クバル復興祭
「なぁ聞いたか?復興記念の祭りを企画してるらしいな。」
「あぁ!聞いたよ!かなりでかい規模らしいぞ、魔族の件でみんな落ち込んでるから景気付けにはもってこいだよな!」
役場の会合から数日後、町ではすでに祭りの噂が流れ出していた、そして住人の反応は概ね良好で、むしろ明るい催しを心待ちにする程であった。
そのクバルの住民達の話しは役場のサマンサ達にも届いていたのだった。
「首長、町では祭りの噂が広まっている様ですよ。」
「その様ですね、私の耳にも入っておりますし、皆心待ちにしている様だとも伺っております。」
「如何されるおつもりです?」
「まずは、住民の意見を確認するのが先決だと存じます。」
「それと併せて催しのアイデア募集も行います。」
斯くして、サマンサの意向により祭りの開催の是非を問う住民投票が行われる事になり、それに伴うアイデア募集の話題は、町に活気を取り戻すには十分な材料となっていった。
「真面目だけが取り柄かと思ったけど、サマンサ首長もなかなかやるなぁ。」
「お前はなんかアイデア出したのか?」
「あぁ、やっぱり美味いもん食って、呑んで騒ぐのが一番だろ?だからさ、食べ物の屋台対決とか面白いじゃねえかと思ってさぁ。」
「いいねぇ、食って呑んで、後は音楽だよな。」
そして住民投票は行われた、その投票率は90%を超え、未だかつてない盛り上がりの中、賛成多数により開催が決定される。
更にアイデア募集も相当数が寄せられ、それらの大多数にある音楽と食に関する内容の催しを行う事も決まった。
「火急の作業、皆さんご苦労様でした。住民の意思確認は取れましたので、晴れてレイモンド卿の提案を採用したいと思います。それでは、今よりクバル復興祭の実行委員会の立ち上げを宣言致します!」
サマンサの宣言と共に復興祭実行委員会の立ち上げが決まるのだった。
そして祭りの開催日と催しについて役場では会合が連日話し合われていった。
「やはり、町の復興が終わってからの開催が望ましいのではないでしょうか?」
「左様ですな、少なくとも正門と大通りの修復が最優先に完了させねば、格好はつきませんからな。」
「それでは、開催の準備も込みで一ヵ月後でよろしいですか?」
「催しは、住民参加の音楽祭と屋台の食べ物コンテストで準備を進めて参ります、よろしいですか?」
「異論なしです。」
祭りの日にちと内容が決まり、町にその知らせが伝わると、瞬く間に広まっていった。
「アサヒさーん、聞いてくださいよー!」
「どおした、ピーター?」
「例の祭りが決まったみたいっス!なんか住民参加の音楽祭と屋台の食べ物コンテストやるみたいっスよ!!」
「へぇ、面白そうじゃん。」
ちょうどお昼時、午前の作業を終えたピーターは張り出された町の広報を見て、興奮気味に店に帰って来たのだ。
「屋台の食べ物コンテストってなんだ?」
アルとニコル、Jも作業を終え店に集まっていた。
「なんか出店で一番美味しかった料理に投票してクバルの名物にするらしいっスよ!」
「ご当地メシってやつか?」
「そおいえばシンブには、ハーブ焼きとかあったけど、クバルって無かったよね?」
そんな会話をしていると、アコが店にやって来た。
「ねぇねぇ広報見た!?」
「あぁ、ちょうどピーターが帰って来て今話してたとこだよ」
「カレーライスやりなよ!!」
アコはシンブへの旅で食べたカレーライスが大変気に入ったらしくアサヒにコンテストに出場してはどうかと持ち掛けてきたのだ。
「いやいや仕事あるし、そんな準備してらんないでしょ?」
「いや、ガンツォさんとこの若い衆らに配送の手伝いさせればいいんじゃないスか?」
アルが口を挟む
「え〜、アルマ君は好きで来てるからいいけど、他の人はどおかなぁ?」
「彼らにもきちんとした仕事を与えると言う意味でもいいんじゃないでしょうか?」
「もちろん賃金を払ってです、アルマ君は無しで」
Jが上手い後押しをする。
ゆくゆくを考えると、今の仕事をクバルの住民に引き継がせる時が来る為、それを今から始めるのも良しと考えるアサヒだった。
「にしても、設備がなぁ…」
「ゴメスんとこ借りればいいじゃん。」
アコの提案もありアサヒは仕事を片付けた後、ゴメスを訪ねる事にした。
「こんばんわ、ゴメスさん居ます?」
ゴメスの嫁のアンナが出迎える、そして夕食の支度をしていたゴメスが奥から現れた。
「おう、どおした?なんか用か。」
「腕の具合いかがです?」
「まぁ動かせる様にはなったぞ、つーか、そんな用事じゃねぇだろ?アコから聞いてるぞ。」
アサヒが訪ねるより先に、アコはゴメスに例の件を話していた様であった。
「俺もそのかれーらいすに興味あってな、うちの厨房を使いたいんだろ?俺は構わねぇぞ。」
「その代わりと言っちゃあなんだが、一つ頼みがあんだよ。」
「なんですか?」
「店の手伝いをして欲しいんだ。」
ゴメスの話は、腕の怪我の所為でしばらく店を閉めていたのだが、そろそろ開かないと経営が苦しいというもので、しかし怪我の所為もあり本調子ではないので厨房で腕を振るってほしいというものだったのだ。
「お手伝いをするのは全然構わないんですけど、本職の方が…」
「だよなぁ、なんかアコはそれもなんとかなりそおだって言ってたからよ。」
「無理にとは言えないからな、もしなんとかなりそぉなら頼むわ、んで厨房は使っていいからな、かれーらいす作っていいぞ。」
ひとまずゴメスの店を出るアサヒだった
そのまま店に戻り、現状の仕事の量と人数で切り盛りが出来るかを考える事にしたのだ
。しかしシンブへの配達も回数が増え、配送と荷役の量が増えた事や、ライドスーツも一台しか動かせない(マゼンダの一件で、盗まれた一台はアサヒが潰してしまったのだ)等を考えるとやはり人手は不足していた。
「こんな時間に何してんスか?」
すると、そこへアルとニコル、そしてアルマがやって来たのだ。
「お前らこそどーした?こんな時間に、しかもアルマ君まで。」
「いやー、昼間の話ですよ、アコちゃんの言ってたコンテストいいんじゃないっスか。」
「うちも頭に話通したら、むしろ面倒見てもらえって頼まれちゃいました。」
「みんなお祭り楽しみなんですよー、チェン運送としてもクバルの皆に喜ばれる事がしたいですし、盛り上げるのにはいいのかなーって話しになったんですよー。」
「なんかJもやりたい事があるって、ムフムフ笑って気持ちわりーし。」
「ね、だから皆んなでお祭り盛り上げましょー!」
ガンツォ一家も加わり、カレーライスの屋台が決まったのだ。そしてその頃Jは自室にて愛用の音楽プレーヤーを片手に薄ら笑いを浮かべているのだった。
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役場の首長室には、サマンサと部下が会合の話しをしていた。
「さあ、忙しくなりますよ。やるべき事はたくさんあります。」
「そうですね、皆さん楽しみにしていらっしゃいますから、盛り上げられる様に私どもが頑張りませんとね。」
「コンテストの審査員や、来賓の選定、音楽祭の会場設営、それになんと言っても宣伝ですね。」
「クバル復興を皆さんにアピールしなくては、私も一肌脱がさせていただきましょうか。ウフフ」
「首長も何かおやりになるんですか?」
「私が、住民の為の為政を目指すきっかけになった国で経験した音楽はとても力強く、そして自由でした、ぜひあの経験をみなさんにも味わって頂きたいですわ。」
それぞれの思いを込めて、祭りの準備が今始まる。




