理由はまだわかんない? Side : AdME Dukedom (3rd force)
「ところでクトゥガ。実験後の法国についての続報はないのですか?」
少し表情が戻ったセレーナ。
政治家としても戦略家としても優秀だからね、……普段なら。
「こっちも何か実験をしている、と言う情報は入ってるんだが。もとの魔導団長が直接に監理してるようでさ。まるで情報が出てこない。なにしろ怖いからねぇ、あのロリババァ」
病気になったとか、大怪我をした。
なんて話は一切聞こえてこないのに先日、法国の魔導団長が突然解任された。
貴族でありながら決闘条例に違反し、貴族の品位を穢した。
と言う、どうとでも取れることが解任の理由。
しかも同時に爵位や領地まで取り上げられて、今や一般市民。
さらにそれと同時に中央大神殿の改修工事まで始まって、怪しいことこの上ない。
歴史もないし爵位も低い、もちろん何処かの王族の親戚、と言う事でも無い。
それなのにランドでも一、二位を争う大金持ちで物腰も何も、全てが本当の貴族。
現法王の事実上の相談役でもあり、役職を離れても仲が良い。
それがランドでも知らないモノの無い法国の貴族、エッシェンバッハ子爵であり法国魔導団長。
「なんで魔導団長やめたのか、本当の理由もまだわかんない?」
「例の大神殿貴族条例の倫理規定違反だけで貴族法違反ですらない。あんな大物のクビを飛ばすってんなら、だ。法国典範違反とか、フェリシニア教の法典に背いた、くらいの理由は必要だろ? マイスターじゃなくても怪しさしかないが、今んところ何もでてこない。そのうえ、文句言いたいはずの中央魔導団が、むしろだんまりと来たらさぁ。かえって怪しさ倍増ってぇトコ。なんだけどな」
権力も財力も人脈も、有り余ってあふれてるような人物だ。
大神殿内部の条例違反なんかどうとでもなりそう、と言うのはわかる。
逆から見ると、単に目立たなくするために役職を解いた。と言う風にも見える、って言う話。
クトゥガ率いる情報院もそう言う判断で、以降の彼女の動向を追っているが。
魔導団長解任の当日からその姿を確認したモノさえ無い。
なにしろ、魔導戦で苦戦したところを見たことの無いウッキーが、
――タイマンで魔導戦になったら僕なんか、何もできずに一瞬で消し炭にされる。
と、始めから白旗を揚げるほどの魔道師で、一世代に一人でれば僥倖、とさえ言われる大魔女の称号さえ持つ、まさに化け物。
能力だけ見ても、法国政府としても放し飼いにしたり、放逐するわけが無い。
見た目は小柄なお婆さんとして知られているが、実はフードの下の顔や声は偽装。
わざとやっているのか、魔導の副作用なのか。
本当は中学生くらいの、ウッキーよりもさらに幼く見える美少女。
これはクトゥガが一度、自分で見たことがある。と言っていたので間違い無い。
知ってる人間の間での通称は、だからロリババァである。
「フレイヤ・デ・ラ・エッシェンバッハ……。転移実験の前後から卯棟くんと行動を共にしている、と言う噂もあるけど、その辺は?」
ロリコンではないはずだが、少々シスコン気味の彼なので気になる。
このところの彼は恐らく。ランド中探しても比肩するモノの無い最優良物件、隣に居るのが男に興味のない亜里須だとわかっていても、それでも。
びっくりするくらい妹さんそっくりの巫女が、側使えで居るのではあるけれどそれでも。
見た目が報告通りで相手が卯棟くんなら、妹枠になら結構簡単に収まることができるだろう。
そこから関係を深めようとしたら、それは意外と簡単な事に思える。
彼氏いない歴=年齢である私の妄想、と笑わば笑え。
処女である以上、その辺の感はそれ以外のヤツよりも鋭いはずだ。……たぶん。
「マイスターたっての頼みとはいえ。転移実験前後から王都はもちろん、中央大神殿は特に情報統制が厳しくてさ。本筋以外の調査については、さすがに人手が足りねぇんだわ」
「……新しい人を雇うお金もないしね。今、現状の密偵を使い潰さない範囲で引き続き頼むね」





