どんどん自分でピンチに陥(おちい)るスタイル
まだ日の高い広場。
俺と亜里須、アニータさんとエマリアさんを挟んで左側に恋來奈子さん、アズーロさんを含む一四人。
反対側に無駄に余裕綽々(よゆうしゃくしゃく)と見えるモリガンが対峙している。
さらに、それを囲んで遠巻きに野次馬の輪ができている。
ツチヤマさんのコロニー運営の基本方針として、
――私闘は一切禁止、違反者は即追放。
と最初に言い放ち、側近や協力者のレベルが高いこともあって、ここまではその一言で巧くまとまってきた。
そこに外からやってきたモリガンが、私情でコロニーの主要メンバーに決闘を申し込んだ。
プレイヤーがアバターのまま一〇〇人単位で居るのだ。
ダメだと言われても戦いたいヤツらはいっぱい居るだろう。
暴走しないで、おとなしく輪になってみてるのは、みこちゃんや花押三姉妹、おっさんズなんかが力で抑えこんでるから。
そしてもう一つ、全員知ってるであろう掟。決闘であるなら第三者が手を出したら設定上は死刑。
自分が死ぬわけでも無い、ということでお気楽に高みの見物を決め込んでる連中もいる。
娯楽のないコロニーで始めて起きた大事件なわけだしね。
そんなわけで、……マジでどうすんの、これ。
「ユーリ殿。一応ツチヤマの裁定は降りた」
「好きにやらせろ、……って?」
「まぁ、そうだな。――今後も付き合いは続くんだ、後に禍根が残っても困るし、人死にが出ないならそれでいいんじゃないか? と言われてきたのだが……」
一応、決着は”ランド世界”標準で付ける。と言うことなんだろうけど。
何処までわかってるのかなぁ、ツチヤマさん。
普段のモリガンが、生き死にをかけた戦いは基本的に避けてるのはその通りだけど。
相手が恋來奈子さんやカラードナイツじゃ、殺す気で行かないとどうにもならないんじゃ……。
「ホントに人死に、出ないんですよね?」
「そこは私に言われても、なぁ」
「ヤルと決まった以上は、私とアニータが全力で治癒、回復に当たります。それに、こんなバカげた話でそんなことになるのは、ツチヤマだけでなく神だって許しません」
「神様はともかく、二人がサポートしてくれるのは嬉しいけどさぁ」
さすがに即死した場合はどうにもならない。
なにしろモリガンがこんなことを始めた理由が、自分の主人へ無礼を働いたものに対する制裁。
理由もあいまって、どう転んでも多少手を抜いてもらえるだろうモリガンよりも、低レベルプレイヤーが心配だな。
相手の首に糸を搦めて脅すのがいつものやり口だけれど、なにしろあの糸。
実はちょっと引っ張れば首が落ちるほどに、強くて鋭い。
殺すことは好きでは無いが必要なら躊躇は一切無い。それがモリガンだ。
「えーと、モリガンちゃん? ツチヤマからも許可が下りたようだし、最後にもう一度だけ聞くわよ?」
「この上なにを確認する必要がある? ココナコ」
「こっちは一四人、そちらは地力があるとは言え一人。……言いたいことはわかってくれるよね?」
「もちろん、私が出した条件通りである以上、なんの文句もない」
文句がないのは実は、お前だけなんだけどな……。
「あー、おほん。――では、ここからは私とエマリア二人が立会人として仕切らせてもらう! 双方、異存はないな?」
「問題無いぞ」
「まぁ、それはこちらも。……で。アニータ、ツチヤマとはどういう話になったの? 結局」
「できることは何をしても良いが、致死攻撃は基本的に禁止。腕や足がもげたくらいは私らがその場で何とかする、そこは安心しろ」
できるのかよ、なんとか。
偵察から牽制、攻撃に防御、救護班まで。一人で軍団を構成してるような人達だな……。
「武器を捨てるか、両手をあげたもの、そして私たち立会人が戦闘続行不能と見なしたものは降参と見なして以降の戦闘参加は禁止とし、命に危機が及ばない限りその場にて待機するものとします」
「もちろんそのものに対する攻撃も禁止だ。その場合、リブラ達の強制介入も有り得るからそのつもりで」
「先に全員が降参した方が負け。……ツチヤマから言われたルールとしてはこんなところです」
全員、ね。
めんどくさくなって降参するとか、しないだろうなぁ。モリガンは。
……むしろ口元が嬉しそうだし。
ただ。恋來奈子さんとアズーロさんも、それには気がついたみたいで。
「あんまり舐めてかからない方が良いよー? 私ら、そこそこ強いからねー。――パターンc2で展開、速攻でいくよーっ!」
「殺さなければ本気出しても良いのよね? ――いいわ。本当の”ヴァンピール”がどんなものか、モリガンちゃんに見せてあげる」
あぁ、ヤバい人達を本気にしちゃったぞ……。
「ふ、久しぶりの大ピンチだ、腕が鳴る……!」
モリガンの腕と足、あとでちゃんとくっつくかな……。





