のトップスに、薄い水色のロングスカート、白いサンダル。頭の上にはかわいい麦わら帽子が乗っている。
モデルでもしているのか?と思うほどに多彩なポーズで写真を撮られる北条。
くるくる、とことこ、ぴょこぴょこしていて……そのなんていうか……とても今日は可愛らしい。
ようやく写真撮影も落ち着き、追いかけて息が上がった俺がぜーはーしていると彼女が水を買ってきてくれた。
「おつかれっす」
「あ、あぁおつかれ。砂浜全力ダッシュはちょっと疲れた……」
「若いもんがなさけないのぅ」
同い年のはずだし、同じ帰宅部のはずだった。どこで差が付いたのか。慢心、環境の違い。
「ありがと、ね。先週のカラオケもだけど……ちょっとストレスたまっちゃってさ……気分転換したかったんだ」
「めちゃくちゃわかるから安心して。俺もやばかったらお願いするから」
「ひひっ、どうしようかなぁ~」
「おいまてこら」
その日は
ただ歩きまくって
ただ喋りまくって
ただ一緒にいるだけなのに
俺達はとても楽しくて
ちょっとだけ帰るのが嫌になったそんな日を過ごした。
帰りの近所のターミナル駅で、西片に微笑む幼馴染を見るまでは……。




