第三十二話 たすけ
学──
~2月3週目~
互いに用事の無い日は俺の部屋で勉強をすることにした。
学年末、ということで良い成績を残したかったので爺ちゃんのバイトも少なめにしてもらっていた。
だから、ほとんど平日の放課後は真理愛と勉強していた。
中学の受験勉強を思い出す。2人でわからないわからないと一生懸命勉強していたあの時を。2人で受験しに行って、一緒に合格を喜んだ。
そうか、あれからもう1年か。でもなんでこんなに心の距離が離れてしまったんだ。
この1週間、昔と同じような、でも全く違う自分の部屋を見た。
会話は少ない。質問は真理愛から。カリカリとシャーペンの音が響くだけ。1年前とは何もかもが違った。
「がっくん、明日はちょっと用事あるから……」と明日の勉強会はキャンセルになった。
どんな用事だよ。
俺との勉強よりもそれは大事なのか。
俺は怒りに狂っていた。
次の日の放課後、幼馴染の後を付けた……やはりな。……通学路を中田と下校する幼馴染を見つけた。
真理愛──
何度もスマホを見る。中田からメッセージが入っている。消えてくれない。
せっかくがっくんと楽しく勉強できたのに。
「明日16時 俺の家集合」
それだけで私の行動は縛られた。
翌日の放課後、私の席に中田が来る。聖奈ちゃんも、西片もいない。いや、このクラスにもう私の味方は……誰もいない。
逃げることなんて出来なかった……。
手を引かれるわけでもないのに、中田の後ろを歩かされる。あいつに首輪をかけられてるみたいに……。
電車に乗ってあいつの家に向かう。嫌だ嫌だ嫌だ。
動画をどうすれば。どうしたらいい。考えるけど答えが1つも出てくれない。
動画を拡散されたらもう終わりだ。がっくんに見られたら、汚い私にもう二度と近づいてくれない。
嫌だ嫌だ嫌だ……考えがグルグルしてまとまらない。
いつの間にか中田の家に到着していた……心がもう折れそうだ……。
靴を脱いで上がったタイミングで……ガンッと扉が開けられた。びっくりして後ろを振り返る。……西片?
「ハル?」
「コーキ、マリーに何をした」
怒りの表情で西片が中田を睨む。
私を……助けに来てくれた……?
「ハル……くん?」
「助けに来たよ」
ニッコリと微笑んでくれるハルくん……涙が零れそうになる……。




