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戦国転生したら秀長の息子でした ~豊臣宰相の子として、戦国日本を国家から作り直すまで~  作者: 丸三(まるぞう)
秀長の子

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第4話 伯父・秀吉

天正3年(1575年)近江・長浜城

天正3年(1575年) 近江・長浜城


城がざわつく。

鐘が鳴るわけでもなく、太鼓が打たれるわけでもない。

しかし、人の歩き方が変わり、声の高さが揃い、空気が一段だけ張り詰める。


羽柴筑前守殿はしばちくぜんのかみが来られるぞ」

という一言が、どこからともなく流れてくる。


私はその日も、母の腕の中にいた。

お初は、女中に髪を整えられながら、少しだけ落ち着かなさそうにしている。

「そんなに緊張なさらずとも」

女中の一人が言う。


「…義兄、ですもの」

母は小さく息を吐いた。


羽柴秀吉。

この城の主であり、織田信長の寵臣であり、成り上がりの象徴。

今年、官職名(受領名)を授かり「筑前守」を名乗るようになった。


私は、母の胸元からそっと顔を出し、部屋の外の気配を探る。

足音が増えている。

鎧の音。下駄の音。

廊下の先が、目に見えて騒がしくなっていく。

やがて、遠くから明るすぎる声が響いた。


「おおーい! 参ったぞ!」


空気が変わる。

それまで城を満たしていた雑音が一歩引き、代わりにその声だけが前に出てくる。


――来たな。

襖を開き、入ってきた男は40歳前後。

背は低く、噂どおりどこか猿に似た顔立ちだが、実物は思ったより整っている。

だが、それ以上に印象的なのは動きだ。


落ち着きがない。視線が忙しい。

身体全体が、常に次の行動を探している。

まるで戦場の鼠。


「おお、お初殿! 元気そうで何よりじゃ!」

母はすぐに頭を下げた。

「お久しゅうございます、筑前守様」


「堅い堅い! 義妹ではないか!」

そう言って笑う。

声は大きく、態度は軽い。


だが――

私は見逃さなかった。

秀吉の視線が、部屋の広さ、女中の人数、出入り口の位置、窓の高さを一瞬でなぞったことを。無意識に計算する癖だ。


「おお? これが噂の甥っ子か?」

秀吉が近づいてくる。

母が、私を差し出す。


「秀長様の子でございます」

「ほう…」

秀吉は、じっと私の顔を覗き込んだ。


距離が近い。

酒の匂いが少しだけする。

だが、目は濁っていない。

鋭い。人を測る目だ。


「ほうほう」


何かを値踏みするように、私の目の奥を見つめて言った。

「小一郎に似て、妙に落ち着いとる赤子じゃ」


褒め言葉か、嫌味か。判断しかねる。


「名は確か、竹若であったな?」


「はい、そのとおりでございます」


秀吉は笑った。

「竹は伸びるぞ。しぶといし、折れにくい」

「そういう男に育ってほしいものよ」

「お初殿、頼みましたぞ」


そう言うと、秀吉は、私に顔を近づけていた頭をすっと上げる。

「で、小一郎はどこじゃ?」


母が少し微笑む。

「政の間で政務を執っております」


「相変わらずか……」

秀吉は肩をすくめた。

「小一郎は、生まれた時から帳面と算盤を抱いておったような男じゃ」


秀吉が弟・秀長を呼ぶときの兄弟だけが使う名。

「小一郎」

公の場では決して呼ばれない、私的な呼び名。


「やつは真面目すぎる。少しは楽を覚えればよいものを」

そう言いながらも、その声にはどこか信頼の色が混じっている。


秀吉は母に軽く手を振った。

「では、挨拶がてら政の間へ行ってくる」

そう言って立ち上がり、去っていった。


母は深く一礼した。

部屋に、静けさが戻る。


私は母の胸の中で、考える。

あれが後に天下を取る男、羽柴秀吉。

そして、その弟・秀長が私の父。


歴史の真ん中、戦国の渦の中心に生まれてしまったことを改めて感じた。



政の間


「久しいのう、小一郎」

「兄者こそ」

二人きりになると、呼び方が変わる。


「相変わらず堅い顔じゃな」

秀吉は座り、茶を受け取った。


「お初殿と子に会ってきたぞ」

「お初殿は相変わらずおっとして温和な女性だな。お前に相応しいわ」

秀吉は笑う。

「竹若は、面白い目をしておった」


秀長はわずかに眉を動かした。

「……面白い、ですか」

「赤子にしては、だ」


秀吉は茶を啜る。

「泣かぬ。怯えぬ。じっと見ておった」


「それは……」

秀長は少しだけ困ったように言った。

「母に似たのでしょう」


「違うな。あれはお前に似ておる」

秀吉は即答した。

「まあ、育たねば分からんがの」


秀吉は笑った。

「だが、小一郎」

少しだけ声が低くなる。

「お前の子なら、悪くない」

「病に負けず3歳の節句まで生きてほしいものよ、大切にな、小一郎」

「お初殿のこともしっかり構ってやれよ」


その言葉には、家族として、兄としての情があふれていた。


秀長は何も言わず、ただ頷いた。




羽柴秀長は史実上、時期により「木下小一郎」「羽柴長秀」など複数の名乗りを用いています。

本作では読者の理解しやすさを優先し、全編を通して「羽柴秀長(のち豊臣秀長)」の名に統一しています。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


本作は初めての投稿作品のため、誤字脱字や表現の拙さ、設定の不整合などがあるかもしれません。

日々推敲しながら加筆修正をしていく予定です。


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― 新着の感想 ―
兄弟間の然り気無いやり取りが素敵(*^^*)♪ ココにどんな形で主人公は加わるのか? めっちゃ(*´∀`*)尸"楽しみです
面白い! 流行り物でもあるしガンガン書いてください。期待
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