帰り道
「さて、レンフォを締めるとしよう。かなり重いが私とアルマ君で三匹づつ持って帰るでよいかな?」
「はい、なかなか大漁でしたね。」
パオロはレンフォを逆さに吊るし、血抜きをする。先の戦闘で大半の首は落とされており残りの首を手際良く落とすパオロ
「血抜きだけは必ずやらんとな、これで肉の臭みが抜ける。バラすのは村に帰ってからにしよう。」
「アル兄のおかげで今日の晩御飯は豪華になるね。」
「うぇぇ〜、パオロさんすんげぇな…」
普段の食事ではすでに解体された肉しか見たことのないアルには、首を落とされ逆さに吊るされるレンフォの姿は衝撃的だった。
パオロは狩人であり野獣達を仕留め、その肉を売り生計を立てているのでこれが当たり前なのだが、その生々しい営みに、住む世界の違いを感じるアルであった。
しかし、それはアルマも同様でジャガヌートに優しく接するアルの姿に、住む世界の違いを感じていた。
「さて、血抜きも済んだし行くとするか。」
「あ、ちょっと待ってください。」
アルは自分の上着と紐で簡易の抱っこ紐を作ると、そこにジャガヌートを包み込んだ。
「よっと、おいアルマ背中で結んでくれ。」
「はいよ。」
ジャガヌートを抱えるアルの背中で抱っこ紐を結ぶアルマ
「結構器用なんだな。アル兄」
「まぁな。昔は近所のガキをおんぶしたりしたんだぜ。」
「へぇ、意外だな。」
「なんか文句あんのか?」
「んな事言ってないだろ。」
アルの意外な一面にガンツォの面影を感じたアルマは、つい頬を緩めるのだった。
一通りの作業も終わり帰途につく三人だった。アルの懐では、すっかり大人しくなったジャガヌートが寝息をたてている。
「アル兄ってなんか凄いよな。ジャガヌートもすっかり懐いてるみたいだし。」
「確かに、幼体だからかも知れぬが、これ程大人しくしているとは、アル君の隠れた才能なのかもしれんな。」
「昔から動物とガキに好かれるタチなんスよ。」
「アル君の人柄なのだろうな。」
「どおなんスかねぇ。」
ズーに跨る三人はそんな会話をしながら深い森を引き返して行く。
見覚えのある風景に差し掛かり、森の出口に近づくと、少しづつ陽の光が増えてくる。初めての野獣との戦闘や、ジャガヌートとの出会いでアルは興奮が未だ冷めてはいなかったが、それに反して身体の疲れを誤魔化す事は出来ないでいた。
「なんか、すげぇ疲れちまったよ。コイツ重てぇしよお。」
「自分で連れてくって言ったんだろ。我慢しろよ。」
「分かってんよ!」
「まあまあ、初めての戦闘もしたんだ。疲れるのも仕方あるまい。今日はゆっくり休みなさい。ジャガヌートも一緒に私の家に来れば良かろう。」
「え、いいんスか?」
「明日からは森でテント生活をしてもらうがな。」
「ありがたいっスよ。お世話になりますっ!」
陽はまだ高く、目的地手前で引き返した事もあり、早く森を抜けアンジュの村にたどり着いた三人はパオロの家を目指す。
「さすがに村の中でジャガヌートは不味いので、見せぬ様に頼むぞ。」
パオロがアルに釘を刺すと、村人の何人かが、獲物をぶら下げた三人を見つけ近づいてきた。
「あらあら、パオロさんおかえり。今日は大漁じゃないかっ!お弟子さん達のおかげかい?」
ふくよかでいかにも人が良さそうな中年女性がパオロに声をかける
「そおだな、この子達はなかなか筋が良くてな。充分役に立ってくれたよ。」
「後で、肉もらいに行っていいかい?モモ肉骨付きを一本頼むね。」
「分かった、用意しとくよ。」
女性を皮切りに、何人か集まった村人達は次々と肉の注文をする。
「それじゃあ皆んな、用意しとくから後で家に取りに来てくれ。」
「うん、頼んだよ。また後で」
一通り注文を終えた村人が立ち去り、パオロの家に着いた三人。荷物とジャガヌートを家の中に入れると、パオロとアルマは庭先でレンフォを捌く用意を始める。
「アル君は、ジャガヌートと家の中で休んでいてくれ。」
「いやいや、そおゆうわけにはいかないんで手伝いますよ。」
「そうか、では先ずはレンフォの羽根をむしってもらおうかな。」
パオロは庭先に火を焚べると、大きな鍋を湯を沸かす。
「少し熱いくらいになったら、レンフォを入れてくれ。表面が温まれば羽根が取りやすいぞ。」
パオロの作業の様子を見て、見様見真似で作業をするアルとアルマ
「結構大変ですね。」
「だよな。何も知らなかっけど重労働なんだな。」
六匹全ての羽根をむしり終えると、肉の解体をはじめるパオロ
「後は、アルマ君とやるから晩御飯まで中で休みなさい。」
「すいません、お言葉に甘えます。」
アルは家に入り、ジャガヌートと共に休憩をする。中に入りジャガヌートの横で床に転がると、すぐに意識は深い眠りに落ちていった。
庭先では、パオロとアルマがレンフォの解体をしながら話しをしていた。
「彼はなかなか面白いな。」
「パオロさんもそう思いましたか。」
「なんと言うか、我々とは感覚が違うというか、育った環境が違うのだろうな。この国の者ではないのだろう?」
「はい、他所の国から来たんです。色々と面白い男ですよ。アルと仲間達は」
屈託のない笑顔でアルマは答えるのだった。
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