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決壊する夢

※残酷な表現があります

 彼女が入学して五日、僕は彼女に会いに行くべく、彼女の教室へ向かう。


 彼女が入学したら、きっと彼女と沢山会える。もっともっと近くにいける、そう思っていた。学校に入学すれば、侍女との時間は減り、僕との時間が増える。彼女の一番になるのは、きっと僕になる。


 そう思っていたけれど、実際に彼女が入学しても、会える時間が増えることはなかった。それどころか邪魔者は増え、彼女との距離は離れるばかり。ミスティアが入学して、きっと明るく楽しい学校生活が訪れると思っていたのに、思い描いていた幸せとは、全く違うものだった。




 彼女の入学式、彼女と一緒に行こうと迎えに行ったのに、既に彼女の馬車は出ていた。彼女はレイド・ノクターと入学式に向かったらしいと聞き、急いで追いかければ、学校についたところで邪魔が入った。


 目の前で転びそうになる新入生を反射的に抱き留めると、そこを彼女に見られてしまった。彼女の前で、彼女以外の人間を抱き留めるところを。触ったところを、見られてしまった。


 遠目からだったけど、僕が彼女を見間違うはずはない。絶対にあの時、僕を見ていたのは彼女だった。そしてその隣には、彼女を傷つけるだけの邪魔な存在、レイド・ノクター。


 憎悪の気持ちを抑えて、入学式が終わるのを待ち、彼女の教室へ会いに行った。彼女がどのクラスか分からないから、ひとつひとつ確認して、彼女を見つける。今度こそ話が出来る。帰りに待ち合わせをする約束をしようとしたら、丁度いいところに、彼女のクラスの、多分担任の教師がやってきて、邪魔が入った。担任教師は、彼女を見ていた気がする。二年生である僕が新入生である彼女と話していたから、だとは思うけど、やたら彼女に対して変な目を向けていたような気がして、嫌な気持ちになった。


 一緒に帰る為に待ち合わせをしなくても、待ち伏せをしていればいいと校舎近くで彼女を待てば、数人の女子生徒が話しかけて来て、僕を囲んだ。「かっこいい」だとか、「素敵」とか、「前に会ったことがある」だとか、くだらない、どうでもいいことを、口々に話す。


 そんな邪魔者たちから少し離れようとした隙に、校舎から彼女が出て来てしまった。そして隣には、当然のような顔でレイド・ノクターが歩いていた。


 追いかけようとすると、女子生徒に邪魔される。呼び止めようと声をかけようとしたと同時に、レイド・ノクターが僕を発見すると、奴は僕を見つけるなり、彼女の腕を勢いよく引っ張り、足早に彼女を連れ去っていってしまった。


 彼女の入学式。一度しかない、彼女の入学式なのに。僕は、当日、彼女におめでとうが言えなかった。彼女におめでとうと言ってお祝いはあげたけど、それは一か月前で、今日じゃない。彼女の入学式の日じゃない。彼女の、一生で一度の入学式の日じゃない。彼女の屋敷に行こうか迷ったけど、入学祝いで家族でどこかに行ったりしていそうだし、疲れているだろうと考えてやめた。




 そして、彼女が入学して二日目。


 彼女に会いに彼女の教室へ行くと、既に彼女の傍にはレイド・ノクターがいた。奴は、当然のように彼女の傍にいる。入学式から、ずっと。彼女を連れ出そうとすると、「昨日助けてもらった……」と女子生徒が近づいてきて、彼女の傍にいる人間が増えた。お礼なんていらない。邪魔なだけなのに。


 僕は苛立ちながら、どうにか彼女を連れて抜け出せないかと考えていると、レイド・ノクターは、彼女の前で、僕がその女子生徒を「抱き留めた」と口にした。


 レイド・ノクターはそれをわざわざ確かめるように、僕に言い放った。僕が、彼女以外の人間を抱き留めた、触ったことを言った。彼女の前で、僕が不誠実な人間だと、陥れようとしているのかもしれない。本当に邪魔だ。邪魔でしかない。忌々しげにレイド・ノクターを睨んでいると、また彼女とろくな話が出来ないまま、終わってしまった。


 休み時間は、移動教室が多くて彼女に会いに行けない。教室で僕の傍にいるのは、彼女じゃなくて、どうでもいい人間ばかり。媚びるような目も、甘えた様な声も、全部、全部気持ち悪い。


 彼女は午前授業で、放課後一緒に帰ることは出来ない。だけど彼女が帰宅する時間と昼休憩の時間は合うはずだと、昼の鐘が鳴ってすぐ彼女の教室に行った。でも既に彼女は帰った後だった。


 重い足取りで教室に戻ると、既に僕の席の周りは邪魔者で溢れていた。二年になっても変わらない光景。むしろどんどん酷くなっている気がする。一緒に昼を食べようとか、昼を作ってきただとか。纏わりついてきて気持ち悪い。


 気分が悪いと保健室に行こうとすれば、塊でついて来ようとする。疲れる。彼女と話がしたい。彼女とずっと会えるなら、ずっと彼女以外と会えなくなっていいのに。彼女と街づくりをしていた頃、「悪い魔法使いは生贄を用いて儀式をするんだよ」と彼女が話していた。この邪魔者たちを生贄にして、彼女とずっと一緒になれたらいいのに。そんな風に思った。




 彼女が入学して三日目の朝、彼女の教室の近くで、隠れて彼女を待ち伏せしていると、僕と同じクラスの男、ヴィクター・ネインを見つけた。彼女と同じクラスの人間に、彼女が居ないか尋ねている。


 いつの間に彼女と知り合ったのだろう。学校に彼女の知り合いがいることなんて、当たり前だけど。どこで会ったのだろう。入学してから? まだ入学して三日目なのに?


 腹が立つ。レイド・ノクターに続いて、ヴィクター・ネインも彼女を……?


 ふと我に返ると、いつの間にか彼女が、ヴィクター・ネインと共にどこかへ向かうところだった。


 慌てて後を追うと、二人は別棟で立ち止まり話をしていた。彼女は昨日、ヴィクター・ネインの妹を助けたらしい。そのお礼の話だった。


 僕のいない間に、彼女は……。彼女は、誰かを助けた。僕以外の人間を、助けた。彼女はいいことをした。だけど、彼女が、僕以外の人間を助けた。


 嫌だ、嫌だ。今まで、彼女の御屋敷と、僕、そして邪魔で邪魔で仕方ないレイド・ノクターで構成されていた彼女の世界は、どんどん広がって、邪魔者が増えている。


 今すぐ彼女をどこか遠いところへ連れ去ってしまいたい。


 そのまま彼女を待っていると、話を終えたであろう彼女が僕を見つけ驚いていた。僕は、彼女に、ヴィクター・ネインと何の話をしていたか、細かく聞いた。本当は、どんな話をしたのか全部知っているけど、何となく、彼女がどこまで話をしてくれるのか気になった。すると、彼女はどこか考え込む。


 何で、言えないの? 考え込む彼女の頭の中には今、ヴィクター・ネインがいるの?


 そう思うと圧迫されるように頭が痛んで、苛立った。苛立ちが、彼女にむけてなのか、ヴィクター・ネインに対してなのか分からない。


 その後だ、ふと、彼女を閉じ込めようと思った。そうすれば、誰にも邪魔されないと気付く。


 このまま、ずっと、何かに邪魔されるくらいなら、いっそ彼女を攫って、僕の部屋に閉じ込めてしまえばいい。


 僕がちゃんと、一人前になって、彼女が幸せに生きていける世界を作るまで、誰の目にも映らない、誰にも聞こえない。閉じた世界。僕しかいない世界に閉じ込めてしまえば、彼女には僕だけ。僕しかいない。


 僕の部屋に閉じ込めるのでもいいし、彼女が嫌だと言うなら別の部屋でもいい。使っていない部屋ならたくさんあるし。そうだ、そうしよう。彼女が僕を見なくなる前に。僕なんてどうでもいいと、彼女が思ってしまう前に。


 彼女の返答次第で、実行するのは今すぐでも悪くない。少しでも、ヴィクター・ネインについて隠そうとしたら、捕まえて、閉じ込めちゃえばいい。


 閉じ込める部屋は、はじめのうちは僕の部屋で我慢してもらって、彼女の気に入るお部屋が用意出来たら引っ越せばいい。食事や服を一人分多く用意するなんて余裕だし、卒業したらハイムの家は僕が継ぐようになっている。二年間だけじっとしていれば、彼女との屋敷だって建てられる。


 そんな風に考えながら、質問を続けると、彼女は意を決した様子で小声で話しはじめた。


「昨日、校内の生徒が、食堂の人にシチューをかけられることがあって、たまたま私がその場にいて、処置の手伝いをして、それであの人は……その関係者で、お礼を言われた……って流れです」


 考えながら、僕の目を見てはっきりそう言った。何一つ偽りの無い言葉。


 言葉に詰まっていたのは、学校側の対応がどうなるか分からないから、と話す彼女。ならどうして話そうと思ったのか聞いたら、「エリクが危ない目に遭ったら嫌だ」と彼女は僕を見る。感情的になったのか。敬語が外れ、先輩なんてつけず、僕をしっかり名前で呼んだ。


 彼女は、昨日会った出来事を、僕に説明すべきか、しないべきかで悩んでいた。話をしなかったらどうなるか、したらどうなるか。


彼女の頭の中を占めていたのは、ヴィクター・ネインではなく、僕。


 嬉しくて笑みをこぼすと、彼女は少し不服そうにする。その仕草が可愛くて、ついからかうと、さらに彼女は眉をひそめた。


 自分を閉じ込めようと考えているなんて、彼女は全く考えていないんだろうな。それどころか、自分に向ける暗い目を、体調不良による倦怠の目だと考える。


 そんな彼女が、酷く愛おしくて仕方が無い。


「だから……じゃなくて、ですから、ハイム先輩も気をつけてください。あと、この話は被害者のこともあるし、学校側の対応が分からないので、他言無用でお願いします」


「大丈夫だよ。ご主人との会話は何があっても、誰かに話したりしない、絶対に」


 君からもらったものを、誰かにあげるなんて冗談じゃない。どんな一言であろうと、残さず僕のものにしたいのだから。そう思って答えたけど、きっと彼女は、僕の真意は汲み取れない。


「……僕のこと、心配?」


「当たり前だよ。じゃなかった、当たり前ですよ」


 ふと気になって尋ねた言葉。期待通り、いや期待以上の言葉が返ってきた。彼女はいつだって、僕を助けてくれる。そして僕はいつだって、彼女に救われている。


 ああ、もっとお話ししたい。そう強く思ったと同時に、邪魔な鐘が鳴り、彼女と分かれた。




 彼女が入学して四日目、彼女を昼に誘おうとして、また邪魔が入った。レイド・ノクター、ジェイ・シーク、入学式で転んだ生徒。


 結局彼女は教師に呼び出され去ってしまったけれど、僕の心はいつものように重くならなかった。昨日、彼女と二人で話が出来たことが大きい。


 放課後になってすぐ、一緒に帰ろうと彼女の教室に向かうと、彼女は既に教室を後にしていた。




 そして、今日、彼女が入学して五日目。一限目の授業が終わると、二限目の担当教師が教室に入ってきて、都合により二限目の教室移動は無しという報せを聞いた僕は、今現在、彼女の元へ駆けている。


 厄介な人間たちに群がられないよう、別棟の階段をかけ降り彼女の教室に向かうことにした。早く会いたい。今日は時間割的に会いに行くことを諦めていたからすごくうれしい。またとない機会だ。絶対誰にも邪魔されたくない。


 階段を駆け下り、別棟と校舎をつなぐ渡り廊下へ向かう為、理科室の前を通り過ぎようとすると、彼女の名前が僕の耳に飛び込んで来た。


「まさか、アリス・ハーツパールをこらしめようとして、アーレン家の娘が出てくるとは思わなかったわ」


 彼女の名前を認識し、自然に足が止まる。踵を返し、慎重に音を立てないよう理科室に近付き、中の様子を伺うと、同じクラスの生徒や、隣のクラスの生徒数人が、輪になって話をしていた。


「次は、あの女が一人になった時を狙うしかないわね」


「あの女、エリクにべたべたと触れて、新入生のくせに、生意気よね」


 女子生徒は皆怒りを露わにしながら、話す。そんな話を、頭の中で整理する。


 アリス・ハーツパールをこらしめようとして、彼女が出て来た……?


 今理科室にいる女子生徒は皆苛立っている。なら、そのこらしめようとしたことは失敗に終わったということだ。そして、失敗させたのは……彼女?


 大体の仮説が出来上がった時、感じたのは、紛れも無い怒りと、憎悪だった。


 昨日、僕が彼女と放課後彼女に会えなかったのは、彼女が、こいつらの相手をしてたから。


 彼女は優しい、だから多分、アリス・ハーツパールとやらを助けていたのだろう。僕は会いたくても会えないのに、今理科室にいるこいつら……いや、邪魔者たちは彼女に簡単に会った、そして、それどころか彼女の手を煩わせた。


 腹が立つ。邪魔な奴らの分際で、彼女に会うだなんて。僕と彼女以外、みんな邪魔だ。消えてしまえばいいのに。


「それにしても、昨日のミスティア・アーレンのあの目も腹が立つわ!」


「アーレン家の令嬢が、どんなものかと思っていたけれど、まさかあんな娘なんて」


「あの家は大層娘に甘いそうですから、きっと自分が世界の中心、女王様を気取っているのでしょうね」


「本当よ! 先輩である私たちにあの態度! 無礼な人だわ!」


 彼女の名前を、軽々しく呼ぶ。彼女を侮辱する。何も知らないくせに。何も知らないくせに。何も知らないくせに。彼女の名前を呼ぶな。侮辱するな。ああ、苛立つ。何でみんな僕の邪魔をするんだろう。


 どうしてこんなに、邪魔なものばかり多いのだろう。みんな消えちゃえばいいのに。


 彼女を傷つける存在ばかり、どうして彼女の近くにいるんだ。


 いら立ちをぶつけるように力いっぱいに扉を開くと、中にいた邪魔者が一斉にこちらを振り返った。


「エリク様……」


 呼ぶな、僕の名前も。気持ち悪い、死んじゃえ。そんな言葉を飲み込んで、あくまで冷静に尋ねる。


「今の話、全部聞いてたんだけど、君たち、彼女、ミスティア・アーレンに会ったって本当?」


「いえ、私は、私たちは」


「答えて、くれないかなあ?」


 さっきまで、あんなに嬉々として彼女を侮辱していたくせに、今は邪魔者は皆怯えたように僕を見る。苛々する。いらないよそんな目、今すぐ潰してやりたい。


「え、ええ、昨日お会いしましたわ、でも、私たちは」


「エリク様の為に、エリク様にまとわりつく新入生を、正そうとして、そこに丁度、彼女がいらして……ちょっと、ねえ?」


 正す? 僕の為に? 何様のつもりだ?目の前にいる邪魔者は、僕の何? 何で、何の理由があって、彼女と僕の間を、邪魔したんだ?彼女を、侮辱した? 煩わせた?


 何も知らない、ただの邪魔者の分際で。どんどん頭が痛くなって、熱くなる。腹が立って仕方ない。今すぐ全員この場で、切り刻んで、ぐちゃぐちゃにしてやりたい。


 ……でも、そんなことをしたら、彼女は嫌がる。悲しむし、きっと僕を怒る。そんなことは、彼女は望まない。


 ……だけど、だけど、邪魔だ。全員邪魔だ。彼女を煩わせ、侮辱したのだ。彼女を。他でも無い、彼女を。


 ……許せない。許せる訳ないよ。


「もういいや、疲れた、やめたもう、いいよもうお前らなんか、最初からどうでも良かったのに。ご主人が、心配すると思ったから、優しくしてたけど、もういい、やめた。ご主人は優しい。優しすぎるんだ。そして、お前らは汚すぎるんだよ」


 ああ、ごめんね、ミスティア、やっぱり僕無理だ。もう無理だ、僕無理だよ。初めから、僕の世界には、ミスティアだけで良かったんだもの。目の前にいる何かは、邪魔者でしかなかった。君の為にと、仲良くしようと思ったけど、僕、結局駄目だった。やっぱりミスティアだけがいい。ごめんね、ミスティア。


「あーあ、纏わりつかれたり、好きだとか言われたり、気持ち悪い目で見てきたり、そういうの、ずーっと見逃してきたけど、もう無理。それだけは駄目だよ、彼女が何? お前らごときが、邪魔者の分際で彼女に関わったの?」


 許せるはずがない。安易に彼女に関わって、彼女を乏した。許せる訳が無い。


「何してくれたの……、本当に……。僕の為? どういう神経してるの? 新入生が、僕と仲良くして、お前らに何の関係があるの……? 関係ないでしょ? 最初に言ったよね? 僕。今ここにいる! ぜーいん! 全員に! 僕に! 好きだのなんだの言って来た時に! 僕は! 君の気持ちには応えられないよって……。ぎゃんぎゃん泣いたり、うるさくならないように、優しく、やさああああしく断ったよねえ……? それで、それでまだ分からなかった? 分からなかったから、そういうことしたわけ?」


「エリクさま……?」


「そんな顔向けないでよ、気持ち悪い。……はーあ、やっぱりちゃんと言わなかったのがいけなかったのかなあ」


 結局こんな、ミスティアを侮辱されるくらいなら、さっさと切り捨てておけば良かった。彼女に嫉妬してもらえたらな、とか、誰とでも仲良くなれるところを見せて喜んでもらいたいとか、そう思ってたけど。


「最後だからちゃんと言うよ。僕は、お前たちのこと、ううん、僕と、ミスティア以外の人間は、全員、邪魔なの。それでも排除しなかったのは、全部、全部ミスティアの為。ミスティアが悲しむから、そうしなかっただけ。……でも今は、今すぐここで消したいほどお前たちは邪魔」


 怯えながらも、まだ縋るような目を向けてくる邪魔者を睨みつけながら言葉を続ける。


「でも、この人数を一度に消すのは難しいし、お前らの顔、ミスティア、知ってるんでしょ? 昨日の今日でいなくなったこと知ったら、ミスティアも不安がるだろうし、多分自分の事責めてしまうから、だから、妥協してあげる」


 睨むのをやめ、溜息を吐くと、穏やかな笑顔を作り上げる。他人向けの、どうでもいい奴ように作っていた、いつも通りの笑顔を。


「頼むから、金輪際、俺と、ミスティアに、関わらないでくれないかな」


 優しく、馬鹿でも分かる様に邪魔者にお願いすると、皆揃えたように顔を青くしている。


「ああ、そうだ。もしもミスティア・アーレンに、手を出したり、出そうとしたり、ミスティア経由で許してもらおうとしたら家ごと潰して家族全員豚の餌にしてやるから」


 さよなら、と扉を閉め、時計を確認すると同時に始業の鐘が鳴る。ああ、また邪魔された。せっかく彼女に会えるチャンスだったのに。


 また、じゃまされた。


 とりあえず、邪魔者のこと調べて、全員始末する準備を整えなきゃなあ。


「ゴミ掃除、面倒だなあ」


 そう呟きながら、僕は自分の教室に向かって足を速めた。

●2025年10月1日全編書き下ろしノベル7巻&8巻発売

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