野獣との出会い
アル達がアンジュの村に着いた頃、クバルのJは、役所のサマンサを訪ねていた。
「おはようございます。例の計画書をお持ちしたので目を通していただけますか?」
「おはようございます。こちらもご用意できたので、ハーレーにお持ち下さい。」
Jとサマンサはお互いに、書類を渡しあう。
「それでは、私は早速ハーレーに向かいます。」
「はい、道中お気を付けて下さい。」
Jは役所を離れ、店のアサヒに早速ハーレーに向かう事を告げると、一路北を目指すのだった。
「二、三日は向こうに滞在すると思いますので、よろしくお願いします。」
「うん、頼むよ。俺も材料は揃ったから、いいモノ作れる様に頑張るよ。」
「ジェイク君なら、私達の話しに乗ってくれるでしょう。」
「あぁ、上手いことやってくれよ。」
そしてJは北行きの鳥車に乗り込むのだった。
「さぁ、俺もがんばって作るかな。」
アサヒもゴメスの店に向かうのだった。
西の森ではアルとアルマ、そしてパオロがズーに乗り、木々の間を進んでいた。
「アル君は、野獣とは戦った事はあるのかね?」
「いや、というか町中の喧嘩くらいっスかね。」
「戦闘訓練はしてますが、実戦はまだです。」
「そうか、しかし残念だが相手からしてみればそんな事は関係ないからな。襲ってくる野獣は君の命を狙ってくる。だから躊躇はするなよ。殺すより殺される方がよい。なんて事はないよな?」
「当たり前っスよ!ヤられる前にヤってやるぜ!」
「うん。いい意気込みだな。」
それから約二時間程森を進み、開けた場所で三人は休憩がてら昼食をとる事にした。
「あと少しで、目的地だな。」
「なんか思ってたより近いっスね。」
アル達が不時着した時は、北東を目指した為、クバルより北部に進路をとって森を進んでいた。しかし今回は、クバル近郊の村からフェイロンを目指したので、三分のニ程度の時間で到着できたのだった。
三人が休憩していたその時、森の奥では八匹のレンフォの群れが獲物の狩りをしていた。
レンフォに追われているのは中型犬程の大きさの黒い獣であった。その黒い獣は飛びかかってくるレンフォを避け、なんとか森の中を逃げている。しかしレンフォの鋭い爪や、硬く大きな嘴の攻撃を受けた様で、身体のあちこちから赤い血を流していた。
そして、レンフォはその獲物を追い立て、代わる代わる攻撃をしながら、獲物が力尽きるのを待っているのだった。
黒い獣は必死に森を進む、そして開けた場所に飛び出す。
しかしそこには黒い獣が初めて見る生物が三匹と、大きな鳥が三匹居たのだ。
後ろからはレンフォ、そして目の前には得体の知れない生物、驚いた黒い獣は怪我と疲れで立ち止まってしまうのだった。
一方、休憩をしていた三人も森の異変に気付くのだった。
「うん?」
飲み物を飲んでいたパオロが何かに気付いた様子で、話していたアルとアルマに手を上げ、静かにする様に促した。
森の奥からは何かが動く音と共に、レンフォの鳴き声がこだましている。
だんだんとこちらに近づいてくる気配に、三人はそれぞれ、武器を手に緊張を走らせる。
「どうやらレンフォが獲物を追っている様だな。近くにいるぞ。」
「来ますかね?」
「分からんな。」
レンフォの鳴き声のした森を見つめる三人。その森からはガサガサと何かが走り動く音と獣の気配が強くなる。
次の瞬間、三人の目の前に飛び出して来たのは、レンフォではなく中型犬程の大きさの黒い獣だった。
「これは?ジャガヌートか、しかも幼体だな。」
「レンフォはこいつを追ってたって事ですか。」
「その様だな。うむ、レンフォも来るぞ!」
飛び出した先に、三人がいて驚いたジャガヌートの子供は、よく見ると怪我をし、あちこちから血を流している。そして立ち止まりこちらを威嚇するのだった。
そして、ジャガヌートの後ろからは身の丈1m程のレンフォが勢いよく次々と飛び出してきた。
そのうちの数匹はアル達に気付き、威嚇の鳴き声をあげたが、すぐに獲物のジャガヌートに向き直った。そして獲物を仕留める為にジャガヌートを取り囲むのだった。
「今のうちに、この場を離れるぞ。」
「え?アイツ可哀想じゃないっスか!」
「いらん戦闘は避けるべきだ。同情はしてられん。」
パオロは、レンフォの数とアルの事を考え、この場を逃げる選択をしたのだ。
しかしアルは怪我を負ったジャガヌートを囮にこの場を離れ事に躊躇する。そしてこの場を離れ様とするパオロとアルマを尻目に腰のショートソードを握りしめ、覚悟を決めた顔をした。
「クソッ、あーっ!ダメだ。助ける!!」
そう言うと、アルは鞘から剣を抜き一人レンフォ達に駆け出し立ち向かっていく。
「馬鹿っ!アル兄やめろって!!」
レンフォの一匹が、ジャガヌートに飛びかかり大きな嘴で胴体に喰らい付く、そして次々と他のレンフォも飛びついていく。
「おらぁーっ!」
アルは、ジャガヌートに飛びかかるレンフォをショートソードで払いのける様に横に斬りつけると、その刃は見事にレンフォを捉え1mの身体を吹き飛ばした。しかし踏み込みが甘い所為かトドメを刺すには至らず、立ち上がり、アルに向けて怒りの雄叫びをあげるのだった。
「グギャーッ!!」
「かかって来いやー!」
雄叫びに呼応する様にアルも気合いの雄叫びをあげる。
そして仲間のレンフォが攻撃された事に気付いたレンフォは、標的をジャガヌートではなくアルに替え襲いかかってきた。
「まじかよ!しょうがねぇな!!」
アルマもレイピアを鞘から抜くと、アルに襲いかかるレンフォに刃を向けた。
アルマの突きがレンフォの胴に突き刺さる。しかしレンフォは怯む事なくレイピアを嘴で挟む。
「なんだよ!コイツら痛みが無いのか!?」
「レンフォは身体の羽根と脂肪で、なかなか芯に刃が届かんぞ!首を狙えっ!!」
パオロが片手剣を抜き、アルとアルマに加わる。そして二人に助言すると、手に持つ剣で、レイピアを咥えるレンフォの首を見事に斬り落として見せた。
「分かりましたっ!」
アルマは目にも止まらぬスピードで、レイピアを振るうと、二匹目のレンフォの首を斬りつける。細い刃はレンフォの首を楔形に抉ると、そこから大量の血が流れ出しレンフォは絶命した。
アルは、一撃目を叩き込んだレンフォと戦っていた。
「くそっ!離せよ!」
レンフォは振り下ろされた剣を嘴で挟み、アルの動きを止める。しかしアルは引き摺り倒そうとするレンフォ腹に蹴りをおみまいする。そして蹴りの勢いで離れたレンフォの顔にトドメの一撃を斬りつけた。
「よいしょーっ!!」
掛け声と共に下から振り上げられた刃はレンフォの嘴に当たり鈍い音を上げる。レンフォの首はあらぬ方向にねじ曲がり、顎はダラリと下がり、見事に三匹目にトドメを刺すのだった。
「よっしゃ、あと五匹!」
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