本祭(食べ物コンテスト予選)
レイモンド主演舞台(クバルの復興)の興奮冷めやまぬ会場では、屋台が賑わいを見せていた。
各屋台では、決勝出場をかけ趣向を凝らしたグルメが並ぶ。そして各店、宣伝に余念はなく店先や町中でチラシを配る者もいたのだ。
「はじまりましたねぇ。」
「おう!優勝めざしてガンガン売ろうぜ!」
コンテスト出場者のエリアにはアサヒとゴメスがカレーライスの準備で忙しなく動いていた。他の店はすでにオープンしているところもあり、若干出遅れた感はあった。
アサヒ達から見える他の屋台では、すでに人集りのある店もあるのだ。
「さあさあ皆さん!寄ってって下さいな!高級黒毛長牛のローストだよ!!」
人集りの出来ている方から、何やら聞き覚えのある声が聞こえてくる。その声の主はシンブに一緒に行ったガストンのものだった。
「あの人もコンテストに出るんですね。」
「黒毛長牛っていやぁ、なかなかの高級品だぜ、金に物言わせていいもん使ってんなぁ」
「これは、これは、ゴメス殿とアサヒ殿ではないですか、あなた方もコンテストに出場されるのですねぇ」
アサヒの店にグースがやって来て、声をかける。
「ええ、僕の故郷の料理なんですが、クバル風にアレンジしてみたんですよ」
「なかなか良い香りですなぁ、食材も庶民的で一般の方にはちょうど良さそうですな」
若干言葉にトゲがある物言いで、相変わらず表面上は笑顔のグースなのだ。
「あんたは出店してないのかい?」
ゴメスが訊ねる。
「あぁ、私どもの店はあちらですよ。とは言え、私は素材の仕入れをお手伝いしただけですがな。」
先程から人集りのある方を指差して、グースは満面の笑みを浮かべる。どうやらグースはガストンと二人で黒毛長牛の店をやっているのだ。
「開店早々にお客様が集まってしまって、提供が追いついておらん様で、ガストンの奴は困っておりますよ。」
「ようっ、景気良さそうだな。グースの旦那」
アサヒ達とグースが会話しているとガンツォが再び顔を見せにやって来た。
「っ!!ガンツォ…殿。なにやらお怪我をされたとか、もうお身体よろしいのですか?」
「あぁ、見ての通りだ。そんな心配してもらえるとはなぁ。また困り事があったらいつでも来いよ。悪りぃ様にはしねぇぜ。」
ニヤニヤと含み笑のガンツォ
「ほっほっほっ、何かあればお願い致します。」
引き攣った笑顔でガンツォに答えるグース
「それではアサヒ殿、ゴメス殿、お互いがんばってクバルに貢献いたしましょうな。」
そしてグースは薄っぺらの笑顔のまま、そそくさとガストンの居る店に戻って行った。
「なんだあの野郎、感じ悪りぃな。」
「ああいう人なんですね…」
「ワッハッハッ、ぶっ倒すにゃあ丁度いいんじゃねぇか?あの因業ジジィなら。」
「んで、カレーライスの準備はどおだ?」
「あぁ、バッチリだよ。」
「そりゃあよかったぜ。うん、ところでよ、色々とすまねぇな。うちの奴等の面倒も見てもらっちまってよ。だからって訳じゃねぇが、なんかあったら言ってくれ。借りっぱなしは性に合わねぇからよ。」
「いや、うちの方こそ助かってるよ。皆んな働き者だし。だから貸し借りは無しで良くないかな?」
「そうか分かった。オメェがそう言うなら、貸し借り無しだ。そんじゃあカレーライス楽しみにしてっから、後でガキどもと、うちの奴等連れて来るぜ。じゃあな」
クバルの顔馴染み達の来客からしばらくするとアコとネェル、そしてミゲルが荷物を持って店に現れたのだ。アコとネェルの二人は何故か全身を覆うマントを身に纏っていた。
「おーい。アサヒ〜。」
「あれ、どうした。レッスン中じゃないのか?」
「今日からは実地訓練なんだってさ。」
「実地訓練?」
「そう、Jがアサヒとゴメスの店の前で歌えってさ。」
「は?」
「お店の宣伝も兼ねて、人前で歌う練習をしてこいってことじゃねぇのかい?」
「あぁ、なるほどね。」
困惑するアサヒにゴメスが答えた。たしかに配送がてらチラシ配りはしたのだったが、派手なパフォーマンスまでは考えていなかったアサヒは驚きはしたもののJの発想に関心をする。
そして荷物運びをさせられたミゲルは若干不満げにアコに荷物の事を訊ねた。
「なぁ、コイツはどぉすんだ?」
「今から私たちの初ステージをやるから、それの準備してね」
「おいおい、俺はお前らのマネージャーじゃねぇんだぞ。まったく…」
ミゲルは荷物の箱を開け、中から音楽プレーヤーを出し、路上ライブの準備をするのだった。
更に、カレーライスとDガールズのイラストと共に宣伝文句の書かれたチラシが箱の中に用意されていた。
『音楽祭出場Dガールズおすすめカレーライス、みんな食べてね♡』
「あいつ色々できるんだな…」
何はともあれ、来客がまだ少ないアサヒ達の屋台の前では、アコとネェルの初ステージの準備は整ったのだった。
「それじゃ、私達の初ステージだよ!気合い入れてぇーいっくぞーー!!」
『おぉー!!』
二人はおもむろにマントを脱ぐと、その下にはステージ衣装を着こんでいたのだ。
「こんばんわー!みんなはじめましてー!私はボーカルのアコでーす!」
『はじめましてー同じくネェルだよー!』
「せーの!」
「「みんなに幸せデリバリー!私たち、ディィィガールズ!!」」
二人の挨拶に合わせて、ミゲルがプレーヤーのスイッチを入れると音楽が流れ出す。
軽快な曲に合わせて踊り出す二人、突然鳴り出した音楽と、この世界ではかなり珍しい(と言うより見た事も無いであろうデザイン)アイドル衣装の二人に、会場に来ている人々はアサヒ達の屋台前に集まりだしたのだ。
「アイツらすげぇなぁ!お客さんも集まりだしたぞ!」
ゴメスは初めて見るアコとネェルの歌と踊りに興奮するのだった。そして集まった人々もゴメス同様にアコとネェルのパフォーマンスに手拍子を送り盛り上がっていった。
「いいねぇ!お客さんの流れがこっちにきたぞ。」
「「みんなー!Dガールズおすすめカレーライス、ぜひ食べてねーっ!!」」
「いぇーい!!アコちゃん最高ー!!」
「ネェルちゃん食べるよー!」
やはり年頃の娘の力は絶大で、見事に年齢を問わず男性のハートを鷲掴みにするのだった。そして集まりだした客にすかさずチラシを配るミゲル。
立派にマネージャー業をこなすおっさんミゲル、いい働きっぷりである。
そのおかげでアサヒのカレーライスの売り上げもグングンと伸びていくのだ。
本祭一日目はDガールズの活躍もあり、オープン時こそ出遅れたものの大盛況で幕を閉じるのだった。
二日目、初日のアサヒ達のDガールズの活躍を見たグース達は、夜の仕事をしている女性にウェイトレスをさせる作戦で対抗をしてきた。グース達の黒毛長牛のローストの値段は正直高くはあったが、女性のサービスの効果もあり大盛況であった。しかしアサヒのカレーライスも前日の宣伝効果とリピーター、そしてクチコミで売り上げをのばし、両者は接戦を繰り広げるのだった。
三日目、グース達は起死回生の一手を繰り出す。なんとアルコール一杯サービスを始めるのだった。まさに潤沢な資金力にものを言わせた手口でアサヒ達は差をつけられてしまう。しかし、決勝戦への切符は上位五組であり、決勝戦ではその美味しさ、値段、そしてクバルのご当地メシに相応しいかが採点のカギとなるため、アサヒ達は上位五組を目指すのだった。
もちろんライバルはグース達だけではなく、麺を炒めて甘辛く味付けされた焼きそばに似た物やハンバーガー的なもの、そしてレンゴのポモド煮込みなどなど、どれも手強そうな料理が並んでいる。
そして三日目終了間際には、決勝戦出場が有力な店も絞られてきていた。アサヒ達の店はというと………、そう!もちろん上位に食い込んでいたのだ!!
明日、そんな彼らの命運がかかった本祭最終日の四日目が音楽の祭りとともに訪れるのだ!!
閲覧ありがとうございます。
お祭りもうしばらく続きますんでお付き合いお願いします。




