第二十九話 誰も助けてくれない
学──
~1月2週目土曜日~
幼馴染に話しかけようと思ったが、この前の出来事のせいでメッセージが全く浮かばない……。
もう二時間はそのままだ……。
家のインターフォンが鳴る……。
そこに映ったのは、幼馴染だった……。
「がっくん、久しぶり」とにへっと笑う。どこか歪だ。
「おう、まぁ上がれよ」
平静を装って俺はそう答える。
「いつも通り紅茶にするか?」
「ううん、コーヒーがいいかな。ちょっと寝不足だからブラックで……」
俺の幼馴染はコーヒーが大の苦手。ブラックなんて飲めなかった、はずなのにな……。
コーヒーと俺用の紅茶を入れて、カップを渡す。
「ありがと」
またにへっと笑う。やめてくれ。出来てないから痛々しいんだ。
「んで、今日はどうしたんだ」
本題を求める。もしかしたら。もしかしたら何か起こってるのかもしれない。彼女が助けを求めるのなら、俺はなんだってするつもりだ。
たっぷり30秒。
30秒考えて幼馴染は話を始めた。
「……んとね、試験勉強見てほしいんだ!ちょっと遊びすぎちゃって!お母さんに怒られちゃった、あはは」
試験勉強見てほしいという相談だった。
「そのくらいお安い御用だ。じゃあ何点目指す?カンニングは必要か?」
「あはは、がっくん。カンニングはダメだよぅ」
「ふっ、使わなくても技は思いつくからな!必要になったらいつでも言え!」
「も~!」
3~4か月ぶりかな。幼馴染と笑いあうことはできた……。思ったより普通に会話出来て安心する。真理愛は何も変わっていないように見えた……。
……いや違和感だらけじゃないか。なんでだ!言えよ!なにかあったなら俺に言えよ!お前にとってはどうでも良いことなのか!わからない!あんなにも一緒だった幼馴染の事が……なにもわからない……!
……結局その日、彼氏のことやあのことについては一切話題には出なかった。
真理愛──
今更どんな顔でと思った。がっくんに対して一方的に距離を取ったのは私だ。
夏休み頃から、距離を取って西片に近づいて遊ばれてポイ捨てされて……。今は別の男に遊ばれている。
助けてって言ってもいいのかな。前だったら躊躇しなかったかもしれない。絶対がっくんが守ってくれる自信があった。
いまは もう ない
彼に遊ばれました。彼の友達にも遊ばれました。そしたら動画で脅されてます……て……誰が助けるのよそんな馬鹿。
がっくんが淹れてくれたコーヒーの水面を見て考える。
助けてくれるくれないくれるくれるくれないくれないくれないくれるくれないくれないくれないくれないくれるくれないくれないくれないくれない……。
私は
頼ることが出来なかった。
どう考えても無理だよ。
今更のこのこ元の幼馴染面して……頼れるワケ……ない……。




