第二十六話 問い
真理愛──
キスされた後、一緒にソファーへ座っていた。
「あんたパーソナルスペース広いのね」
「え!?あぁ?そう……かも?意識したことなかったなぁ」
なんとなく、距離を空けていた。
でもセーナちゃんが面白がってぴったりとくっついてくる。もう端っこだから逃げ場がない。
それに……セーナちゃんノーブラ?肩と腕に柔らかい感触が触れてくる……。
いつもしているような雑談を続けながら……セーナちゃんの手が太ももに触れてくる……。
「あ……あの、セーナちゃん。くすぐったいよ……」
「ふふふっ……」
笑うだけでやめてくれない。
セーナちゃんは顔を私の耳に近づけて囁いてくる。声がいつもと違って……なんだろう、とってもえっちで……背筋がゾクゾクしてしまう……。
「今日はさ、どうせだから繋がってみようかと思って……」
「??」
セーナちゃんが何を言ってるかよくわからない。
「あれ?意味通じない?」
「う、うん……」
「処女だったんだっけ……というかあんま知識がないんだね」
「……それ、誰が言ってるの」
「ハルよハル。相当嬉しかったんじゃないの、ふふっ」
顔が赤くなる。そうか、ハルくんも喜んでくれていたんだ。それなのに、私は……。
「まぁそんな話は置いといて、ちょっとこっち来なさい。マリー」
セーナちゃんの手が私の頬に添えられる。
「目、閉じて」
ちゅっと唇の重なる音がする。
クリスマスの日と、それに昨日させられた時と同じ感触。プルプルしていて、聖奈ちゃんの唇ってとってもえっちぃ……。
「って!なんで!なんでキスしたの!?」
「それはね、赤ずきんちゃん……お前を、食べるためだよ」
そして、今に至る……。
セーナちゃんは変な張りぼての付いたパンツを付けて、そして私のことをめちゃくちゃにした……。
聖奈──
ちょっとヤリすぎたかな……私は1人反省していた。
でも、これはマリーが悪いな。私は1人でそう納得した。
この子はどこか男を狂わせる空気をまとっている。サディズムを刺激するんだ。
その刺激は何処かで止まるものじゃなくて、すればするほど、沸いてくるような……そんな危うさを持っていた。だから、私は悪くない。
「セーナちゃん……」
おずおずと私に話しかけてくるマリー。
「どうしたの」
優しく頭を撫でてやる。あんなことがあったり、こんなことをしちゃったけれど、可愛いこの子は私の一番のお気に入りだ。
「ごめんなさい」
もう謝らなくても良いのに、自分が悪いとしっかり認識できているところとか、気に入っていた。
普通は反発したくなる。それで離れていった友人はたくさんいた。
私は言いすぎてしまうのだ。相談内容の整理として、アウトプットが口から出てしまう。それが詰問するようだ、といつも言われた。
自分でも後で思い返して、これを言われたらそれは嫌だろうと何度も思った。でも止められなかった。
それはこの子に対してもやってしまっていた。
学校のこと、クラスのこと、幼馴染くんのこと。ただ、マリーはそれをしっかりと受け止めた。強いなって思ったのを覚えている。
「もう気にしてない。それに……私もあんなことさせて、本当にごめんなさい。この罪を償うためなら何でもするから」
「うん……」
……もう、裏切らないでねと言いかけた。
どの口が言うんだ。そもそも、自分もハルの誘いを受けていた。理由を聞かれれば何となく。だからこれから行動で償うことにした。一緒に居たい理由は、それだけじゃないし。
マリーは全部をまだ消化できていない、という感じだった。だから、私は話題を変えることにした。
「ねぇマリーの幼馴染くんってどんな奴なの?」
「がっく……南雲くんのことだよね。真面目で……勉強出来て素敵な男の子だよ?」
「真面目……だからかねぇ、噂聞いちゃってさ」
「噂?」
「ハルの幼馴染の北条時子、って知ってるよね」
「うん、南雲くんのクラスに行ったとき、たまにお話……したよ」
「なんでも北条と南雲がデートしてたっていう噂が流れてるの」
「え……?」
「おんなじ中学だったけど、絡みはほとんどなくて、でも有名だった。孤高の美少女なんて呼ばれて。男なんか寄せ付けなかったのにさ」
「……」
「それが、マリーの幼馴染とデートしてたって……嘘だぁって思ったけど、写真もあってさ。……本当にびっくりした」
なぜかマリーは困惑した顔をしていた。
「いつだったか、マリーが相談してきたよね。幼馴染くんのこと……。後悔は無い……?」




