第十六話 喪失
真理愛──
~11月4週目金曜日~
今日は珍しく皆の予定が開いていたので、私、聖奈ちゃん、晴くん、高貴くんで遊びへ行くことになった。場所はカラオケ。クラスの皆で行ったことはあったけど、この4人では初めてだった。
がっくんと来た時と同じ感じの部屋だった。入って右側に聖奈ちゃんと高貴くんが行ったので私は左側へ座ることにした。もちろん晴くんは私の隣。
歌って少しすると、聖奈ちゃんは高貴くんとデュエット曲を歌っていた。高貴は聖奈ちゃんの腰に手を回している。ぎゅってされたら気持ちいいのかな?
晴くんは……どう思っているかな。少し近寄ろうかな……。
座る位置を少し変える……。びっくりしたのか晴くんが私の方を見る。
じっと目を見て、その目を聖奈ちゃん達に向けたら、気づいてくれた。晴くんも私の腰に手を回してくれた。あったかい……なぁ。
「歌った~~~~!きゅうけ~~~~ドリンクバーにおかわり行こうぜーーー!」
高貴くんの号令でみんな一緒にコップを持ってドリンクバーに出かける。
「ちょっと真理愛と話したいことあるから席替えしてもいい?」
「おけ~」「うん、わかったよ」
高貴くんも晴くんも同意してくれた。
ドリンクをもって、私達は部屋に戻って席替えをした。私がいた方に私と聖奈ちゃん。高貴くんと晴くんが肩を組んで歌い始めた。
「どう、真理愛。楽しんでる?」
「うん楽しいよ!」
「……その、クラスの子から真理愛が晴と良い感じだって聞いたんだけど、どうなの?」
聖奈ちゃんが珍しく不安そうな顔で聞いてきた。聖奈ちゃんはタイミングが合わなくて話せてなかった。
「あのね……」
聖奈ちゃんの耳に手を当てて、初めてをしたことを報告する。
「そうなんだ!えっと、おめでとう。かな?」
ほっとした感じで聖奈ちゃんがニッコリ微笑んでくれた。
「ごめんね、タイミングが合わなくて……」
なんだか今週は聖奈ちゃんと2人で話をするタイミングが取れなかった。
「うぅん、今週は私がバタバタしてたし。でも2人がうまくいってるなら安心だよ」
聖奈ちゃんはいつも私の味方でいてくれる。本当だったら一番に報告したかったな。
「でもね、あのね……」
聖奈ちゃんにもきちんと報告した。聖奈ちゃんも焦らなくていいからゆっくり進もうってアドバイスしてくれた。本当に大好き、聖奈ちゃん。
聖奈ちゃんとはその後もいろいろ話した。
「あのね、だいたい男の子が用意してくれるけど。それでもゴムは自分でも持っていくこと。お風呂とかですぐ洗えるからってしなくて妊娠しちゃった子がいたから、そういう時も冷静に流されず、忘れずに……ね!」
「わ、わかった!」
聖奈ちゃんが私の頭を撫でる。
「むー!なんだか子供扱いされてる気がする!」
「しょうがないじゃない。愛しい我が子みたいなんだから」
聖奈ちゃんは私の頭をそっとハグしてスリスリしてくれた。
会もそろそろお開きかなって時間で、高貴くんが提案してきた。
「あのさぁ、この機会に渾名で呼び合うようにしない?なんか仲間っていうかさ。俺達C組で特に仲良いって思ってる。だからその絆の証みたいにさ!」
「いいね、悪くないと思う」
聖奈ちゃんも続いた。
「俺さ、聖奈のことセーナって呼びたいなって思ってたんだ。どうかな?」
「うん、嬉しいよ。じゃあ高貴はコーキね。お揃い」
「まじ!?いいね、俺それ気に入ったよ!」
聖奈ちゃんと高貴くんはお互いに笑いあった。良いなぁうらやましい。
おっと、セーナちゃんとコーキくん。意識しないと。
「真理愛はどういうのが良いかな」
晴くんがみんなに聞く。
……まーちゃん、りあちゃん、まりちゃん、と出るけどみんなちょっと違うなぁっていう反応をする。
「ま……ま……まり……マリー?……マリーっていうのはどうだろう!」
「それ!良いかも!嬉しい!」
晴くんが提案してくれたマリーが一番気に入った!
「いいね!じゃあマリーに決定だね!」
セーナちゃんもコーキくんも拍手してくれた。
「まぁ晴はハル……だな……」
あ、ハルくんが落ち込んじゃった……。
~11月4週目土曜日~
ハルくんの家に呼ばれた。たぶんそうだろうなって思った。セーナちゃんにも言われたので念のためゴムを買っておく。ゴムって消費期限があるんだ……初めて知った……。
その日もやっぱりご両親はいなくて……ハルくんの部屋に入って……今日は……そのままキスから始まった……。
クラスメイトにコツを教わったおかげかな。その日はあんまり痛くなくて、ハルくんと最後まですることができた。
汗を流すのに2人でお風呂に行って……念のためゴム持って行って良かった……お風呂に入りながら、もう一度した……。
学──
~12月1週目土曜日~
久しぶりに幼馴染を見た。近所のターミナル駅。
俺1人で。幼馴染は、西片と。
「……髪、染めたんだな」
西片とお揃いになるような明るい茶色へ染めていた。
まだそこまで寒いはずじゃないのに。
なんだか寒さを感じて、コートをぎゅっと抱きしめて、見つからないようにその場を後にした……。




