「ふっざけんな!」 Side : AdME Dukedom (Unofficial 3rd force)
今回については、一緒に居た亜里須も無事だったし……。
普段から何も無くたって、危なっかしいからなぁ。亜里須は。
あの子は要領が良いから、そもそも怪我をしたりはしない。とは思うけど。
けれど基本的に、鈍いなんてレベルはあっさり超えてる。
いっそ、どんくさい。と言ってしまった方がぴったりくる。
現状、卯棟くんについている。と言うのはだから正解。
あそこに潜り込んでれば、王都内に居る限りは面倒事の方から逃げていく。
社交的な行動を嫌う亜里須らしくはない。とは思うけど。
まぁ、こっちも一安心。なんて。
……顔を知っている相手である以上。
気にくわないとは言え、私だって心配くらいはする。
目の前でなんかあっちゃ、いくら私でも寝覚めが悪い。
実際、スクワルタトゥレに襲われたときはヤバかった。
位置取りの関係上、すぐには飛び出せなかったのだけれど、でも。
卯棟くんは光の剣を取り出すと、伝説の騎士さえあっさりと撃退して見せた。
めっちゃカッコ良かった!
なんで動画撮っておかなかった! 私の莫迦っ!!
同じような見た目というなら。隣に立つ廉洞惣太郎、彼の持つ剣がまさにそれ。
コイツの剣は普段は柄の部分しか無いので、刀身が無い以上鞘も無い。
ズボンのベルト通しに金具で引っ掛けてある。刃が無いとは言え作りはホンモノの柄、結構重い。
いつかベルト通しが切れて落とすぞ、それ。
アンタ、イメージよりは数段ヌケ作なんだからさ。
SSSレア相当の武器だと言うなら、私の首狩り鎌もそれにあたる。
今は草刈り鎌みたいに縮んで腰にぶら下がってるが。
……こう言うのは柄まで全部縮むのが普通なんだろうか。何かかっこ悪い。
農業女子かっ!
SSSレアなんだから変形とかしても、良いんじゃ無いの?
でも、あの卯棟くんの光の剣。あれがその上を行くのは。一目で明らかにわかった。
普段だって儀式用ナイフみたいでカッコイイ。
そして。初めて使うその剣を何事も無く使いこなし、伝説とまで呼ばれるシングルランカーの騎士の剣。
それを普通に受け止めて見せた腕。
その彼に何かが起こりうるわけが無い。私の助けなんか必要性ゼロだ。
そのうえ、身の回りの世話をする女の子さえ。
美人で可愛い上にやたら強い子ばかりを。
見た目やキャラのバラエティも豊富に、勝手に自分で集めてしまったくらいだ。
しかも亜里須まで含めても、キャラが被ってる子が一人も居ない。
強いて言うなら私が入った場合、亜里須と被るが……。
もはや一周まわって流石と言うしか無い。
私は思い知った。
私にはただ彼の背中を見るだけ。活躍を陰ながら眺めるだけしかできないのだ。絡む機会はそもそもこないのだ、と。
亜里須の立場に取って代わって、彼の隣に立つことも。きっと無いだろう。
だからこそ、せめてストーキングくらい。後ろからそっと見てるくらい……。
その為にあえて呼んだのだと、たった今、女神も公王も。そう言ったじゃないか!
「王都にはしばらく滞在すると思うが。でも間もなく、キミらにも出番が来る。かな?」
「……? 公王様。樺藤先輩達の動きがわかるんですか?」
「あぁ、だいたいね。……ミーア。それまで休暇だ、いいね?」
「……お断り」
冗談じゃ無い! 卯棟くんを追いかけるのは仕事じゃ無いのだ。
――だいたい女神なら。魔導結界に穴を開けて、私の容姿と立場をでっち上げるくらいは朝飯前のはずでしょうが!
「むぅ。言いたい事はわかるけれど、それだとミーアが見たことにならない可能性も出てきちゃうのよねぇ」
……相も変わらず、頼みもしないのにこちらの腹を読む。
なにが女神だ! いけ好かない。
「アンタは関係ない、私がただ見てたいだけだっ、つってるでしょ! ――だいたい、勝手に人の腹ん中を読むな! この、疫病神ぃ!」
「……ほらぁ、やっぱり怒った」
「ただでさえ話が進まないんだからさ。ミーアをわざと怒らせるの、やめてくれないかな……」
――それはともかく。公王は真顔で振り返る。
「開き直って、せめて三日ほど。ゆっくりしてくれないか」
「あら、公王。あなたは何処までも、詭弁で誤魔化して働かせる人なのでは?」
「また混ぜっ返す。……僕はそもそもIT土方だ。そんなこと、人にさせないよ。汝、自らの欲せざるところ人に施すことなかれ、ってね。あなただって神様だろうに……」
「キリストさんみたいに清廉潔白、というわけでは無いからなぁ。成り立ちから行けばむしろ逆。うふふ……。中身。淀んで濁って真っ黒だもの、わたしの場合」
――あなたはよほどミーヤより性格、悪いよな。公王はちょっと肩をすくめて、惣太郎に水を向ける。
「ソゥ、会社が社員を死ぬほど働かせるには三つ、方法がある」
「……は?」
「クビはイヤだ。無職は怖い。……あなたはそう思ってた。だから言葉の通りにそれこそ、死ぬほど働いたのよね?」
女神は薄ら笑いを貼り付けたまま公王に言い放つ。
……とことん性格悪い奴だな、コイツ。なにが女神だ。
「その通り。だがクビも無職も、なってみればさして怖いものでは無かったね。……単純に仕事をせずにいれば腕が衰える。飯が喰えなきゃその分だけ、頭も身体もゆっくり死んでいく。単にそれだけだった」
「……いや、あの。それだけって公王様。――だいたい無理矢理働かせる方法なんて、他にもあるんですか?」
公王は、――高校生には若干刺激が強すぎるかな? だが真実を知るなら若い内の方が良い。そう言ってニヤリと笑う。
そう、“人嫌いセンサー”が極度に発達した私にはわかる。
見てくれや言動に騙されてはいけない、女神ほどでは無いにしろ、公王も根っからの善人。ってわけじゃ無い。
強いて言うなら、むしろ逆。
「さっきの恐怖とは真逆。自分がいなければこの会社はお終いだ、……と思わせるのさ。それが二つ目」
「そこに至るまでのハードル、かなり高いような気が……」
「ところがそうでも無い。人間というものの本質は得てして自意識過剰の目立ちたがりなのさ。勝手に寝る時間を削り、休みを返上して。友人達に話すのも如何に非道い目に遭っているかだけ。いわゆる奴隷の鎖自慢。……実は、一番多いパターンなんだよ」
「そんなものなんですか……」
「だから公王はミーヤに白羽の矢を立てたのよ。無職を怖がらずむしろ何もしない事を好み。自意識過剰とも目立ちたがりとも、全然真逆だものね」
「全くあなたは……。ミーヤに文句を言われず動いてもらうには、だから三つめの条件が必要になる」
「うるさいうるさいうるさいうるさいっ! 私は、誰のためにも……」
「興味のある、面白そうな、喰い付きそうな仕事だけを、キャパを超えようが気にせずバンバンふるんだ。そしたら自分からどんどん仕事をする。表面上だけヤメろって言ってもそんなのは聞こえない。だって自発的に働くんだからね」
「……ぐ、うぅ! あ、あんたは……!」
公王と再度目があう。
「今のミーヤはまさにその状態。……だから労基の手入れによって強制休暇」
「公王様、ローキって何ですか?」
「労働者にとっては唯一の味方で最大の敵だよ。――プロの仕事で一番に大事なもの。それは何だと思う、ミーヤ?」
「……仕事の質、とか言いたいわけ?」
「クオリティはプロとして最低限もっていなければいけないもの。当然あって然りだ。そこを云々(うんぬん)されるものは、そもそもプロではない」
「あん? なにを……」
「スポーツ選手も歌手も陶芸家も、自営業者でも会社員だろうと。大事なのはベストなパフォーマンスが発揮できる様に体調管理をする事だ。――わかってくれたかな? ミーヤ。……キミも、いまやプロの追跡者だろう?」
「そんなことは、……私は」
「それに来週には止めたって出て行くのだし」
「え? 近々に卯棟君になんか、……あるの?」
――多分な。そう言って公王はやれやれ、と言うように肩をすくめてみせる。
なんだそのガイジンみたいなリアクション! イラッとする、ムカつく!!
おもっくそ、見た目も中身も日本人のくせに!
「だから三日くらい、自室に籠もっていてくれたまえ。彼の情報は、入り次第。間違い無く約束通りに、いの一番にキミに知らせよう。その辺の心配は要らない、おとなしく身体を休めるように」
喋り方を変えたのは有無を言わせたくないから。コイツはこう言う奴だ。
「キミを公国に縛り付けておけるのは約束があるからだ。それは絶対に守る」
「情報は法国情報部より数段早いわよ。私が彼にフォーカスしてる限り、ね」
「あなたの場合は、直接見ているからな……」
そして一応。
女神からの卯棟くんの消息情報と引き換えに。
公王の命令には意見はしても、基本服従。
そう言う約束になっている。
それに公王には、惣太郎と私を灰色の世界からこの世界に引っ張ってもらった。
そういう意味では命の恩人でもあるわけで。
つまりコイツは。――これ以上は約束違反だ。と暗にそう言っているわけだ。
直接は言わないんだよな。……やっぱイヤなヤツ!
「オーバーワークは自分では自覚できないものなのだよ。君の空間掌握は封印しておく。――珠洲嘉年美夜くん。いや、ミス・ミーヤ・ヴェルメタル、ご苦労だった、休みたまえ。……以上だ」
オーバーワーク?
私の事を扱いづらいけど便利な道具、くらいにしか思って無いくせに良く言うよ。
そう言うの、ほぼ確実にわかんだよ。
コミュ障なめんなよ?
なにが公王だ。……ふっざけんなっ!!





