“おばあちゃん”の懸念
『あー。……普通に話せばよいと聞いてはいたが、聞こえていようか? マイロード』
「大丈夫、バッチリだ。で、ここまでの話、聞いてたんだろ? ……どう思った?」
『うむ。マイロードの言には一理あろう。最善ではなかろうが、そこまで悪くない。いずれ放置すれば状況が悪くなるは必定。なにかをしようがしからまいが、マイロードの存在が原因で遅かれ早かれ”揉める”のが決まっておるというなら。エマリアの言う通り、禍根の芽は早めに摘む。これに否は無いであろ? ”話し合い”で済むならなおのこと』
この辺の見解が、フレイヤと一致するのは想定の範囲内。
パーティの知恵袋的存在であり、仮にも元魔導団長。戦略家としての顔も持つフレイヤである。
意見を聞いて。もしも反対されるなら、これからでも予定を変更しようかとも思ったが。
先ずはオーケーをもらえたようだ。
「で、もう一つ。――俺にはモリガンがなにかをしようとしてる。としか見えないんだが、これはどう思う?」
『そこよな、……わざわざマイロードに対して生き死にを口にし、約束だ。なぞと言うあたり、さすがになにがしか企んでおるは確定。具体的になにを考えたものか。あとで話は聞いてみようが、――とはいえ。なにしろ、あのへそ曲がりが儂に素直に腹の中を見せる、とは微塵も思えんのよなぁ。期待はするなよ?』
悪知恵の回る孫に手を焼くおばあちゃんの図、だな。
そこだけ取り出せばほっこりエピソードなんだけど、事態は何だか命がけっぽい。
しかも相手がモリガンときた。どうほっこりして良いかわからん。
フレイヤはモリガンを本気で心配してる風だけど。
「なにが気になってる? っっていうか、具体的になにに引っ掛かってんの?」
「いや、なにしろモリガンであるしな、なにをしでかすのかは儂にはまったく読めん……。しかも目的のためには身体も心も、自身が傷つくことには一切の躊躇がない。自分は死なん、と言いきったところまで含めて。面倒をみるには厄介極まりない、と思うてな……」
始めから、
――マイスターを排除したい連中がいる。
と言うのがアイツの言い分で。
だから何らかの強硬手段に出る。とフレイヤは思ってるわけだ。
でも、強硬手段に出たとしてアイツの得るもの、何かあるか?
それに。
「なにかしらの暴力的手段を取るとして。……アイツになんか必殺技的なもの、あったっけ?」
『アレが弱い、などというつもりは毛頭ないが。不意打ちならばともかくも、正面からの対集団戦となったらどうしようもあるまいよ。東ゲート攻防戦の話も聞いたが、アテネーがおらんのであったら。ダークホールブレイクを撃つ前に、ほぼ間違い無く死んでおるぞ』
「うん、俺もそう思う。……あまり考えないで安易な指示を出したのは良くなかった」
『誰であってもあの状況は想定できぬさ。モリガンが儂でも同じことをするであろうよ。……それにあの時はアテネーが殊の外巧くやってくれた。普段の言動から行くと、細かい連携やら調整などは二の次にしそうなものであるのにな』
「モリガンはあぁ見えて全体が見えてるし、それに現場レベルの判断ならアテネーは間違いないよ。偶に自分で殺人機械なんて言ってるのも敵味方、全ての配置や思考の誘導まで込み。だろ?」
『まぁな、だからこそ、アテネーの居ない今現状、モリガンがなにを考えているのか心配なのだが』





