第三十五話 おれい
真理愛──
~3月1週目~
学期末試験が終わった。
トラブルはあったけど……がっくんに勉強を見て貰えて、夏前ほどではないけど、成績を上げることができた。
今日はお礼も兼ねて、がっくんの部屋でお疲れ様会を行うことにした。
ジュースとお菓子を買ってきて……中学の頃みたいだ……。ワクワクする。
乾杯して、もう一度がっくんにお礼を言う。
「がっくん、本当にありがとう。おかげで……私にしては良い成績が取れました」
「おう!」
がっくんも笑顔になってくれる。あ、ジンジャエール注ぐね。
本当に中学の時みたい……がっくんも普通に接してくれて、とても嬉しくなった。
少しの間、いつも通りの会話をした後、私は勇気を振り絞って誘ってみることにした。
「あのね、がっくんってさ、もう経験した……?」
北条のことが気になった……。でも大丈夫、がっくんが遊ばれててもそうじゃなくても、私は大丈夫だから。
「そういうのはあまり人に言うもんじゃないぞ」
がっくんの言葉が冷たくなる。え……もしかして、がっくんはシたこと……ないのかな?
「あ、あのね……あのね、テストのお礼に……良ければなんだけど私と……する?」
一瞬がっくんの動きが止まり、顔が赤くなる……。
「ゴムもないしな」
慌てて私は鞄からゴムを取り出す。
「あのね私持ってるの、男の子がたまにしたいって言うんだぁ……」
フランクに……、フランクに誘えば大丈夫……。
「ゴムないっていうとそのまましようとしてくるから、持つようにしたんだぁ」
いつもしてたみたいに、笑顔を作る……。
「ごめん、俺も勉強に集中しすぎてさ、今日は体調悪いんだ。お礼は別に気にしないで」
「あ、うん。わかった、えへへ」
「あとな真理愛、男に対してそう言う発言は頂けないぞ。襲われるかもしれない。危ないからやめるように」
「うん!気を付けるね」
「あ~~~、ごめん。やっぱちょっと眩暈してきたからさ、今日はここまでで良いかな?」
「そうだね。ごめんね。片付けて帰るね。がっくんお大事に!」
お菓子とジュースを手早く片して、がっくんに氷枕を渡して、「ありがと」ってもう一度伝えて部屋を出た。
学──
真理愛が出て行って……すぐにトイレに駆け込んだ。
胃の中の物を全部ぶちまけた。
いつもの笑顔の幼馴染が……全く知らない誰かに見えた。
あれは真理愛だあれは真理愛だあれは真理愛だ。
でも中身が違う俺の知っている真理愛と違う。
胃液を全部吐き出しても、吐き気が止まらなかった……。




