森の小川
修正版です
本編のはじまりとなります。
SFは前回までなのでしばらく(だいぶ先まで)はロボットは出てきません。
お好きな方には申し訳ないですけども、お付き合いよろしくお願いします。
「まぁ、そんな感じで新型機のテストを手伝ってたわけなんだよね。」
「それで気付いたら地球って!?」
「なんだかねぇ、はははっ。」
アサヒは仕方ないと笑うしか出来なかった。
「笑い事じゃないっスよ!あん時アサヒさんを回収してから結構ヤバかったんすよ。ピーターとおっさんは気を失ってたし。フェイロンのエンジンは点火しないし、あちこちイカれててアラーム鳴りまくってたんすから。」
「うん。」
『アハハー。』
「……。」
それぞれの感想を言いながら焚き火を囲む彼らは、自分達の現状について一から整理するのだった。
「まぁなんにせよ皆んな無事でよかったよ。初めての故郷への帰還もなんとかなりそうだしね。」
「そうっスね。とりあえずここの位置も分かったし、明日にはちゃんとしたベッドで寝られかな。」
「せっかくなんで地球観光でもしていきませんかー。」
「いいっスね!これだけ環境が復活してるんだしなんかありそうっスよね。」
そして怒涛の一日を終えた彼らの疲れはピークに達しており、その夜は皆早く就寝するのだった。
そをな彼らが眠りについた頃、遠くから彼らを監視する者がいた。その者の瞳は警戒の色を濃く滲ませ得体の知れないアサヒ達を眺めているのだった。
翌日、彼らは最寄りの街に向かいその近くの軍施設に行くことにしたのだ。
「現在地の詳しい位置はわからないけど東に向かえば幹線道路があるはずだから、そこから北上して街を目指そう。そこで色々わかるんじゃないかな。」
「了解っス。」
「オレとアルはライドスーツでみんなを担いで行こう。仕方ないけどフェイロンと焔は置いてくしかないな。街に行けば休憩がてら食事もできるだろうから、それまではみんなコンテナの中で我慢してくれ。」
天気は晴れ、多少の不安はあるもの地球に慣れてきた彼らはこの状況を楽しむ余裕が出てきていた。
「なんかスクールん時のピクニックみたいっスね。」
「お弁当あればよかったね〜。」
『ピクニックってな〜に?』
「ピクニックっていうのは天気の良い日に皆んなでお外に出かけて、お菓子やお弁当を食べてお散歩することだよ。」
荷役作業用コンテナは、床と天井が鉄板で壁を格子状の鉄棒で構成されており、傍目には檻の様になっている。
「なんか囚人みたいっスね。オレら、」
ピーターがコンテナに入ると感想を言う。
「とくにラノはな。」
ピーターとラノ、そしてJの入ったコンテナを見たアルがピーターに答える。
「そんな…。」
「風通しは良いですし密閉よりはマシですよ。」
Jは気にしないという風で。一人だけ敷き物を用意してコンテナ内でくつろぐのだった。
そして2m四方のコンテナにクルー達を背中に乗せたライドスーツは街を目指し出発する。精密機器の運搬用のダンパーを取り付けたライドスーツの乗り心地は若干の揺れはあるものの、見た目に反して快適なものであった。
鬱蒼とした森を東に進む一行。道なき道を進む程に森の密度が低くなり、陽の光はより強く差し込む様になってきた。
その優しい光はアサヒたちの心に安心を与え、彼らの足取りも軽やかにするのだった。しかし慣れない地球の環境は思った以上に彼らの体力を消耗してゆく。
「結構あっちいっスね。ちょっと飽きてきたしラノさん顔色悪いっスよ。」
コンテナの中でピーターが汗を拭いながら上着をパタつかせていた。その横で乗り物酔いをしたラノが青い顔で項垂れている。
そしてJは横になり、いつの間にか寝息をたてている。
ライドスーツのキャノピーを開放しながら進んでいたアサヒも額の汗を拭いながら、そろそろ休憩をしようと考えていた。
「それじゃあ、休憩がてらマップの確認でもするかね?」
ちょうど開けた場所に出た一行は、その先にある小川のほとりで休憩をとる事にした。
「ふぁ〜、休憩ですか?」
「川だ、やった〜!水浴びするっス!!」
「オウェ、気持ちわる……。」
アサヒとアルはコンテナを下ろし、クルー達は小川のほとりに降り立つと、ピーターは川を見てはしゃぐのだった。
「水着あれば最高なんだけど、しょうがないか〜。」
『川だっ!初めて見たよー!』
ニコルとネェルも美しい水面を見てはしゃいでいた。
ラノは一人青い顔を歪め腹から込み上げるモノと戦っていたが限界が近づいていた。
「ダメだ、吐きそう……。」
「うわっ、きったねぇなおっさん!あっち行ってやれよっ!」
そんなラノにコクピットの中のアルは冷たく言い放つと、ラノは嘔吐するために急いで森へと入って行くのだった。
そしてライドスーツから降りたアルはあっと言う間にパンツ姿になり川に飛び込んでいく。
「いえーいっ!一番のりだぜぇっ!!」
さほど深さのない川に水飛沫あげて飛び込むアルは、しばらく水中に潜ると勢いよく飛び出し顔を見せた。汗ばむ陽気によほど気持ちがよかったのかその顔は満面の笑顔であった。
「ぶはぁ、気持ちいいーっ!!」
「アルさんズルい。早いっス!」
そしてパンツ姿のピーターもそれに続いて川に飛び込んでいく。ニコルもチェン運送の作業着の裾をたくし上げると川に入っていく。
「いえーい!」
「わぁ、気持ちいい!」
襲撃に巻き込まれて以来、何十時間と緊張の中にいた彼らは久方ぶりの安堵感に包まれるのだった。
「おーい、Jも来いよ!」
「いや遠慮します。何が出てくるか分からないのによく飛び込められますね。」
川の中からアルが声をかけるが、Jはタオルで顔や手足を拭うだけで、はしゃぐアル達をやれやれという顔で眺めると木陰で休むのだった。
アサヒはブーツを脱ぎ裾をまくって足を川に浸していた。ここまでの道のりの疲れが水に溶けだしていき心身共にリフレッシュされていく様であった。そして川の水をすくい顔を二回、三回と洗い流すのだった。
「ふぅ、綺麗な水だな……。」
アサヒは冷たく心地よい水面を眺めながら、水の清らかさに感心していた。
それは驚くほどの透明度で、環境汚染とはまるで無縁と思わせる程であったのだ。
事実、広大な大森林や川の豊かな生態系を見る限りこの場所に環境破壊はない様に思えたのだ。
この時アサヒ達は、あと数時間後には街に着き、そして数日後には自分達のコロニーに帰ると信じていたのだ。
しかし、そんなアサヒ達の様子を森の中から伺う者達がいた。そして彼らはこの時動きだしていたのだ。
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