新しいデバイス
さて少し早いが、そんな訳でお昼ご飯になった。
「リオさん、そこの切り株がテーブルに良いんじゃ無いか? ――モリガン。先の道、様子はどうだ?」
糸をつけて飛ばした蟲。
モリガンにはその蟲の見聞きしたものがほぼそのまま、見えて聞こえる。
超小型ドローンで道の先を確認しているようなもの。最強の偵察要員だ。
「あぁ、順調そのものだな。道も昨日と違って、今日はちゃんとあるぞ。これなら予定をさらに前倒しして、日のある内に山を下りられそ、お……。なんだ?」
「どうした?」
モリガンの顔が青ざめる。
「帝国王宮の……。近衛の制服がひのふの……。一〇人以上!? なんでこんなところに!」
蟲を使った有線での“実況中継"、これは最大でも一リーグ。
「帝国の近衛騎士だと? 主殿がなにも言わないからといって、そう言う冗談はやめろ!」
「いくら私でも、冗談でそんな事は言わん! ……宮廷魔道士まで一〇人単位でいる! なんなんだ!?」
帝国の宮廷魔道士は近衛騎士と同格のハイレベル魔道士達。
ここは法国でも既に中枢区域と言って良い。
俺達のペースでも王都まで、約10日しかかからないんだぞ……。
「……モリガンさん、一リーグ以内に居るということなの!?」
「それどころかリオさん、半リーグ離れてないんだ! 本来、昼の休憩を取ると姉御が言っていた位置だぞ!」
半リーグ以下、と言うことは。帝国の近衛騎士達とは二キロ離れていないことになる。
ウチのパーティは、今のところ結構な登り坂にさしかかっており、俺と亜里須が居る都合上、一時間で半リーグ弱しか移動できない。最大時速2キロ戦後。
でも、とまらずそのまま歩いていたら。一時間前後で帝国の精鋭部隊と、まともにぶつかるところだった。ということだ。
火を使わないで、良かったよ。
煙で存在がバレるとこだった。
「リオ、いくら山の中とは言え、こんな法国領内深くまで。わざわざ皇帝の近衛が、王宮から出てくるもんか!?」
その名の通り、王宮で皇帝の身辺警護を主な任務にする彼ら。帝国の騎士としてはトップエリートである。宮廷魔道士も名前は違うが役割は同じ。
それが法国領内に一〇人以上?
「あるわけ無い! ここまで少なく見積もっても神殿を5つ経由しないと来れないし、この辺はもう中央騎士団の防衛範囲なんだよ!?」
山の中とは言え法国領内でも中央が近い。空を飛べば投石なり魔法なりで即撃墜されるだろうし、陸路で入るのは、ほぼ不可能と言って良い。
一般の国で言うタウンやシティ。法国でのそれは神殿単位で形成され、そのまわりにも町や、さらに規模の小さな村が点在する。と言う形になる。
リオが言うのはその神殿を最低五つは抜けないと此所にはたどり着かない、と言う事だ。
街の防衛に当たる法王軍は当然、神殿の規模によっては騎士団や魔導団も配備されている。
空だって魔法で管制され、魔導で警告が流された後、魔法で攻撃、目視出来るなら弓はもちろん、状況によっては攻城砲の弾である大岩が飛んでくる。
帝国からはかなり距離がある、いくら近衛騎士や王宮魔道士が百戦錬磨、一騎当千のエリート集団とは言え多勢に無勢。無事にここまでたどり着けるはずが無い。
「陸も空も無理、……だよなぁ?」
「うん。……そんな大部隊なら大規模転移陣を使ったとしか。……でもいくら国の名前が魔導帝国とは言え、行動にコストがかかりすぎてるよ! 三〇人規模、距離一〇〇リーグ以上なんて巨大なものを、ほんの半月で何回使うの!? 魔道士を使い潰す気!?」
リオは奴隷狩り部隊も含めて、帝国の皇帝王宮から直接飛んできたものとして考えているらしい。
もっとも一番近い東の国境からとしたって、ここなら最低五〇リーグ以上はある。
ゲーム内アイテムとしての転移陣に関して言えば、一番高価なものでも定員二人で最大三リーグ。
魔道師の最高位転移魔法だって全MPを消費して四名で五リーグが限界だ。
――そこまでしても何かしたいことがある、と言うことか。
「リオ、この辺に帝国の近衛が来るような重要施設があるのか?」
「知らない! それにこんなところに作ったって……」
「ふむ。……ユーリ、ちょっと良いか? ――例のスマホだったか? あの魔導板をちょっとこちらに向けてくれないか?」
あれだけおびえていたスマホを向けろという。モリガンはいったい何を思いついたんだろうか。
【通知:新しいデバイスを検知、ワイヤレスコネクトの準備をしています】
【警告:あなたの知らないデバイスであった場合はコネクトを許可しないで下さい】
なんだこれ!?
【報告:Wi-fi接続可能デバイスを検知】
【通知:以下のデバイスが新規コネクトのリクエストを送信しています】
【確認:デバイス名・蟲の見た目Ver1.01《オーナー:モリガン・M》】
なんか凄く接続をためらわれる様な。イヤなデバイス名なんだけど……。
【注意:以下のデバイスがコネクトレディになりました】
【確認:デバイス名・蟲の見た目Ver1.01《オーナー:モリガン・M》】
「私の魔力は通った感触があった、魔導通信の許可をしてくれ。それは絵と音が出せるのだろう? 私だけが見るより、リオさんや姉御にも見てもらった方が良い」
つまり今自分が見ているものをスマホに出力しようと、そういう事であるらしい。
【警告:このデバイスはディスプレイとスピーカーを使用します。音量調整→⊿】
【通知:このデバイスは通信網を経由して容量の大きな動画と音声を配信します。】
【注意:デバイスや回線の契約内容によっては追加の通信料が発生します。
※Wi-fi接続の使用を推奨します】
【承認:デバイスのコネクトを許可しますか? 〔はい〕/[いいえ]】
はい。をタップする。
「お前はウェブカメラの親機なのか……!」
こうなると便利なのか不便なのか、もはや良く分からないが。
「なんの話だ? 良くわからんのだが」
「わからなくて良い話だ、もう俺だってわからん……!」
【注意:本当にデバイスのコネクトを許可しますか? [はい]/[いいえ]】





