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魔族襲来

 アサヒ達がシンブから帰って来て二週間が過ぎた、しかし未だライドスーツとラノの足取りは掴めずにいたのだった

 その間も、仕事の合間にアサヒやアルはクバルの町中やシンブ等で聞き込みや、捜索をしてはいたが有力な情報は得られず時間だけ過ぎていった

 そんな中、クバルでは町の有力者による会合が行われていた


「忙しい中お集まり頂きありがとうございます、かねてより議題にさせていただいておりました町の今後の方針に関して、意見交換をさせていただきたいと思います」


 時間は午前10時、役所の大広間にサマンサを始め、十名が集まっていた、その中にはアサヒと共にシンブに行ったグースも含まれている

 進行役のサマンサの部下が、資料を配り、大まかな説明を始めた


「今回の議題ですが、まず、町の再開発、街道の整備、税率の引き上げ、警備の強化、そして福祉の充実の5項目となります」


「まずは5項目ある内の1番目、町の再開発に関してですが、グース殿からお話をお聞きしたいと思います」


「私どもとしては市場の拡大、それに伴う道路の拡張を希望しております」


 町の有力者は貴族、商人が主なメンバーとなっていた、そして会議の中心はやはり商業に関する内容になっていった


「それでは、税率の引き上げ、警備の強化、福祉の充実に関してはサマンサ首長からの説明をお聞きください」


「まずは、税率の引き上げですが、一定以上の収入のある個人及び商店は5パーセント上乗せを考えております、こちらは警備の強化及び福祉に当てさせて頂くつもりでおります」


「しかし、警備はわかりますが、福祉の内容がよくわかりませんな、そもそも税率の引き上げも賛同できかねますぞ」

「まずは市場の拡大を行えばそれだけ税額も増えるでしょうに、福祉とおっしゃるが、よーするに働きもしない者に施しをすると言う話でございますから、私共商人としては汗水流して稼いだお金をそういった使われ方をされてもねぇ」


 サマンサの説明を遮るようにグースが意見を述べる


「福祉に関してですが、現在クバル北東部にはスラム街が形成されております、そこの住人達はまともに職についておらず、その雇用の確保が急務と考えております、彼らは今を生きる事で手いっぱいの状態なのです、そこで、町と町を繋ぐ街道の整備等の公共事業にて雇用の創出をしたいと思っております、それらの着手までの期間の生活保護、並びに彼らの子供達に教育出来る環境の整備を行いたいのです、それらの財源を増税分で賄う考えです」


「お給金という物は働いてから頂くもの、仕事をせぬ輩に先に銭を渡すなぞ、愚かもいいところ、貴族の方々もそう思われませぬか?しかも、公共事業で仕事を与えてもきちんと務まるかどうか?怪しい話ですなぁ」


 その場に居合わせた貴族や商人の大半がグースの話しに頷き、サマンサの提案には難色を示すのだった


「それでは昼になりましたので、本日午前の会合は終了させて頂きます、夕方に会合を行いますので、またお集まり下さい」


「夕方には、レイモンド卿も出席されるのですかな?」


「はい、昨日よりクバルにお越しですのでお声は掛けさせて頂きました」


「サマンサ殿の提案に卿はどのようなご意見を仰いますかのう」


 話し合いは平行線をたどり、町の再開発のみ具体的な計画を進める事になった


「ふぅ、なかなか思う様にはいかないものですね、私は最低限の暮らしを保証してあげたいだけですのに、もちろん全ての者を平等には出来ないのは存じておりますが、せめてクバルに住まう者だけでも手を差し伸べるべきかと思うのですが・・・、やはり賛同はいただけないのですね」


「皆が貴女の様にはいきませんよ、特に年嵩の商人たちは」

「見込みは低いですが、レイモンド卿に賛同していただけたら、風向きも変わりますでしょうが・・」


「そうですね、レイモンド様が如何様にお考えかといったところでしょう、ただ今までもクバルの発展にご協力頂いておりますが、卿の真意は計りかねますし、私はあの方を正直申し上げて信用出来かねます」


「杞憂であればよいのですがね」


 クバルとその住民の行く末を案じるサマンサと部下であった



     ーーーーーーーー



 時を同じくして、迷いの森深くでは怪しく蠢く物たちが集まっていた


「やぁ、みんなよく集まってくれたね、今日のパーティーを待ち焦がれていたのかな?」


「はっ、今日集めた者どもは約80程で、アサシン20、魔導士8、ゴーレム2、残り魔獣が50程です」


「いいんじゃない、二手に分かれて派手に踊っておくれ」


「はっ、時刻になりましたら予定通り開始いたします」


 不穏な空気を纏いその時を待つ彼ら、時間は刻一刻と近づいていく



      ーーーーーーーー



 アサヒはいつも通り午後の配送の途中だった、ズーに跨り町中の荷物を配る

 陽も傾きだし、もうしばらくすると町は夕刻を迎えようとしていた


「ふぅ、あと二件で今日分は終わりだな、明日の用意したらまた探しに行くか」


 アサヒとアルは、未だラノとライドスーツの捜索をつづけていた、今日はクバル北東のスラム街を探そうと思案していた、と、その時前方から数人の住人が走って、こちらに向かって来るのだった


「魔族だー!魔王の手下が現れたぞー!!」


「なんだ?」


 走り来る住人が叫ぶ中、アサヒは何が起きているのか判断できずにいた


「騎士団は何をしてんだ!?」


「みんな逃げろー!!」


 町の正門の方角で大きな物音が響き、続いて煙が立ち上る

 そして、怒声と悲鳴があちこちから聞こえ始めるのだった



      ーーーーーーーー



 その時役場の大広間では午後の会合が開かれていた


「なるほど、サマンサ殿の意見はよく分かりました、しかしスラムの方々への補償は今の財源からとなりますよね、その回収はあくまで商業の拡大による税収の増加を見込んでというところですね、でその為に街道の整備を行い町と町との交易の活発化を図ると言う事でよろしいかな?」


「おっしゃる通りでございます」


「ただ、気掛かりなのは肝心の交易と商業の拡大です、そちらの具体的な目処は立っておられるのかな?」


「いえ、そちらに関しては今、各町と調整中ですので具体的な数字の試算は出来かねているのが現状でございます」


「そーなると、やはり財源に不安がでますねぇ」


 午後の会合ではレイモンドが積極的に意見を述べるのだった


「ですから、まず増税をさせていただきたいのです」


「それだけでは商人に納得してはいただけませんよねぇ」


「左様でございます、さすがレイモンド卿、事の確信をよくお分かり頂けておりますな」


 サマンサの提案に一定の理解を示したレイモンドであったが、やはり痛い所をついてくるのだった

 そして会合も終盤に差し掛かった時、大広間の扉がノックされ、騎士団のマルコが入室して来た


「皆様、会合の途中に失礼致します、ただ今魔族の襲撃を受けております、早急に避難をして頂きたい」


「なんと!騎士団は出動しておるのか!?」


「はい、すでに正門、西門に部隊は派遣済み、皆様の護衛に精鋭部隊を控えさせておりますので、騎士団駐屯地への避難をお願いします」



      ーーーーーーーー



 一方アサヒは、魔族と呼ばれる者達の姿を初めて目にしていた


「おいおい、なんだありゃ?」


 激しい音のする道の先から、四足歩行の獣が数体と、人型の異形の者が現れる

 獣と異形の者は逃げる住人に襲いかかる

 ある者は足を、ある者は首を次々と噛みつかれ、異形の者はその両手の剣を振るい、人々を斬りつけていった

 逃げ惑う群衆に紛れ一旦は逃げかけたアサヒだったが、その凄惨な現状を目の当たりにし立ち止まるのだった


「そんなの見せられたら逃げらんねーじゃねーか、クソッ!」


 振り向き、迫り来る獣の群れと異形の者に正面から対峙するアサヒ、覚悟を決めた瞳を倒すべき敵と定めた彼らに向ける


「数が多いな、なんか得物に出来るものは・・」


 逃げ惑う人々の足下に転がったモップを見つけたアサヒは、おもむろにモップを掴むとその先を踏みつけ外した


「ふぅ軽いし短いな、ないよりましか」


 軽く首をひねり、モップを脇に挟み敵に向かい歩みよるアサヒ


「犬みたいのが5匹と、アイツか」


 大型犬をさらに一回り大きくした獣が一匹、牙を剥きアサヒと目を合わせた


「グルルルルゥ」


 アサヒを標的に定めた獣が真っ直ぐに歩みよる、獣の射程に入ると爆発的な瞬発力で一瞬で距離を縮め2メートルを軽く跳躍する

 その口を大きく開き牙をアサヒに向ける


「セイッ!」


 右脇に構えたモップを勢いよく回転させ、左に構え直し、飛び込んでくる獣にタイミングを合わせ、その眉間を目掛け突き放つ

 モップは獣の眉間を見事に捉えその頭蓋を打ち砕いた

 獣は飛び込んだ勢いのまま地面に打ち付けられ、その首は在らぬ方向へ向き、獣はピクリとも動かなくなった


「まずは、1匹と」


 この世界に来て初めての魔族と呼ばれる者を倒したアサヒ、この程度ならいけるなと確信し、更に迫り来る敵を迎え撃つ覚悟を決めたのだった


 


閲覧ありがとうございます

なかなか執筆ペースが上がらずごめんなさい

感想、評価いただいた方々ありがとうございます

これからも楽しんで頂けるように努力します


よければ、ブクマ、感想お願いします


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