第十二話 幼馴染の気持ち
学──
~10月3週目日曜日~
いつものファミレス、いつもの奥の席。そしてお隣にはいつもの『常連』さん。
「ようやくキスできた」
「お、てことは付き合えた!?」
「いやそれはまだ……」
「はぁ~?どういうこと?」
「もうちょっと……だとは思うんだけどな」
「アシストするか?」
「いやもう大丈夫、ここからは俺の力で行くべきだろう」
「りょ!健闘を祈る!ビシィ」
「お前たまに話し方が古くなるのはなんなの?」
~10月4週目月曜日~
文化祭の代休。
爺ちゃんからコーヒー豆のお使いを頼まれて、近所のターミナル駅に向かった。
買い物が終わって、爺ちゃんの店に向かおうとしたところで、遠くに幼馴染と西片くんが居るのを見つけた。
……うまくいっているなら良いんじゃないかという気持ちで見送った……うん、大丈夫。
真理愛──
西片くんから予定無かったら遊ぼうとメッセージが届いた。
ちょっとだけ、体がだるかったけど、せっかくの誘いだったので、遊びに行った。
9時50分に近所のターミナル駅の待ち合わせ場所に到着。
走ってきた西片くんを見つけて手を振る。
「ごめん!目の前で電車が出ちゃって!」
頭を下げて謝ってくれる。
「しょうがないよ、大丈夫だから」
「ほんとごめん!何か奢るからそれで許して!」
あまりの一生懸命さに少し可笑しくなってしまった。
「ほんとに大丈夫!ねっ、遊びに行くんでしょ。早く行こうよ」
手を引っ張って、いつものショッピングモールに入っていった。
帰り道、別れる前に西片くんへ向き合って、私はこう言った。
「あのね、西片くん。お付き合いのことだけど、受けようと思うの」
~10月4週目~
放課後、聖奈ちゃんは彼氏の中田 高貴くんとすぐに帰っていった。
聖奈ちゃんに、西片くん、ううん、晴くんとお付き合いすることは昼休みに伝えた。
「おめでとう」と笑ってくれた。祝福してくれたことがとても嬉しかった。
「う~ん、でも最後の相談はしてほしかったなぁ~」
「あはは、ごめんね」
少し拗ねられた。でもまた笑顔になってくれて「おめでとう。幸せになるんだよ!」って応援してくれた。
今日は晴くんも部活があると行ってしまった。私は勉強しようかなと下校の準備をしていた時に、クラスメイトから話しかけられた。
「まりあっち~、ハルと付き合えたんだって?おめでと~」「おめでと~」
いつも元気で明るいグループの女の子達が話しかけてくれた。
「ありがとう。まだあんまり実感ないんだけどね、へへっ」
2人にお礼を言う。一緒に喜んでくれて嬉しいな。決断して、良かった……かも。
「あ、少し早いと思うけどこれ渡しておく~」
ポケットから何かをだして私の手の上にポンと置かれた。銀色の四角い袋……?
「これ、なに?」
「コンドーム。使うかもしれないからね~」
顔が真っ赤になるのがわかる。
「まままままだ早いよ!付き合ったばかりだもん」
「財布に入れときな~」って2人がクスクス笑っている。
ううう、恥ずかしいよ……。
「そういえばさ……文化祭の時、北条に絡まれてなかった」「えっ!初耳!」
「あ~……なんか話があるって……でも聞く気も無かったから逃げちゃった……」
「いやそれで良いと思うよ。何言われるかわからないし……」「……」
「うん、ありがと……」
「ケガとかしてない?」「見せて!見せて!」
2人は心配そうに私の腕とかを見てくれる。
「大丈夫、何もされてないよ」
笑顔を何とか作った。でも心の中は……苦い味しかしなかった……。
学──
~10月4週目金曜日~
放課後
「ねぇ、ちょっとお話良いかしら」
クラスメイトの北条 時子から久しぶりに呼び出されてドキリとする。
「場所、変えましょう」
人があまり通らない階の廊下に移動する。
「あいつのクラスメイトから変な話を聞いたんだけど」と行った前置きだ。
西片くんと俺の幼馴染が付き合い始めたこと。
文化祭の後、数組のカップルが成立して、ヤっただヤってないだと男子が盛り上がり、そこに例の西片くんも自信満々の表情で混ざっていたと。
「けど普通に付き合っているならそういうことだってあるだろう。特に変なことはないから、もうあとは自分で決めればいいんじゃないかな」
北条は少し怒った顔をした。どういう関係かは詳しくは知らないが西片と北条は許嫁らしい。
「あなたはそれでいいの」
「……さっき言った通りさ」
俺の言葉を聞いた北条は「もういい」と言って怒ったまま教室へ戻っていった。




