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幼馴染が急に距離を置き始めたので、少林寺拳法始めてみました  作者: 10kg痩せたい
もう一人の幼馴染篇

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第四話 素敵な男の子

学──


~7月1週目土曜日~


 今日は互いの情報の共有のためにとあるファミレスへ集まった。学校やそれぞれの自宅からは距離があり、知り合いに鉢合わせることは無いと考えた。

 ここはファミレスには珍しく、席ごとに仕切りがある。隣の席などをあまり気にしなくて良いので密会にちょうど良かった。


 今日の彼女は普段よりもラフな格好で、Tシャツジーパン、髪をゴムでまとめただけという姿だった。合流時から暗い雰囲気だったので少し場の空気を良くしようと俺は一言彼女に伝えた。


「北条さんでもダサTとか着るんだね」

「あ゛?レッサー君だが?市川市民なめると殺すぞ」


 俺は初めて彼女の地雷を踏んだ。その日の支払いは全て俺持ちになった。ぴえん。

 暗い理由は簡単に言うとあの日、ということだった。それは悪いことをした。


 2、3個他愛もない雑談を混ぜて、場の空気を入れ変えてから、幼馴染から馬鹿正直に相談された内容を彼女に伝えた。

 より落ち込んでしまったように見える。


「違う、痛いの。ちょっと待って」


 彼女は薬を取り出し水で流し込むとテーブルに顔を伏せた。そこで俺達の会話は一度止まる。

 どうしようか、と困っていると隣の席から聞いたことのある声が聞こえてきた。


 スマホの通知が鳴る。目の前の彼女からだ。


『喋らないで』


『了解』

 そう返し、西片と彼の友達の会話に耳を向ける。どういう偶然だ?と考えた。本当にここにして良かった。

 俺達が一番奥の席、かつ、仕切りのおかげであちらは俺と北条の存在に一切気づいていない。


「最近どうよ、あの子」

「だーめ。マジガード硬い」

「笑える。例の幼馴染とかって奴のせいか?」

「そーなんだよ。毎回相談してるみたいで全部幼馴染に言いくるめられてんの。そっちはどーなん」

「こっちはばっちり。もう少しでヤれるわ」

「うらやまー」


 ゲスい話を大声で話す馬鹿2人。今のところ彼女の反応は無……いや。目の前の彼女が睨むような目で俺を見てくる。きっと睨みたいのは俺ではないと思いつつも少しビビる。


「そういえば幼馴染ちゃんとはどうなの?」

「どうだろうね。恥ずかしがっているのかなかなか顔を見せてくれないよ」


 やめろ!こっちのテーブルの温度が5度は下がったぞ!


「家と家での約束だからね。どうなるかはわからないし……良好な関係は続けるよ」

「うわークソヒデー」


 スマホにメッセージが飛んでくる。1件、2件、3456789……待て!待て!待て!

 ふと彼女を見るとその目には涙が溜まっていた。




 30分ほどして、彼らは出ていった。彼女は顔を伏せたまま動かない。

 俺は席を立ちドリンクバーからホットミルクと暖かい紅茶とジンジャエールを持ってきた。


「これ、飲むと多分楽になるから」

「……ん」


 彼女はホットミルクを受け取り砂糖を入れて飲み始める。目が赤くなっているのに気付いたが、今は触れないでおこう……。

 少しムカついて拳をソファーに叩きつけた。


 ん?なんで俺は彼女のことなのに……怒っているんだ?




 ホットミルクを飲みほし、紅茶も全部飲み、追加でホット抹茶ラテを取ってこさせられて……ゆっくり過ごした。

 会話はたまに思い出したかのように、ポツ……ポツとする程度だった。




「……ねぇカラオケいかない!?」

「大丈夫なの?」

「へーき、薬効いてきたから」


 強がっているのがわかった。ただ、1人になりたくないのもわかった。俺も、同じだったから。

 俺の場合は、北条に出会えたから、怒りのやり場が散らせたのかもな……。


「うし、行こうか!俺みかんの歌うたうわ!」

「なにそれ!ぜんぜん知らないんだけど!」


 俺の選曲に彼女が笑う。今日くらい表裏もなしに普通に遊んでもいいよな……。




 そしてその日の夜、プールへ行くことになったと報告しに幼馴染がきた。

 毎年夏は幼馴染とプールに行くこともあった。ただそれがクラスメイトに変わっただけだ。


 ……ただ西片がいるんだろ。それだけは簡単にわかった。だから行きたいんだろ、と。

 怒りを抑え込むのにずいぶん苦労した。なんとか笑顔を作って……。


「気を付けて楽しんでこいよ」

 それだけを伝えた。




時子──


 彼と約束したから無理やり来たけどやめておけばよかった。痛すぎた。さらに聞きたくもないクソ男の声が聞こえてきて……ぶん殴りそうになるのを我慢して涙が出てしまった。

 泣いてるところ彼に見せてしまった。心配させたかな……。


 それにしても勘違いもここまで来るか。お前に会って誰が恥ずかしがるか。本当に気持ち悪い。

 互いの両親の前だからぶん殴るわけにいかず歯を食いしばって我慢して赤くなっただけ。お前は死の一歩手前だったんだ。本当に気持ち悪い。

 東雲さんもなんであんなクソ男に引っかかりそうになっているんだ。何処が良い。1mmもわからなすぎて困惑する。




 それにしても南雲君はちょっと反則だ。女性の扱いに慣れすぎていないか。……きっと東雲さんのことを本当に大事にしていたからだろうな。

 ここまで寄り添える男性は貴重だよ。東雲さん、南雲君の方が全然いいよ。早く戻ってきなさいね。





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