第十三話 プレゼント
真理愛──
~11月1週目土曜日~
晴くんと恋人になって初めてのデートだ。久しぶりに映画へ行こうと決まった。初めてのお出かけも……映画だったなぁ。
今日見たい映画はいつものショッピングセンターでは上映してなかったので都内に遠出した。
電車でオジサンに押されてしまった時、私のことをかばってくれて嬉しかった。晴くんのこういうところ、いいなぁ。
映画館について、今回の目当ての恋愛映画のチケットを購入……しようと思ったら晴くんが既に予約してくれていた。
お金を渡そうとしても受け取ってくれないから、飲物とポップコーンは私が出した。
聖奈ちゃんほどじゃないけど、全部出してもらうのはなんだか違う気がしたから。
視聴後、私達は会話もなく、映画館のロビーをテクテク歩いていく。
私、顔真っ赤じゃないよね……。手鏡で確認するとちょっと赤い!恥ずかしい!
今日見た映画だけど、ポスターだとそんなこと無さそうだったのに大人なシーンが多くてびっくりした。
お話はすごく良くて泣いちゃったけど、ちょっと気まずかった……。
「ご、ごめんね……こういう内容だとは知らなくて」
晴くんも照れながら謝ってくれる。
「ううん、私も調べてなかったから……」
私もなんとか返事する。
いつもは映画が終わった後に感想を言い合うためにカフェへ入るんだけど、今日は……次に見たい映画について話すことにした。
今日のは……うん、ちょっとここで感想を話す勇気は私には無かったよ……。
お互いに飲物を飲み終わって、話す話題も出切った頃に晴くんが提案してきた。
「お詫びにってわけじゃないけどさ、プレゼントさせてもらってもいいかな?その……付き合い始めた記念も兼ねて……」
「いいの……?」
アクセサリショップに移動して、晴くんは私に似合いそうなペンダントを探してくれた。
ハートとか、涙型とかいろいろあって、あれも良い、これも良いっていっぱい悩んでくれた。
「うん、やっぱり真理愛だからさ、これかなって」
小さなクロスのペンダント。私も気になって見ていたのを気づいてくれたんだ……。
「晴くん、つけてほしいな……あ、ここだと恥ずかしいから屋上に行こう!」
晴くんの手を引いて、屋上庭園に連れていく。幸い、人はそんなにいなくて、屋上の端のほうに2人で座った。
晴くんはペンダントの包装を開けて、私の首にそれを着けてくれた。
「似合ってるよ」
ニッコリと笑ってくれる晴くんにドキリとする。
「あのね、晴くん!ここに座って!目も瞑って!」
「え!?なになに!?」
私は内緒で買ってたネックレスを取り出し、彼の首に付けてあげた。
「これ……」
太陽のチャームが着いた……晴のマークのネックレス。
探しているときに見つけて、晴くんが悩んでる隙に買っちゃった。
「どう……かな?私からも記念に贈りたかったから……」
「すごく……嬉しいよ!」
立ち上がって全身で喜びを表現してくれる。良かったぁ。
そして、まっすぐ私の目を見つめてくれて……あっ……。
私達は二度目のキスをした。
~11月2週目土曜日~
今日も晴くんとデートだ。場所を決めていなかったけど、先週は映画だったしショッピングモールかな。この近くだと、水族館もあったよね。
ちょっとわくわくしている。早く着きすぎちゃったな。
10時10分……。
メッセージを送ったけど、既読が付いて返事が来ない。
なにかあったのかな……。
5分ほどして、晴くんが来た。良かった、事故とかじゃなくて。
「ごめん、お待たせ。じゃあ行こうか」
「あっ……うん!」
「中学の時の後輩達に会っちゃってさ、話終わらせるのに大変だったよ」
「そうなんだ、慕われているんだね!」
「あぁ、かわいい後輩達だから無下にもできなくてね!」
「晴くんはやさしいね!」
「ところで今日はさ、少し古い映画を見たいと思ってね。ネットカフェに行こうと思うんだけど……」
先週見た映画。その監督さんの名作があり、晴くんはそれが見たいと言う事だった。ただ、映画館はもちろん上映しておらず、動画サービスで配信しているのでネットカフェに行こうと言う事だった。
映画は確かにちょっとえっちだったけど、凄く泣いてしまった。同じ監督さんの過去の名作と聞いて少しわくわくした。
ネットカフェかぁ、がっくんと来て一日中ずっと漫画読んだりしたなぁ。男の子と2人は……ちょっと緊張しちゃうけど……。
ネットカフェについて受付を済ませる。一緒に映画を見るのでカップルシート。荷物だけ部屋において、ドリンクを取りに行く。映画中用に受付で少しお菓子も買った。準備万端!というところで映画を探す。
晴くんがあっという間に見つけてくれて、部屋を暗くして、動画を見始めた。
お話はニューヨークで働く女性のお話。昔から一緒に育ってきた男の子とニューヨークで再会し、そこから恋に発展していくというお話だった。
最後は、バットエンドだった。すれ違ってしまい別れる2人。別れて歩き出して、女性が振り向くけど男性は振り向かない。諦めて女性が歩き始めたところで男性が振り向く。けど今度は女性が気づかなかった。
すれ違ってしまって、でも本当は心が通じていたんじゃないかなっていうお話だった。
「悲しい失恋の話だったね」
晴くんが感想を言ってくれた。でもたぶんこの終わり方は、もしかしたら再会もあったり、別のパートナーと幸せになったり……いろいろな世界に繋がるんじゃないかなって思った。
うまく言葉にできなくて、晴くんには伝えられなかった。
えっちなシーンは前の映画よりかは無かったけど、2人が抱き合って大人のキスをするシーンはとても憧れた。
思い出しながらジュースを飲んでいると……晴くんがこっちを見ていた。
あっ……。
いつもより強く熱い……大人のキスをした……。
そのまま、もう一作品見て、今日はおしまいにした。
帰りに晴くんから「来週、俺の家に来ないか」って誘われた……。




