引き分け
「先鋒アルマ、ゲイル、位置についてお互い礼!構えて!」
試合前の挨拶が終わり、用意された木剣を構える二人。アルマは対戦相手を睨みつける。方やゲイルは舐めたかの様にニヤケた顔でアルマを見るのだった。
「それでは始めっ!」
そして合図と共に試合が始まった。
攻撃はアルマの鋭い突きからとなった、開始早々に動いたアルマは電光石火の速さで瞬く間に3つの的を当てるとアルマが優位に立つ。しかしゲイルもお返しに2つを立て続けに当てると、そこからは一進一退の攻防になり第一試合は時間を迎えるのだった。
そして観客の歓声と共に審判を務めるダスティの騎士が勝者の名を宣言する。
「勝者アルマ!」
「やったぜ!」
ダスティは負けた騎士を蹴りつけ罵声を浴びせるのだった。
「油断しやがってこのクズめっ!貴様は降格だっ!!」
うなだれるゲイルはただただダスティに詫びを入れるしかないのだった。
「次、次鋒バルガス前へっ!お互い礼、構え!」
「始めっ!!」
次の試合、アルマは的一つ、バルガスは的四つでアルマは負けてしまうのだった。
「勝者バルガス!」
「ヌハハハハッ!当たり前だ!」
「すいません。先鋒より次鋒の方が上手かったです。」
「ちょっとなんで負けてんのよっ!ジーンさん頑張ってね!!」
「はい、お任せ下さい。」
「次鋒ジーン前へ、お互いに礼、構え!」
「それでは始めっ!」
開始早々バルガスが突っ込んでくる。両手のショートソードの木剣で連撃を繰り出すのだが、ジーンは片手の木剣でそれを軽々と受け流すのだった。
「勢いはよろしいが、擦りもしませんね。」
「クソッ」
「貴様も降格したいかっ!さっさと叩き潰せ!!」
ダスティの怒声に更に勢い付いたバルガスは、ジーンに体当たりを仕掛けるのだった。しかしそれを華麗に躱すと、ジーンは躱しざまに的を四つ当てるのだった。そして残り一つを当てるとジーンの圧勝で試合は終わるのだった。
「勝者ジーン!」
「ふふふ、さすがジーンです。」
「副将ジェイド前へ!」
「絶対に勝て!死んでも負けは許さんぞ!!」
「お任せ下さい。」
目を血走らせたダスティが半狂乱の表情で騎士ジェイドに叫ぶ。四人いる騎士の中で最強であるジェイドはその顔に自信をのぞかせ舞台にあがる。
「それでは始めっ!」
先程とは違い、間合いを取る二人。
「今までとは違う様ですね。うかつに間合いに入らせてはもらえませんか。」
「ふん、少しはやるようだかバルガス共に勝ったからと調子に乗るなよ。」
ジリジリと間合いを測る二人、先に仕掛けたのはジーンの方だった。
一気に踏み込み、ジェイドの懐に入ると右脇腹の的を当てる。しかしジーンも同時に的を当てられてしまうのだった。
「やりますね。」
「舐めるなよ。」
素早く距離を置く二人、しかしすぐにジェイドは攻撃を仕掛けるのだった。
ジーンは、それを避ける事ができず立て続けに三つの的を当てられてしまう。
「しくじりました。」
「あと一つだ。」
「いいぞジェイド!!さっさと片付けてしまえっ!」
「そりゃ!」
残り一つの的を当てられたジーンは負けてしまうのだった。
「勝者ジェイド!」
「すみません、力及ばすでした。」
「あれ?ジーンそんなものだったかい?」
落ち着きを取り戻したダスティがレイモンドに話しかけてくる。
「レイモンド卿、正直に申すと少々侮っておりましたよ。いやはやなかなかどうしてヴァル・キルマも素晴らしい武人がおられる様ですなぁ。我々も精進せねばなりませんなぁ。」
「これはご丁寧に、ですがまだ試合は終わっておりませんよ。そちらの副将は大変お強いですが、こちらのアサヒもなかなかですよ。」
「それは楽しみですな。おいジェイドよ。手加減など失礼だぞ。全力でお相手差し上げろ。」
「畏まりました。」
そしてそんなレイモンド達の会話を傍で聞いていたアコが悲鳴をあげるのだった。
「やだー、あんなおっさんとこ行きたくないよー!!アサヒ絶対勝ってよ!乙女の貞操がかかってんだからっ!!」
「はいはい。」
《……ジーンさん、なんで避けなかったんだ?》
「副将アサヒ前へ!」
「はい。」
「お互いに礼、構えて!」
「それでは始めっ!」
アサヒは脇に棒を構え、ジェイドは木剣を中段に構えジリジリと間合いを測る。
「なんだあの棒は?アイツは剣士ではないのか?」
ジェイドが仕掛けようと力を込めると、それに反応したアサヒが、棒を剣筋に合わせ防ぐ。側から見れば、両者は少し動いては元に戻るの繰り返しで見合っているだけに見えたが、実際のところジェイドは攻めあぐねているのだった。
「ぐぬぅ…」
「なにをしている!さっさとケリをつけろジェイドッ!!」
ダスティの怒声に押され、ジェイドが仕掛ける。
「ぬおーっ!」
木剣を下段に構え直したジェイドは、アサヒの棒を払い除けると、そのまま横に振りかぶると脇腹の的を狙う、しかし彼の斬撃は払ったはずの棒に受け止められ的には届く事は叶わないのだった。
そしてジェイドは連撃を繰り出すがアサヒは後ろに下がりながら、全て叩きおとすのだった。攻撃の届かないジェイドは一旦距離を置く。
「おいっジェイド何をしている!的を当てられているぞ!!」
「えっ!?」
アサヒは攻撃を払いながら、ジェイドの的を当てていたのだ。ジェイドの的はすでに三つ当てられ、残り二つとなったのだ。
「くそぉっ!!」
焦ったジェイドは両手で突きの構えを取るとアサヒに向かって飛び込んだ。そして突きの連撃を繰り出すのだった。しかしアサヒは突きの届かない距離を保つと、正確にジェイドの的を当てるのだった。
そしてジェイドの五つの的は全て当てられてしまうの。片やアサヒの的はもちろん全て残っていた。
「そ、そんな馬鹿な……。」
ダスティはジェイドの負けが理解できなかい様子で呆然とジェイドを見つめていた。
「勝者アサヒ!!」
「続いて大将ダスティ前へ!」
「あの団長の番ですけど……、」
「団長?」
「大将ダスティ!……、《あの、やりますか?》」
「はっ!?分かっている!!」
「やってやるよっ!!田舎モンが舐めるなよっ!!」
茫然自失したダスティは、周りの声が耳に入らずしばらくボケっと突っ立っていた。
しかし審判に呼ばれたダスティは木剣を握る。しかし普段剣の稽古などしないダスティは試合などした事もなく木剣を握る手は震えていた。
「クソッ、なんで私がこんな事をしなければならんのだっ!」
手と身体は模擬戦とは言え、戦いへの恐怖で震えていたがカチカチと音の鳴る口からはいつも通りの悪態が出るのだった。
「両者お互いに礼、構えて!」
「それでは始め!」
ダスティは恐怖のあまり、目を瞑り訳も分からず木剣を振り上げたままアサヒに突っ込んで行く。
強い衝撃の後、彼は仰向けに倒れ失神してしまうのだった。
アサヒはただ棒を脇に抱え構えていたのだが、そこへダスティが走り込んで来たので避けただけだった。そしてダスティは運悪く棒に正面から激突し気を失ってしまったのだ。
そう、彼が目を開けていたのならもちろん当たる事はなかったのだ。
「ダスティ様!!」
「団長!?」
周囲の観客からは失笑がこぼれ、憐れみの眼差しがダスティに向けられるのだった。
「皆んな、これで余興は終わりだ!!」
「船長!おい誰か!!早く薬箱を!」
審判を務めていた騎士が大きな声で船員に薬箱を要求する。
「おやおや、おしまいですか。まぁ仕方ありませんね。」
「そのようですね。」
「とは言え、アサヒ殿のお強いこと……、良いものが見れましたね。」
「おっしゃる通りで。」
「よかった〜!助かったよぉ」
胸を撫で下ろしホッとするアコ
そして余興は幕を閉じるのだった。
閲覧ありがとうございます。
よければブクマ、感想などお願いします。
あと少しで、第三部が終わります。(の予定……。)




