2、棄てられた過去
幼馴染に浮気され。
俺は頭が痛い中でアニメショップに行った。
すると何故かそこで出逢った同級生の伊藤春風さん。
つまり俺と同じクラスメイトの彼女が「家に行っても良いか」と言い出した。
あまりの突然の事に「え?」となってしまう。
だけど成り行きで結局家に招いた。
「汚い家でゴメン」
「どこが?私の家より、片付いている」
それから俺の家の中を楽しそうに見渡す伊藤さん。
俺はそんな伊藤さんと一緒にリビングに入る。
母さんと父さんは幸いな事に仕事だ。
だから俺と伊藤さんだけになる。
あれ?これなんか...。
「私ね」
「!?...は、はい」
「凄く、軽いけど発達障害がある、の」
その言葉に俺は「!」となる
それから俺は悲しげな感じになる伊藤さんを見る。
伊藤さんは「私、人との距離が掴めない」となってから苦笑しながら俺を見る。
俺は「...そうなんだね」と顔を顰めた。
「でもなんでそんな重要な事を俺に言ったんだ?」
「私は...貴方とは分かち合える」
「?」
「私...貴方とは分かち合えるかな、って」
「友達的な?」
「そう」
俺は赤くなる伊藤さんを見る。
それから「俺なんかと友人になっても...いや。まあ良いなら良いけど」と答える。
すると伊藤さんの顔が明るくなった。
「あり、ありがとう」と俺の手を握ってくる。
え!?
「私、友達が作りたかったから」
「お、おう」
「先ずはお友達から」
それから微笑んだ伊藤さん。
女神みたいな愛らしさがある。
マジかよ。
そう考えながら俺は赤面しながら伊藤さんを見...ん?
先ずはってなんだ。
「伊藤さん。先ずは、って?」
「え?...あ、えっと。先ずは友人から」
「?」
俺は意味不明なまま伊藤さんと友人になる。
そんな伊藤さんに「せっかくだ。友人なら椅子に座ってくれ」と促した。
すると伊藤さんは「優しい」と笑顔になる。
俺は「ああ」と柔和になった。
☆
伊藤さんはソワソワしていた。
俺は「どうした?」と聞いてみる。
すると伊藤さんは「えと。それで」と話す。
それから意を決した様に俺を見る。
そして「どんなアニメが好き?」と聞いてくる。
俺は「ああ。基本的にラブコメだな」と考えつつ言う。
「やっぱり!あ、相性抜群」
「相性!?」
「えへへ」
いちいち仕草が可愛い。
彼女は生きづらい人生だろうけど幸せに見える。
そんな彼女に聞いてみた。
「具体的にはどんなアニメが好きなんだ?」と。
すると伊藤さんは「私は人と恋する、アニメが好き。だから、なんでも観る。ラブコメ系ならコスプレも、する」と話をした。
え!?
「キャラコスプレ!?」
「私は、コスプレも好き」
「マジか。似合いそうだな」
「うん。はい」
スマホを取り出してから画面を見せてくる。
俺はそこにあったかなり短いスカートの制服姿のキャラのコスプレを観た。
ちょっ。
「可愛い、でしょ。ネットキャラの...」
「か、可愛いけどこれはエロゲキャラ...」
「ふあ?」
「...」
「...」
伊藤さんは画面を二度見した。
それから羞恥で顔を真っ赤に染めてから「そ、そう、なんだっけ」と俯く。
ラブコメと誤解した様だ。
こういう部分があるんだなこの子。
でもなんだろうな。
なんだろう。
嬉しい。
こうして一緒に意見交換が出来るのが。
「私」
「?」
「楽しい」
「え?」
「今が、楽しい」
そう言いながら「前の彼に「感情読めないトンチンカンさんかよ」って言われて捨てられた」と悲しげに話す伊藤さん。
俺は視野が狭くなる。
な。
「...外見だけで付き合って。捨てられた。だから嫌い」
「...」
俺の様な人生を送ったんだな。
そう考えながら泣きそうになる伊藤さんの手を握る。
伊藤さんは「!」と顔を上げた。
それから俺を見る。
「俺は捨てない。君を友人として大切にする」
「...君は、優しい」
「優しいんじゃない。当たり前の事だ」
「違う」
「?」
「優しい」
伊藤さんは俺の手をゆっくり握った。
それから微笑んだ。
なんだこの子は。
そう思いながら首を振る。
そして慌てて立ち上がってから「お茶淹れないとな」と言ってから心臓をバクバクさせつつ移動する。
あぶねーぐらいに心臓が跳ねている。
何故?
☆
俺はお茶を伊藤さんに出す。
伊藤さんは「ありがとう」と言った。
それからお茶を飲む。
俺はその姿を見つつ俺もお茶を飲む。
すると伊藤さんが「その」と切り出した。
「鮫島くんは...オタク、だから振られたの」
「そうだな。オタクキモいだそうだ」
「...許せない」
「そんな幼馴染ってこったな」
「...あの。。もし良かったら」
伊藤さんは潤んだ目を俺に向ける。
その姿に「?」となりながら見ると伊藤さんは「やっぱりいい」と真っ赤になって首を振った。
それから俯く。
なんだ?
「伊藤さん?」
「覚悟をして」
「は?」
「私、貴方をこれから先(友人)としてトキメかせる」
「?!」
俺は意味不明なまま伊藤さんを見る。
伊藤さんは赤いままニコッと微笑みを浮かべたまま前を向いてお茶を飲んだ。
は?トキメ...かせる?
俺を?
友人として?
なんでだ?




