第十八話 都合の良い…
真理愛──
~12月2週目~
今日は試験前期間で部活は全部お休み。セーナちゃんはコーキくんと用事ということで先に帰っていった。
私は今、視聴覚室にいる……ハルくんと一緒……。
放課後で、もう学校内に生徒もほとんどいない……。
先生達も試験の準備で校内には気が回らない……。
入口から見えないテーブルの陰で。
学校でなんて、本当はいけないことなのに……私の体はブレーキが効かなくなってきていた。
試験……期間……中……なのに……な……。
~12月3週目~
期末試験の結果が返却された。成績が落ちてしまった……全然勉強が出来ていなかった……。
ギリギリ赤点は無かった……でも今までに比べたら全然点数が取れていない……。
ハルくんは落ちてなかったって……すごいなぁ……。
「あ、あのね。3学期は勉強しようと思うんだけど……」
「そうだね。俺は部活もあるから一緒にできるかはわからないけど、勉強の時間も作るようにしようか!」
あっ……そう、だよね。ハルくん部活も忙しいし、自分の勉強もあるもんね。一緒には無理……だよね。
「お互いに勉強頑張って、3学期は上位を目指そう!」
「……うん」
~12月3週目土曜日~
「あのね、ハルくん。今週はどうする?」
「そうか、じゃあ今週は一緒に過ごそうか」
そうして、ハルくんの家へ集まることになった。
見たい映画があったんだけどな……。でも、また別の機会でもいいよね……。
今日もハルくんの部屋で愛し合った……。愛し合ったはずなんだけど、今日はハルくん疲れてたのかな……?
いつもよりあっさりと終わってしまった行為。
そして、スマホを気にしているハルくん……。
「急でごめんね。今日は親が早く帰ってくるみたいなんだ」
「そうなんだ、ごめんね。早く帰るね」
ご両親とそういえば会ったことないなって思ったけど、嫌われたら怖いからそんなこと言えなかった……。
簡単に掃除して、私はハルくんの家を出た……。
ハル──
その日、他校の女子から連絡が入った。『会いたい』と。
ナンパから助ける振りで連絡先をゲットした子だ。
マリーの裏で『普通の女子を普通に恋愛で落とす』ゲームのターゲットにしていた。
眼鏡に三つ編みで地味だったけど、俺はその瞳に可能性を感じていた。化粧を覚えれば化けるぞっと。
それは正に正解だった。
デートして、服装を整え、化粧をレクチャーし、磨かれた原石はダイヤモンドだった。
流石、俺だ。
にしても、ちょっと可愛いって言ってやったら簡単に落ちたなぁ。
出会ってから1か月と少し……あっという間にここまでくるとは思わなかった。
さぁこいつはどうやって遊んでやるかな。
ナンパ男と俺が繋がってるって知ったら……どんな顔をしてくれるだろう……。
隣には満足そうに寝ている女がいる。俺は自分の才能が恐ろしくなった。そしてこのまま成功しかない人生になるだろうと……。
だからこれは必要なアクセントだ。コーキにメッセージを送る。即既読と返信が返ってくる。
『他校の子はクリアしたよ』
『はやっ!RTAかよ』
『はははっ、俺にかかればこんなもんだよヌルゲーさ』
『ぴえん』
『だからさ、そろそろ入れ替えが必要じゃないか』
『お?』
『例のコーキの作戦。乗ってみようかと思うんだ』
『キタキタキタキタキタキタ、アレやりますか!』
『具体的な作戦が聞きたい』
『OK、長文だからゆっくり投下するわ』
コーキのメッセージを見て……俺はニヤリと顔が歪むのを止められなかった……。
~12月3週目日曜日~
マリーにメッセージを送る。
『通話、できないかな?』
あっという間に既読が付き『うん!』と返事が来る。
俺は通話をタップし、相手が出るのを待った。
通話が繋がり相手の声が聞こえる。
「もしもし?ハルくん?」
「やぁマリー。昨日は本当にごめん。それと最近あまり構えなくてごめんね。家の事業の勉強が多くて……」
「うぅん!気にしないで!ハルくんが一生懸命なの知っているから!」
「代わりと言っては何だけど、今度のクリスマスはコーキとセーナ呼んで皆でパーティーしないか?」
「うん!うん!凄く良いね!」
喜ぶマリーに、まるで犬のようだと感想を抱く。
君はもう少しだけ、賢くなった方が良いと思うよ……?




