登校すら地獄への一歩
●2025年10月1日全編書き下ろしノベル7巻&8巻発売
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「えええ」
早々に眠りについたものの、緊張で普段の半分以下の睡眠時間で幕を開けた入学式当日の朝。制服に身を包み、メロに褒めてもらい、料理長の気合の入った朝食を食べ、屋敷の皆全員にお見送りしてもらい気合十分に馬車に乗り込み唖然とする。計画は完璧だった。それなのに、それなのに、見慣れた、見慣れ切った人物が、きらきらした金の髪を揺らし、こちらに透き通るような青い瞳を向け、笑みを浮かべている。
何故だ。何故ここにいる。理解できない。脳が拒否している。なぜ私の馬車に、レイド・ノクターが、乗っている?
「ミスティ……」
静かに扉を閉じ、考える。幻覚では? あまりに思いつめすぎて幻覚が見えているのでは?それに、レイド・ノクターがいるということは、ノクター家の馬車があるはずだ。周囲を確認しても馬車なんて何処にも無い。
大丈夫、幻覚だ。大丈夫。
もう一度開く。普通にいる。
「おはよう、ミスティア。扉を閉じてしまうなんて酷いな」
「え、あ、お、おはようございます……ごめんなさい、驚いてしまって……あの、ど、どうしてここに?」
「せっかくの入学式だから、一緒に登校しようと思って、来ちゃった」
来ちゃったじゃない! 断じて来ちゃったじゃないだろう。どうしてレイド・ノクターがここにいるんだ。
レイド・ノクターは、ミスティアを、置き去りにするはずなのに。意味が分からない。せっかくの入学式を一緒に登校しようと思ったミスティアを置き去りにしたのは、レイド・ノクターのはずだ。それなのに何故。
いや、もう来られてしまったのだ。原因を考えていても仕方がない。私は今まで彼に対し、数多くの「来ちゃった」を許し続けていた。しかし、今日という今日は許さない。許すわけにはいかない。投獄死罪一家使用人離散がかかっている今、今日こそ、絶対に私は、レイド・ノクターに強気に出なくては!
「あの、すみません私、今日は荷物が多くて、降りて頂け……」
「僕、馬車置いて来たんだ」
来ちゃったの次は、来たんだ。眩暈がする。頭が痛い。
「馬車呼びましょうね」
「今から馬車を呼ぶとなると、僕は遅刻かな」
「……」
「入学式早々、僕は遅刻かぁ」
そう言ってレイド・ノクターが私を見る。意味が分からない。何故馬車を置いてくる発想に至る? 何で? 道半ば馬車を置いてくるって何?
そして何故私が、レイド・ノクターという、投獄死罪一家使用人離散爆弾を連れて、学校に行かねばならない?
飛んで火に居る夏の虫ならぬ、灯油持ちて火に飛び込む猛暑の虫だ。
馬車を置いてきたレイド・ノクター。そんな彼を置いていくのは、惨い。
……しかし、ここで屈する訳にはいかない。デッドエンドから逃れるために、ここはきっぱり断る。レイド・ノクターに屈しない。今年の目標はこれだ。私は、レイド・ノクターに屈さな――……。
「入学式に、入学者代表で挨拶があるのになあ」
屈した。
学校に向かい走る馬車の中、レイド・ノクターがいる。勿論私もいる。
なぜなら屈したからだ。普通に屈した。
可能なら、可能ならば、レイド・ノクターに屈することなく彼を我が屋敷に置いていきたかった。一人で悠々自適に馬車に揺られたかった。しかし万が一、レイド・ノクターを遅刻させ、出会いのイベントをぶち壊しにしてしまったら、今後のイベントに影響が出る。なんてったって出会いイベント、初対面だ。断腸の思いどころかほぼ断腸してご乗車頂いた。胃が痛い。ちぎれてるかもしれない。
しかし、このままでいい訳が無い。このままだと「レイド・ノクターとミスティア・アーレンが一緒に登校」という前代未聞の珍事件、いや大事件が起きる。
今までの、「まぁ仕方ない」「本編がはじまったら何とかする」「ヒロインに頑張ってもらおう」は絶対許されない。今日は入学式、ストーリーは始まっているも同然。きゅんらぶのストーリーは開幕済だ。地獄へのカウントダウンは始まっている。
こうなったら、手段はひとつだ。学校に入った瞬間撒く。申し訳ないが、こっちは死罪投獄一家使用人離散がかかっているのだ。レイド・ノクターは、門に置いていく。持久走で、「一緒に走ろうね」と約束しておきながら、途中で走り去る裏切者が如く残酷に置いていく。
そうすれば主人公とレイド・ノクターのイベントにうっかり出くわすことは無いし、レイド・ノクターが遅刻し恋愛イベントの崩壊、弟狂いが深刻化、手遅れに、なんてこともない。
このまま、学校に着いたらレイド・ノクターを撒く。そう考えて、致命的な狂いに気付いた。
ミスティアの屋敷にレイド・ノクターが来たということは、ゲームでの、「ミスティアを置いてきた」彼の行動とは異なっているはずだ。
ゲームと現在でレイド・ノクターの学校到着時間が異なっているじゃないか。
まずい、非常にまずい、このままではレイド・ノクターが誰と登校しようがイベントが大崩壊する。出会いのイベントだ。攻略対象のいない出会いイベントなんてバグのレベルじゃない。
急いで出会いイベントを思い出す。登校時、彼女の周囲は人で賑わっていた。私は、入学式に向け早く出た。なるべく人の少ない時間にさっさとついて、校舎に入るために。
ということはだ、多分、恐らく、きっと、現在主人公が先に到着していることはないはず……。
入学時は校門の前で写真撮ってる人で混むから、なんて早めに出ていて正解だった。しかし、主人公が現れる肝心な時間が分からない。
こうなったら、校門の前で主人公が現れるのを待ち、さりげなくタイミングを合わせて馬車を降りて、そこから隠れるなりダッシュするなりでレイド・ノクターを撒くしかない……。
眩暈がどんどん酷くなる。
タイミングがシビアすぎる、一歩間違えれば鉢合わせ。コマンド入力ミスで即死するボス戦である。何故こんなことになったのだろう。今朝はささっと一人で登校するだけで良かったはずなのに、何でこんなボス戦みたいな緊張感なんだ。
窓の外をみる。ゲームのオープニングで流れた景色だ。
どきどきと、心臓が脈打つ。苦しい。入学式への期待では無く、将来の不安で。
……ああ、近付いている。もうすぐ始まるのだ、きゅんらぶが。半ば呆然としながら眺めていると、車窓に一瞬、桃色ポニーテールが映り目を見開く。
「あああああああああああああ!?」
「ミスティア?」
レイド・ノクターが驚愕の表情をこちらに向けている。当然だ。私が彼の前で絶叫したのは彼の家で暴れて以来。それ以降大きい声なんて出したことがない。気にしていられない。慌てて窓に張り付き確認すると、もうその姿は小さくなってしまっているが、はっきりと分かる。その、姿は、
「しゅ、しゅ、主人公だ」
「え?」
間違いなくあの桃色ポニーテールは、このゲームの絶対ヒロイン、主人公だ。
どうしよう、落ち着かなければ、今日は、いや、今日から絶対失敗出来ないのだ。ずれた登校時間を修正し、レイド・ノクターと主人公の出会いイベントを発生させ、私はさっさと校舎に逃げなければ。
慌てて窓の景色を注視し、現在地を確認した。このまま馬車が学校に着くまでの時間と、主人公が徒歩で学校に到着する時間を計算する。
……約二十分。レイド・ノクターと主人公を会わせるためには、彼を約二十分間足止めして、絶妙なタイミングで退避しなければいけない。
どうするか考えている間にも、馬車が停止してしまった。ああ、到着だ。見覚えのある校門、校舎。怖い。デッドエンド怖い。しかし感慨に浸る訳にも、不安に押しつぶされる訳にもいかない。
「あ、あの」
早速馬車を降りようとするレイド・ノクターを呼び止め、腕を掴む。
ここから二十分、自然に、かつ何としてでも、彼をここに留めなければならない。
「どうしたの?」
彼は不思議そうな顔をこちらに向けた。
「れ、れれれ、レイド様、入学式の前に、お、お、お話しませんか?」
「……え?」
完全に声が裏返り挙動不審になる私。警戒心を露わにするレイド・ノクター。まるで、五年前、我儘を言い彼の屋敷で暴れ倒した時の事を、再現するかのようである。
とりあえず、レイド・ノクターの肩を掴み、押し戻すように馬車の座席に座らせると、意思を汲んでくれたのか、案外彼はすんなり座ってくれる。良かった。
しかし、問題はここからだ。引き留めたのはいいものの、ここからさらに二十分間引き留める話題を考えなければならない。ここで彼を引き留めなければまた彼を狂わせることになる……のだが、肝心の話、レイド・ノクターと話すことが何もない。無策どころか無である。
まず会話と言っても、今後の布石になることが怖い。そもそも話のネタが無い。音楽も本も庭の話も文通でしているし、身近な兄弟の話題は普通に地雷。何か日替わりで話題にしやすそうなことは無いだろうか。
「も、もうすぐ入学ですね」
「そうだね」
「れ、れ、レイド様のほ……ほ、抱負……目標はありますか、入学にあたっての」
脳内をフル回転させ絞り出した質問。新入生、新入社員が近親者にめちゃくちゃ聞かれる、目標、抱負。わりと自然な質問だと思う。うん、大丈夫なはず。
「まずは新入生代表の挨拶の成功、かな」
たしかに、それは先ほど聞いた。そして、思い返せば主人公は、出会いイベントでレイド・ノクターと遭遇した後、ホールで行われる入学式で、新入生代表スピーチで彼が壇上に上がるのを見て、「あの彼は、レイド様という名前なのね!」と名前を認識していた。
「き、緊張しますか」
「まぁ、それなりに?」
どうしよう、どう会話を続ければいいんだろうか。私が「頑張ってください」と言ったところで、彼の頑張りには関係ないし、そもそも求めていない。
これからスピーチするのに「お疲れ様です」は変だろうか。じゃあ、なんて言えば良い?求めていなくても挨拶として「頑張ってください」が適切なのだろうか。いや、でも……
「ミスティアはどうなの?」
「でも、頑張ってくださいもお疲れ様も適切じゃないし……」
「え」
「い、い、いや何でもないです!忘れてください!」
レイド・ノクターは戸惑いの表情でこちらを見ている。まずい、全部口から出ていた。唯一の救いは「レイド・ノクター」とか言ってないところくらいしかない。このまま馬車に長居できる雰囲気では無い。
「……そろそろ行こうか?」
そう言って彼はゆっくりと立ち上がろうとする。慌てて馬車の中の時計を確認する。助かった、残り一分。窓の外を見ると主人公の姿が見える。多分、あと三十秒ほど耐えればタイミングはばっちりのはず。
「いや、もう少し、……ははは」
気付かれないように腰を浮かせ、馬車の手すりを気にしつつ、時間を測る。あと二十秒、十秒、五秒……
イベントを見計らったように人々の波が収まった。今だ! 今しかない! 馬使いに「ありがとう、いってきます!」と礼を言って、馬車から飛び出す。飛び出した瞬間、横目に桃髪の乙女の姿が見えた。タイミングは完璧。半ば駆けるように、しかし早歩きの姿勢と速度を保ちつつ、進む。いや、既に競歩である。
走ったら目立つ、早歩きでも大分目立つがもう気にしてられない。なるべく早歩きで進み、ゴールである校舎に向かう。流石貴族の学校だ、敷地が広い。校門から校舎まで中々の距離だ。その中々の距離を中々の早歩きで進めばゴール。そうすれば、出会いイベントに私が出くわすことは無いのだ。
ああ、もう校舎が目前。いける、いけると地面を蹴る。正直後ろが気になって仕方が無いが、振り返る訳にはいかない。昔話の怪談よろしく、危機迫る道で振り返ったら最後、訪れるのは地獄である。
正直もう息が上がりはじめて来た。苦しい、あと少しの距離が遥か遠く感じる。こんなことになるなら体力をつけておくべきだった、生きてたら、明日まで無事だったら身体を鍛えよう。
それか苦しくない呼吸法を、いや呼吸法とか考えている場合ではない。早く、はやく、一秒でもはやく校舎の中へ。
あと六歩ほどで、昇降口だ。あと五歩。四歩、三、に、いち、は……、は、入った……!。
膝に手をつき、呼吸を整える。
やった! やったぞ! 間に合った! 良かった!
終わった。何度も浅い呼吸を繰り返してしまうが、歩いていた時の重圧に比べれば全然苦しくない。
今頃出会いイベントが始まっているだろうが、私は今、校舎の中。完璧だ。これで、邪魔することも無い。周囲は校門のような人の群れじゃなく、下駄箱のロッカーの群れ。ああ、良かった。これで大丈夫だ。後は……。
「置いていくなんて酷いな」
あれ、ミスティアの言葉だ。ちょっと違うけど。転んだ主人公をレイド・ノクターが抱き留め、後ろからミスティアが……。いや、違う。今の言葉は私の口から出ていないし、私の目の前に人はいない。私の後ろにいるのは。
「れ、い、どさ、ま」
まぎれもなく、レイド・ノクター、その人である。
「どうしたの?ホールはこの先だよ」
呆然とする私の前を通り過ぎ、私の荷物を優雅に取り去る。あ、と声をあげたときには遅かった。
「こうすれば、君が先に行くことはないでしょう?」
所作が優雅なだけで立派なひったくりである。大丈夫ですからとさり気なく取り返そうとするが、びくともしない。この間弟と遊んでいたら「貴女の腕は簡単に手折れそうですね」と脅迫してきたくらいだ。力の差が段違いである。人間の腕は割り箸じゃない。割り箸は折れたら捨てればいいが人間の腕は一生ものだ。化け物か。
あれ、きゅんらぶ、世界観中世っぽいわりに、上履きの概念無かった? 指定の上履きあったよね?私今日持ってきたし、レイド・ノクター下駄箱で靴履き替えないの? 何で? と思い足元を見ると、今日は入学式だからか、床にはシートがひかれ、入学式まで土足でいけるようになっている。
いや、そんなことを考えている場合ではない。そんなことを考えている場合ではないのだ。
何でレイド・ノクターがここにいる? 何で私の目の前にいるの? おかしくないか?
それにレイド・ノクターがここにいるということは、主人公が転倒しかける寸前に彼女を抱き留める相手がいないということだ。
転ぶ人間を、抱き留める人間がいるから、負傷者がでないのだ。それが、抱き留める人間が不在なら、転ぶ人間しかいない。
主人公、校門で転倒するじゃないか。
そうなると非常にまずい、入学式に学校の校門で転倒なんて恥を主人公にかかせていいはずがない。それにイベントはどうなる。出会いのイベントだぞ。昇降口から飛び出し、校門に目をやると、今まさに校門の前で桃色の髪の乙女が転ぶ瞬間。
まずいと思い走り出そうとして、足が止まる。
「エリク……」
転ぶ桃色の髪の乙女を、赤墨の髪の青年が。
エリク・ハイムが抱き留めていた。
唖然としたまま目の前の光景を見つめていると、エリクはささっと主人公を立たせ、校舎に向かい歩みはじめる。主人公もエリクを追いかけるように進み始めた。
停止した思考が、危機を察知し動き出す。このままここにいたら、絶対まずい。
とりあえず、レイド・ノクターの腕をひったくりの如く引きながらホールに向かう。ホールの中はコンサートホールの様になっており、半分以上の座席は既に埋まっていた。入り口近くに立つ、「誘導係」と腕章をつけた先生であろう人の指示に従って、座席に着席する。端の席だ。出入りがしやすい。座席は先着順らしく、どんどん席が埋まっていく。
このままなら後から主人公が近くに来ることもないはずだ。安心して着席すると、レイド・ノクターは私の荷物を差し出してくれた。お礼を言って受け取る。
一呼吸して、考えを整える。とりあえず、助かったのだろうか……?
レイド・ノクターの出会いのイベントは、間違いなく失敗だ。本人が、そもそも会っていないのだから。しかし、本来ならそれで転ぶはずの主人公は、無事で。そしてそんな主人公を抱き留めたのは、エリク。
エリク更生の上で、彼と主人公の出会いイベントは懸念材料の一つではあった。何故ならエリクと主人公の出会いは、ミスティアが主人公を虐めなければ始まらない。
どんなルートでも、ミスティアが主人公に詰め寄ったり、水をかけようとしたり、突き飛ばそうとしたところにエリクが止めに入り、出会いが発生するのだ。
まだ、入学して一週間が経った頃に。
「レイド・ノクターに抱き留められたから」
「レイド・ノクターにお礼を言ったから」
「その後親しそうにしていたから」
などと言って、ミスティアは詰め寄り、水をかけ、突き飛ばす。鬼畜の所業である。
校門前の転倒は勿論故意では無い。抱き留められ、改めてお礼を言うのは当然だ。親しそうにしていたといっても、入学一週間の親交、たかが知れている。しかしミスティアはそれを許さず、これから始まる愛憎劇の序章とでも言う様に加害する。
主人公とエリクとの出会いにおいて、ミスティアの加害行為は、いわば引き金である。しかし、私はそんなことをする気は無かった。普通に、人に水をかけ突き飛ばす行為は犯罪である。どうにか別の方法で出会いを、と考えていたのだが、いい案が何一つ思い浮かばないまま、今日を迎えていた。
そんな困難を極めていた出会いイベントが、かなりロマンチックな形で発生した。偶然と言えど元はレイド・ノクターの恋愛イベント、ロマンチック度は申し分ないし、双方の印象も悪くないはず。それに主人公が校門の前で大転倒という惨劇も、回避できた。
何故あの場にエリクが居たのか、というところに不安はあるものの。エリクに関しては成功といえるかもしれない。
主人公がエリクに借りがある、という状態も、「ミスティアから助けてもらった」から「着地の衝撃から助けてもらった」に変わっただけで、流れは変わっていない、よって今後に響くことは無いはずだ。
だが、レイド・ノクターと主人公のイベントは、崩れてしまった。
「ミスティア、さっきのことだけど」
隣にレイド・ノクターがいることをすっかり忘れていた。そしていつの間にか手首を掴まれている。
「さっきのこと」
思い当たる節が多すぎる。馬車に留めたわりに話をしなかったこと、突然馬車を飛び出したこと、昇降口で呼び止められたあとにまた出ていこうとしたこと、腕を掴み強引に歩みを進めたこと。
彼に対し、無礼な振る舞いしかしていない。いつも礼儀だたしく接することが出来ている訳では無いが、今日は最も無礼な態度をとっている。
「すべてに関して失礼でした……ごめんなさい」
「いや、そういうことじゃなくて――」
レイド・ノクターが言いかけたのと同時に、腕章をつけた、教員か、恐らく職員らしき人が座席隣の通路から現れた。
「レイド・ノクター様、新入生代表スピーチの打ち合わせが……」
「分かりました、すぐ行きます……じゃあ、ミスティア、行ってくるね」
「は、はい、応援してます」
あれよあれよという間にレイド・ノクターは立ち上がると、私の手首を離し、職員らしき人と共に去っていった。
●2025年10月1日全編書き下ろしノベル7巻&8巻発売
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