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本祭(音楽祭 後編)

意外な彼が踊り狂います(笑)

 時刻は夕方4時、中央広場にはいつもに増して大勢の人で溢れていた。クバルの住民はもちろん地方からの観光客も集まっていた。

 

 来賓席にも各地から集まった貴族や豪商が姿を見せていた。

 来賓に用意された観覧席は噴水前に三段に設けられており、最上段が来賓用、二段目と一段目が関係者席となっている。


「サマンサ首長はヴィザンツの伝統舞踊の一つを披露されるとか、確か男女の愛と情熱を表してた踊りですわね。フィルモアの舞踏会で拝見した事がありますけども、とても楽しみですわ。」


「ほお、それは楽しみですねぇ。」


「それと舞台拝見しましたわ。相変わらずお上手ですこと、レイモンド様」


「お見苦しい物をお見せしました。私などまだまだ、とは言えお楽しみ頂けたのなら幸いです。」


「それはそうと、サマンサ首長に斯様なご趣味があったとは存じませんでしたよ。」


 来賓席のレイモンドとその隣には南のファムの貴族ロレーヌがいた。


「そういえばヴィザンツと言えば、今度の討伐にお名前が上がっているとか、レイモンド様もお忙しくなられるのかしら?」


「討伐はシンワもそうらしいですぞ。彼の国は、御子息の件で色々と大変らしいのに王族もご苦労様が絶えん様ですな。」


「噂はちらほらと伺っております。第一王子が行方知らずとか…。まぁ、いずれにせよ海の向こうのお話ですよ。今回は私どもにはあまり関係はございませんねぇ。」


「何をおっしゃるか、ヴァル・キルマ随一のレイモンド商会現会長の言葉とは思えませんぞ。」


 初老で恰幅のよい身体に口髭の男が二人の会話に入ってきた。彼は首都キルマーの貴族ログナーなのだ。


「ログナー殿、買い被られては困ります。私如きは細々と商いをやらせて頂いているだけで、御二方の方がお忙しくなられるのでは?」


「ほっほっほっ、程々にですよ。儂よりもロレーヌ女史の方が穀物の出荷でお忙しいでしょうな。」


「私も程々にでございますわ。」


「まぁ、私達には魔族討伐は義務ですからね。他国の内政はいざ知らず、クライス聖皇国の意向には従うまでの事です。」


「御三方とも、御商売繁盛なによりでございますなぁ。レイモンド様の舞台私めも拝見させて頂きましたぞ。商売も一流、更に芸術にも造詣がお深いとは、愚生感服致しました。」


 三人の会話にグースが口を挟む。


「まあまあ、そんな事よりステージを楽しもうではないか。このような祭りでその様な話しは無粋というもの。さぁサマンサ殿のステージが始まるぞ。」


 グースの言葉を遮る様に、もう一人の貴族トゥールーズ卿が皆に告げた。

 そして、ステージには照明が灯り、司会のブルーノか登壇する。


「長らくお待たせ致しましたっ!これより復興祭のメインイベント、音楽祭を始めたいと思いますっ!!」


 ブルーノは興奮を隠さずマイクを握りステージ上に立っていた。


「来賓の皆様、ならびに来場の皆様も大いに盛り上がって頂きます様お願い致します!」

「それでは先陣を飾るのは我等がクバル首長サマンサそして秘書のフューリスです!!曲は【情熱の花束】!!」


 ステージ上には何人かの演奏者がスタンバイし薄明かりの中曲が始まる。異国の音楽が打楽器と弦楽器によりリズミカルに流れ出す。音にあわせステージ両脇からサマンサと部下の秘書の男性が出てくると、二人にライトが照らされた。

 曲が止み、二人がステージ中央で向かい合い見つめ合うと再び演奏が始まった。

 テンポのよいリズムに合わせ踊りだすサマンサと秘書。

 ラテンアメリカダンスの様に情熱的に舞う二人に客席からは大きな歓声が上がるのだった。


 華麗なステップと伸びやかハンドアクション、そしてキレのあるサマンサの腰つきに観客は釘付けになっていた。

 秘書が、戯けて逃げる素振りのサマンサに手を伸ばす。サマンサはその手を握ると綺麗なターンで秘書の腕の中に舞い戻る。

 離れて距離をとると、サマンサはドレスの裾を掴みひらひらと優雅に揺らし秘書を誘う。背中を見せては振り返り誘う様に腰を回し秘書を見つめるサマンサ。

 秘書はサマンサに駆け寄り腰に手を回し、二人でターンを決める。

 曲のクライマックス、二人は手を繋ぎターンしては離れ、そしてターンしては腕の中に戻りを繰り返す。曲に合わせてフィニッシュを決めると、大きな歓声と拍手が中央広場を包むのだった。


「ありがとうございます。サマンサ&フューリスのお二人でしたー!!」


 興奮冷めぬサマンサと秘書は満面の笑顔で、観客席に挨拶をしステージを後にした。


「お次は、クバルの歌姫リタ・モレーノに登場していただきます。それでは準備をお願いします。」


 ステージでは出演者達が歌や踊りを披露している。一方Dガールズ出番を待っていた。


「さぁ、髪の毛もお顔もOKだねー。アコちゃんとっても可愛いよー。」


「すご〜い!ニコルさんありがとね。」


『アコちゃん可愛いー!』


 ステージ横の出演者控室には、アコとネェルそしてニコルが準備をしている。


「じゃあわたしはもう行くね。Jさん呼んでくるから、本番頑張ってねー。」


「「はーい。」」


 ニコルが部屋から出て入れ替わりにJがやってきた。


「うん、いい出来ですね。さすがニコルさんです。」

「さて、ここまで来たら私から言う事はもうありません。私も関係者席で応援してますので、ステージ楽しんで下さい。では」


「「はい!!」」


 準備が整い後は順番がくるのを待つだけとなったDガールズ。そしてJは大きな荷物を持ち漢等の下へと向かう。


 アサヒを始めチェン運送の仲間やガンツォファミリー、ミゲルやマルコらから多くの激励を受けここに至るDガールズ、少しの不安と多くの期待を胸に舞台袖に立つ彼女たち、

 

「とうとうだね。」


『うん。ステージ楽しみだよ。』


「ネェルちゃんは緊張しないの?」


『全然しないよ。だって楽しみだもん。』


「そーだね。うん、思いっきり楽しもう!!」


 いい笑顔の二人、そしてついに順番がやってきた。


「さぁ、続いては最近クバルで大評判の運び屋チェン運送と自警団からの若い二人の出場です。」

「その名もDガールズ!!それではスタンバイお願いしまーす!!」


 ステージでは前の出演者が退場し、二人が舞台に歩を進める。

 

 「それではクバルの新しい歌姫二人組、Dガールズ!【まごころをあなたに】お願いします!!」


 前奏が流れ、揃いのワンピースを着た二人はスタンドマイクの前に立つ。アサヒの屋台前でのライブのおかげで二人はすでに住人に覚えられており、観客の中には彼女達のファンになった者達が、声援を送っている。

 そしてライトに照らされた二人は歌い出す。

      

 

 忙しい毎日 過ぎゆく時の中

 いつもどんなときも あなたを想う


 ここにいないあなたに ありったけの想いをこめて

 いつもどんなときも 隣にいてくれた


 素直な気持ち 愛するあなたに

 送り届けたい まごころをあなたに 


 

 ミドルテンポの音楽に合わせ、若い二人の声が会場に響くと、観客は手拍子を始める。

 魔族により傷ついた街と住人達を癒す様な二人の澄んだ歌声に観客たちは聴き惚れるのだった。


 曲が終わり、二人は深く頭を下げ挨拶をする。会場は割れんばかりの拍手と声援に包まれた。


「アコー!」


「ありがとうございましたー!」


「ネェルちゃーん!」


『皆んな応援ありがとー!』


「引き続きましてDガールズ!皆さん盛り上がる準備はいいですか!?それでは二曲目【君にとどけっ♡】どーぞっ!!」


 一曲目とは打って変わって、早いリズムのビートが流れる。ライトが明滅を繰り返し、いつの間にか二人の姿が消える。スタンドマイクが片付けられ、ステージ中央奥に用意されていた1m程の高さのステップの上には衣装を変えた二人が現れた。

 ステージ下では、漢等がJの用意した衣装を見に纏う。


「みなさーん!はじめましてー、アコでーす!」


『ネェルだよー!』


「せーの」


「「みんなに幸せデリバリー!私たち、ディィィガールズ!!」」


「「チェン運送、自警団おすすめカレーライス!みんな食べてねー!!」」


「カレーライスサイコー!!」


 一曲目の衣装とはまるで違う、ボリュームのあるミニスカートに、アイドルらしく可愛いらしい上着を身に纏い元気に踊り出す二人。

 そして客席ステージ前中央あたりには、揃いの法被と鉢巻を巻いた集団がいつの間にか姿を表していた。


「なんですか、あれは?なんとも破廉恥な格好!!しかもやかましいだけで!!」


「そおですか?なかなか可愛らしではないですか。曲も私は好きですよ。」


 アサヒ達の関係者という事もありグースが文句を言うが、レイモンドは興味を持った様だった。

 ステージでは、軽快な曲に合わせ華麗に踊り楽しげに歌うDガールズ。客席ステージ前では、曲に合わせ色とりどりに光る棒を両手に一糸乱れず踊る男たち。その先頭の真ん中にはポルコが陣取っていた。そして会場は一際大きな歓声で興奮の坩堝となっていく。


 大事に包んだ この気持ち


 必ずとどける どこまでも


 「君にっ!」『はいっ!!』


 「君にっ!」『はいっ!!』


 「君にっ!」『はいっ!!』


 男たちはサビの合いの手と一緒にジャンプする。


「なんと軽薄な、あの男どももあの様な格好で恥晒しもいいとこ!!そう思いませんか?レイモンド様」


 グースがレイモンドの方を振り向くと、彼はそこに居なかった。


「レイモンド様?」


 レイモンドはいつの間にか、ポルコの横にいたのだ。そしてその手には光る棒を握りしめ、彼らと共に踊り狂っていた。


閲覧ありがとうございます。


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