蠢動する者達
正門から町中への攻防が続く最中、東門には数名の自警団が警備にあたっていた
「みんな中央広場に集まったけど、大丈夫なのか?」
「俺たちはこっちでよかったかもよ、結構な数の魔族が入ってきてるみたいだぜ」
「確かにな、アサシンなんかに会ったら命が幾つあっても足りないからな」
自警団達が話していると、何者かが彼らを物陰から伺っていた、そして忍び寄り背後から襲い掛かる
一人は脇腹に短刀を抉り込まれ、グェと蛙が踏まれた様な声を出し血を吐き絶命する
別の者はのどを割かれ、前方にいた仲間に血飛沫を浴びせながら膝から崩れていく
血飛沫を正面から浴びた一人は、驚愕の顔のまま、首を横に90度に折り曲げられ前方に突っ伏しピクリとも動きはしない、その間僅か数秒の出来事だった
離れた場所にいた最後の一人は突然の出来事に惨劇を目の当たりにしたにも関わらず、ただぼけっと眺めていただけで理解が追いついていない
一瞬の間の後、飛んできた複数のナイフで最後の一人の上半身は剣山と化した
そして、東門は静寂に包まれた
「なんで皆んなして、投げてんだよ」
「俺のが頭に命中だぜ!」
「どーでもいい、もったいねぇからナイフ回収しとけよ」
彼らはマゼンダと言われる組織で、強盗、殺人、人攫い等、悪行と言われる行為を生業としていた、そして魔族の襲撃に合わせて町にやってきたのだ
そんな彼らの行為に戦慄を覚えながら新入りと呼ばれた男は惨状をただ眺めるだけだった
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「こんなデケェ襲撃は珍しいよなぁ」
「そーですねぇ、そもそもクバルが襲われるのも最近じゃ無かったですから」
「サマンサ姉が作った塀と門のお陰で町中に魔族が入り込むのは減ったからな」
「町中はどーなってるんですかねぇ」
「どうやら、中央広場で迎え撃つつもりみてーだなぁ」
「じゃあ、ここらもヤバいんじゃないんですか?」
「う〜ん、そぉかもなぁ」
「頭、俺らも出た方が良いんじゃないですかねぇ?」
「サマンサ姉にはデケェ借りがあるし、こんな時じゃねーと返せねぇか・・」
「俺達は、頭に従いますぜ」
「そおか、すまねぇなお前ら・・」
「よし、アルマ準備しろ!ガンツォファミリーの出撃だ!!」
「さすが頭だぜ!了解です!!」
「おうポルコ、オメエは残れ、屋敷の守りはオメエに任せるぜ」
「あい!!」
ガンツォも貧民街の出身であった、そして幼少期にはサマンサから勉強を教えてもらっていた
サマンサ自身は貴族の血縁ながらも貧民街によく足を運び、学校に通う事ができない子供達にボランティアで勉学を教えていたのだ、そして幼いガンツォの姿もその中にあった
ガンツォは勉強や世界の事をよく学び、サマンサと過ごす時間を楽しみにしていたのだ
サマンサの影響もあり、ガンツォは貧民街の住人や子ども達に自分の出来る事をする様になっていく
そんな背景もあり、今回の様な緊急時に住民はガンツォを頼って来るのだ
もちろん、いつもの様に子ども達も集まっていた
「まぞくが来てるみたいだよ」
「こわいよ〜」
「ガンツォがいるからだいじょーぶ!まぞくなんかぶっ飛ばしちゃうんだぜ」
子ども達は心底ガンツォを信頼している、彼らからすればグスタフとアニータは父と母なのだ
「くれぐれも気を付けてよ」
「心配すんな、オレを誰だと思ってやがる」
「ポルコ、留守は任せるぞ、アニータとガキどもを頼むぜ!」
「おし!!オメエら準備は出来たな?魔族を見つけたら片っ端からぶっ飛ばしてやれ!さぁ行くぞ!!」
「アルマ、気を遣わせちまったな」
「とんでもないですよ」
総勢二十名以上のガンツォファミリーが威勢よく出陣する
だが、そんな彼らの様子を伺う怪しい人物がいる事に誰も気付いてはいない
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「ガンツォが屋敷を出たみたいだな」
「よし、ラノ準備はいいか?」
「はい、いつでも動けます」
ゴーレムの操縦者はアサヒ達の仲間だったラノであった
ラノ達は魔族襲撃のどさくさに紛れ、この貧民街のガンツォの屋敷を襲うつもりでいた
「偵察通りなら屋敷の西側の部屋にガキが集まっている、まずゴーレムで壁をぶち壊すぞ、その後にガキを攫う」
「うっす」
偵察に行った仲間からの報告で子ども達の所在は分かっていた彼らは、最短ルートで目的を果たすつもりなのだ
町の混乱に乗じて、難なくガンツォの屋敷まで辿りついた彼らは息を潜め中の様子を伺うと、情報通り西側の部屋に子ども達の姿を確認し庭先の警備の数を数える
「警備も大した数はいねーな、手筈通りだ、おい、ラノお前の出番だ」
ラノのゴーレムが巨体を揺らし、屋敷の石壁に近づいて行く、覚悟を決めたラノは操縦桿を握りしめ動かす
ゴーレムが両手を組み合わせ振り上げると、その両手を勢いよく石壁に叩きつけた、大きな音と共に石壁は崩れ落ち、約2メートル幅の隙間をそこに作るのだった
「なんだ!今の音は!?」
庭先に居た数人の住人が慌てて音のした方へ駆け寄って来る
「なんだあれ!?」
「ゴ、ゴ、ゴーレムが出たぞー!!」
そこへ遅れてポルコ達もやって来る
「ゴーレム!?なんでこんなとこに?」
屋敷に残っていた警備の一人が、石壁を壊し侵入して来る巨体に戦々兢々とした表情を浮かべる
屋敷の警備と避難していた住民達がパニックに陥っている中ポルコは一人覚悟を決めた顔でゴーレムを見据える
「やべぇなぁ、でも俺がなんとかしねぇと」
石壁に空いた隙間からはアサシンが何人か侵入する、ゴーレムはそのまま屋敷に向かい、石壁を壊したのと同様に、その両腕を振り上げるのだった、しかしそんなゴーレムに立ち向かう者がいた
「頭にここを任されたんだ!屋敷には触らせねーぞー!!」
ポルコはその手に特製のウォーハンマーを握りしめ、ゴーレムに渾身の一撃を叩き込む
ゴーレムの脇腹にポルコの一撃が入る、一瞬ぐらついたその巨体だったが、振り向きポルコに対峙するのだった
しかし、ゴーレムのラノは戦闘経験などなく、迫り来るポルコに狼狽える事しかできずに操縦席の中で固まっていた
「おい、新入り!もたついてんじゃねー、さっさと片付けろ!!」
アサシンの一人がゴーレムに叫ぶ
ラノはただ無闇にゴーレムを動かすだけだった、ポルコは迫り来るゴーレムをかいくぐり更に一撃を叩き込むが、ゴーレムが怯む事はなかった
「うわぁー!」
操縦席のラノは夢中でゴーレムを動かす、ゴーレムはその両腕を大きく広げ旋回をした
その時何かにぶつかった音と感触にラノは気付いた
「うぐっ!」
それまで目を瞑り、ただ操縦桿を闇雲に動かしていたラノは薄目を開け状況を始めて見ると、そこにはゴーレムが振り回した腕をぶつけられ吹き飛ばされたポルコが横たわっていたのだ
ポルコの傍にはひしゃげたウォーハンマーが転がり、右腕はあらぬ方向に折れ、口から血泡を吹き、痙攣する大男の姿があったのだ
「やったな新入り、さっさとガキを攫うぞ」
目の前に横たわる惨状を自分がやったのか?と自問していたラノは仲間の言葉にあえて現実を忘れ、ただ指示に従うのみであった
再び動き出したゴーレムは屋敷に向かう
「マリアおまえは一番小さいからこの中にかくれてろ!ぜったい声を出すなよ!」
ゴーレムが庭で暴れている時、屋敷からそれを見ていた子ども達であったが、その中の一人が一番幼い少女を部屋の片隅にある食器棚に匿うのだった
次の瞬間、ダイニングの壁は破壊され、アサシン達がなだれ込んで来たのだ
「離しなさい!」
「きゃあっ!」
アニータは短刀を手にアサシンに立ち向かうのだが抵抗も虚しくねじ伏せられてしまう
そしてアサシン達は次々と子ども達を捕まえ、ゴーレムの背に付けられた檻に運び入れるとガンツォの屋敷を後にするのだった
その様子をダイニングの棚に隠れていたマリアは、恐怖に震えながら見つめるしか出来ずにいた
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「おう!騎士団頑張ってるじゃねーか、オメエら、こっちにくるヤツらは一匹も通すんじゃねーぞ!!」
ガンツォは広場から東門に続く大通りに陣取り、こちらに向かってくる魔族の討伐を始めていた
「さぁ来やがれ!ワン公ども!!」
群れをなし襲い来る獣をアルマ達が見事な連携で次々と倒して行く
一方で、ガンツォは襲い来る獣達をじゃれ付いて来た仔犬を相手する様に払い除けると、その奥から迫るりくるアサシン2体と対峙した
「おう、お二人さんで相手してくれるのか?人気者はつれーぜ!!」
一体のアサシンが両手にナイフを握り真っ直ぐガンツォ目掛け突っ込んで来る、もう一体は大きくジャンプし上から狙う、しかしガンツォは突っ込んできたアサシンの攻撃を軽く受け止めると、捕まえ、飛び込んで来たアサシンに投げつけるのだった
空中で衝突したアサシンはそのまま地面に叩きつけられると、すかさずガンツォは一体の頭を踏み潰したのだ、そして残る一体の足を掴むとボロ布を扱うが如く片手で持ち上げ地面に叩きつけた
「んだよ、そんなもんかよ」
広場では騎士団達が奮戦し、魔族を退けつつあり、アサヒとアコ達も大通りで残っている魔族達を粗方片付け終わるのだった
しかしこの時、魔族の襲撃の裏で起きているガンツォの屋敷の出来事を知る者はまだいない
閲覧ありがとうございます
やはりシリアスは難しい!!
まだしばらくシリアスは続きますのでお付き合いお願いします
よろしければ感想いただけると嬉しいです




