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深林の入口

 翌日、東の空がかすかに白んでくる頃、一行は出発の準備を整え、ズーの下に集まっていた


「さて、皆さん準備は出来ましたな、それでは参りましょう」


 マルコを先頭にシンブを目指し、二日目の旅が始まった

 昨日までは丘陵地と山麓で、道のりとしてはさほど険しくはなかったのだが、森を抜けた先からは急激に地形と地表の様子が変わってゆく

 陽が上り、すっかり明るくなった空のおかげで、そそり立つ様に連なる山がはっきりと眼前に広がっている、それはまるで壁のごとくつづき、その地表は剥き出しの岩がゴロゴロとそこかしこにあるのだ、森やキャンプ地からは樹々がじゃまをして、岩肌は確認しづらかったが、そそり立つ岩山は来るものを拒絶するかの様に一行の前に存在していた

 そして連なる稜線の間に切れ目の様な場所があり、そこを通って山の向こうシンブのある内側に入っていくのだ、そして一行は目前の岩山を眺めながら、休憩をとることにした


「なぁここからが難所だぜ、んで、あの切れ目【ソードカット】に向かって登って行くからな」


 ズーを降りたミゲルがアサヒに話かける


「なんでソードカットなんだ?」


「あの隙間が剣でぶった斬ったみたいに見えるから、そー言うよーになったんだ」


「へぇ〜、とてつもなくデカい剣だよな、しっかしすごい傾斜だな、近づくと余計によくわかるよ、道幅も狭いし気をつけて進まないとヤバいな」


「ここで滑落する者も少なくないで、くれぐれも用心されたほうがよいですぞ」


 ミゲルと話をしていたアサヒに怪しげな笑みを浮かべ商人達が警告をするのだった

 事実ここまでの道幅は10メートル程度で、山道とはいえきちんと整備はされていた事もあり交通の往来に不都合はなかったが、ここから先は斜度もあり、道幅は今までの三分のニ程度の狭さになり、更に山肌を斜めにジグザグに進まなければならず、商人の言葉通り崖を進む為注意しなければならなかった

 休憩を終え、再び進み出す一行、崖側にマルコらが並び、山側を荷車が並ぶ形で山道をゆっくりと登る、そして標高が上がるにつれ斜度はキツくなっていった

 アサヒがふと先にある大きな岩をみると、滑落したであろう荷車とズーの骸が放置されていた


「なんまいだぶ、なんまいだぶ」


「なんです、それ?」


 アサヒが骸に向かって両の掌を合わせ、お参りすると、Jが聞いてきた


「うちのばあさんがお墓や亡くなった人にやってたんだよ、亡くなった者達に安楽なれって祈るんだと、昔の日本じゃ亡くなれば善人も悪人も皆仏様って神様みたいなものらしくて、みんなやってたらしいんだ」

 

「へぇ、なんだかいい文化ですね」


 アサヒがズーの骸に祈りを捧げていると、マルコから指示があった

 

「ここからは一列で進む、アコを先頭に荷車を挟んで行きます、殿は私が務める、ミゲルは中央を頼むぞ」


「了解!」


「ちっ、しっかり仕事をしてくれるわ」


 ほかの者には聞こえない様に、悪態をつく商人達であった


 険しく続く登り坂を、先を行くアコが落石に注意しながら慎重にゆっくりと歩を進めていく、ときおり聞こえる落石の音とこんな場所でも暮らしている生き物たちの鳴き声が辺りにこだましている


「もうすぐソードカットに着くぞ!」


 先頭を行くアコから檄が飛ばされる

 稜線の切れ目、山の向こう側への入口が一行を向かい入れる

 遠くからは、脈々と続く壁の切れ目に見えたそれは、巨岩それも全高50メートルはあろうかという大岩が真っ二つに割れたものだった、そして正面から見上げるそれは自然が作り出した天然の巨大な門の様相で、ある種の神々しさすら醸し出していた


「すごい!!こんな光景初めてだよ」


「圧倒的なスケールですね、なんて不思議な光景なんでしょう」


「ようこそ【ソードカット】へ、なんつってな」


 おどけたミゲルの横からアコが話に割り込んでくる


「驚くのはまだ早いよ、ここを抜けた先の景色だって凄いんだから!」


 昨日の旅の初めに比べ、何故か剣の取れたアコは相変わらずのツンデレ具合はあるもののアサヒたちに笑顔のドヤ顔で、まだまだ凄い物があるとアピールをするのだった

 巨岩の割れ目ソードカットに入る、横幅20メートルは有にある広い内部そこは平らに整備されて傍らには休憩する為の簡易の椅子がしつらえてあった


「この先は下りになる、ここでしっかりと休んでいこう」


 昨晩、仕込んでおいた茹でたモモ肉のスライスにフローマ《チーズ的な》と野菜をはさんだサンドイッチをマルコ達と食べる、アコは嬉しそうに口いっぱいに頬張るのだった


「なぁなぁ、アサヒはもっと色々作れるのか?」


「まぁね、ちゃんとやってたわけじゃないけど若い頃はレストランで手伝いをしてた事もあるぞ」


「お菓子は作れるのか?」


「もちろんな、嫁さんは甘いものが好きだったからケーキも作ったりしたよ」


「けーきってなんだ?」


「あぁ、ヴァル・キルマにはケーキはないのか、うん、この仕事が終わったら作ってやるよ、聞くより食べた方が分かるだろ」


「本当か!?絶対だぞ、忘れるなよ!」


 何やらすっかりアサヒに懐いたアコは甘い物が大好物なのだ、しかしこの世界のお菓子と言えば、焼き菓子がほとんどで生菓子といわれる者はなかった、食文化自体アサヒ達に比べてまだまだ進んではいないようなのだ


《とは言え、生クリームとかあるのかな?帰ったら食材探しをするか、まぁ、仕事がひと段落したらゴメスやサマンサに料理を振る舞うってのもいいかもな》


 そんな事を考えるアサヒだった


 長めの休憩を終え後は下りるのみ、とはいえ今までの急斜面を考えると下り道の険しさは想像するだけで、身震いをおこしそうであった

 

「さぁ、後は下るのみ参りましょう」


「なぁなぁシンブの景色はすごいぞ〜」


 アコが嬉しそうにアサヒに詰め寄る

 ソードカットの出口、内側に差しかかると降り注ぐ陽の光に目が眩みそうになりながら、眼科に広がる広大な緑が飛び込んできた


「おー!これは、まさに大自然だなー!」


 ソードカットの神秘さとは別の雄大な景色、緑の中に点在する湖の青がまるで絵画の様な情景を作り上げていた、緑と青の間に間に差し込まれた銀色に輝く物体が太陽光を反射して煌めき、所々顔をのぞかせた赤茶けた大地の色も差し色として美しさを際立たせていた


 山の内側は外に比べて傾斜は緩くなだらかだった、そのおかげもあり道幅もしっかりあり、この旅路の難所を無事通過した者たちをあたたかく迎え入れるようであった


「さあ、気を抜かずにシンブまで行きましょうか」


 一行は軽やかに山を下り、シンブの入口に辿りついた


「さあ、シンブに到着しましたぞ」


「我等は荷物を届けますので、ここで一旦別れますぞ、アサヒ殿らはあちらで詳しい話を聞いて下され」


 商人達はここまで一緒に来たから、後は自分達でやれ、とばかりにそそくさとその場を離れて行った

 アサヒ達は商人に言われた建物に向かう


「俺は話聞いてくるから、Jは皆と待っててくれ」


 建物に入るとそこに居た人物が、立ち上がりアサヒに声を掛けた


「いやいや、いらっしゃい、遠路はるばるご苦労様でした、あなたがアサヒさんでよかったかな?」


 すでにサマンサより伝書が届いており、今日到着する旨は伝えられていたのだった


「シンブってたくさん人が集まっていると聞いていたんですが、思っていたほど大きな町ではないんですね」


「いやいや、ここは深い森の入口なだけで、この大森林をシンブとよんでいるのですよ」


 なんとソードカットから見た大森林すべてがシンブであり、発掘者は、それぞれこの深林の中でコミュニティを作って暮しているのだ



閲覧ありがとうございます

そして、昨晩間に合わずごめんなさい

仕上がったので、どうぞお楽しみ頂ければ幸いです


一応ファンタジーを意識して書いてるんですけど、どーですかねぇ?

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