第二十八話 終わらない
学──
~1月2週目~
冬休みが明けて数日経った放課後。クラスの噂好き女子から珍しく話しかけられる。
ここではちょっと……ということだったので、屋上手前の踊り場まで移動する。
視聴覚室はなんかヤリ部屋って噂立ってるからそっちは嫌だよね!そうだよね!ごめんね!
「ギャルの子から聞いた話なんだけど……直球で言うと東雲さんが西片くんと別れたらしいんだけど知ってる?」
「……いや初耳。てか最近話してないし……」
「そう……まだ聞いた話なんだけど、手酷く振られたって聞いてるの……クラスでも孤立しているらしくって……あ、でも日外さんっていう友達は一緒みたい……だから私心配になって、南雲くんならって思って……」
「ありがとう!……最近、本当に話してなくて……話しかけられるかわからないけど、タイミング合えば話してみるよ!」
「うん!おねがい!……1学期とかうちのクラスによく来てた時は、私にも話しかけてくれて……その頃は友達もまだあんまりだったから……すごく救われたんだ!だから、本当にお願いね!」
「あ、あとこの噂はできるだけ止めとくね!」
それだけ言って女子は階段を降りて行った……。
「ありがと!おねがい!」
彼女がいるであろう階下に向かって俺も声をかける。
俺は、久しぶりに幼馴染へ接触することにした。
噂好き女子が降りてった後、少し間を開けて降りようとすると……ちょうど話題に上がっていた幼馴染が上がってきた。
声をかけようとしたところ……隣に誰かいる?西片か?
あいつは……いつも西片と一緒にファミレスへ来てる奴……確か名前は……中田?
何処に行くんだ……?
そっちにあるのはヤリ部屋ごふんごふん。視聴覚室だぞ。
新しい彼氏がもう出来たのか……?
もう俺には関係ないはずなのに暗い気持ちが芽生えてくる。
不安になって、俺も視聴覚室へ足を運ぶ。
入ってすぐのあたりで話してるようだ。
少しホッとする。俺と噂好き女子がしたのと同じように、人目を避けた会話をしようとしていたのだろう。
……ここからでは会話が聞こえない。そんな時はどうするか。
ててれてっててー。針金~!
説明しよう。視聴覚室の隣には視聴覚準備室がある。
そのドアは……きちんとした鍵なので針金なんぞでは開けられないが、なんと壁の下段にある空調用の小窓は針金で開いちゃうんだよなぁ!何で知ってるかって?それは秘密ですよ。
ささっと鍵を開け、周りに誰もいないことを確認しさっと準備室に滑り込む。
音を立てないように小窓を締め、視聴覚室への扉の前に立つ。ここならどんな会話も聞き逃さないぞ。
パンッパンッと何かを叩く音。
そして、女の子の喘ぐ声が聞こえてきた……。
俺はただ扉の前で立ち尽くすことしかできなかった……。
真理愛──
西片とせっかく別れたというのに、コーキ……中田から話しかけられた。聖奈ちゃんは……いない。
西片の件で話したいことがあるって……。もうどうでもいいんですけど。と帰ろうとしたら必死になって止められた。
復讐になるかもよって言われて……私はグッときてしまった。ほんと、学ばない。
場所を移動して、中田に連れられて視聴覚室。
放課後は使われないから誰も来ないんだって。
「で、何の話なの」
「まずはハルの話。別れたってホントなの?」
「本当よ。もうどうでもいい……」
「そっかぁ。残念残念」
「それだけ?私帰りたいんだけど」
「あぁもう1つだけ」
「なに、早くして」
「ハルに音声渡したじゃん。あれさ、音声だけだと思う?」
背筋がぞくっとした。逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ聞くな聞くな聞くな聞くな聞くな聞くな、心の警報が鳴るけれど、体が一歩も動いてくれない。
「マリーちゃんのハメ撮り動画取ってるんだよね……ねぇ俺とはもう少し遊ぼうよ」
終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ終わってよ




