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半端者(インコンプリーツ)

「リオ、これは一体……?」

 駆け寄って腕にかけられた鍵穴をみる。

 足のくさりはヘアピン一発で外れそう、でも。


 スキルを持つ(プロである) 以上は開けられるかどうか、一目で見分けられる。

 腕の鎖を繋ぐ腕輪。これは、……ダメなヤツだ。

 ここまでかなり暴れたらしい。両手首には痛々しく腕輪で出来た傷が見える。


「それは拘束用の腕輪だけで無く、鎖までセットで筋力封じの封印、をかねてるよ。……カギ開けが効かないなら、それは物理封印も兼用なんだね」


 よく見れば、繋がれた杭にも魔導の刻印が刻まれ、文字が薄明るく光っている。

「封印を壊さないとダメ、ってことか。鎖を切れればいけるか?」

「多分。でもこんな太い鎖、どうやって切るの……?」

「まぁ、な」


「非道い。……りおちゃん。……誰が。こんな事を」

「獣人にしては毛が薄いし、拘束具に獣化防止封印が無いのは獣化できないから……? あのねアリス、怒らないで聞いてね? 身内がね。恥だって言って隠すんだよ。……多分彼女は、インコンプリーツなんだ。――ここまで言えばユーリだったら。わかるでしょ?」


「インコンプリーツ。この子はそう、なのか……?」



 この世界の法則はゲームの設定に沿うようだ。だったら。

 基本的には同族以外では子供は出来にくいはず。……出来ない、では無く出来にくい。

 つまりは、その条件下で子供が出来る可能性はゼロでは無いと言うこと。


 ゲームの中ではプレーヤー間の結婚はそもそもシステム上不可であるが、NPCとなら結婚も出来るし、子供を残すことも出来る。

 ちなみに、当たり前だが子供ができるに至る“行為”。これの演出は無い。


 ……18禁のVRゲームではまま、そういう“演出”もあって社会問題化しつつあるけれど。

 AdMEは全年齢対象だし、俺はやったこと無いし。

 おいといて。


 異種間結婚で子供が出来る確率。これは、1%を切っている。

 “行為”の演出が無い以上、回数が云々などとそう言う品の無い話では無く。

 ……それもおいといて。


 キャラメイク時も一〇〇分の一の確率でしかインコンプリーツの選択肢は発生しないし、その上それが成功するのは更に一〇分の一を超える確率を突破する必要がある。


 つまり両方、狙っては作れない。



 双方の形質が混ざり合ったその姿はたいがい美しい。

 その上一部の能力が犠牲になるのと引き換えに、異様なほど高いスキルや技能を持つことになる。


 だが、この世界の常識に照らせば、混ざり合ってしまったそれ。

 インコンプリーツは醜いものなのであり、存在自体すら忌避すべきものとされる。


 特に爬虫人ドラゴラム両棲人アンフィビニアンが数多く暮らす帝国では。

 その傾向が顕著にあり、あからさまに差別対象になる。



 インコンプリーツ発生率が極端に低いのはドラゴラムとアンフィビニアン、そして虫人インセクタ

 虫人インセクタともなれば。虫と“そういうこと”をしよう。と言う人なんか、いなさそうではあるけれど。


 でも種類にもよるが、これらも見た目はほぼ人間。そこはあまり関係がない。

 となれば。見た目はほぼ人なのだから、“受精の方法”だって人と同じはず。


 まぁ。“受精の為の行為”をしているところなんか、18禁同人誌くらいでしか、お目にかかれるはずも無いわけだが。


 インコンプリーツの発生率の問題に関して言えば、単純に設定やシステム上の問題なんだと思う。

 あまりにも使えすぎる、つまり強すぎるから。




「……イン、コンプリー、ツ?」

「そうインコンプリーツ、無理やり日本語にすると半端者。って感じになる」


「ねぇ、ユーリ。ニホンゴってなに?」

「リオ、話が面倒だからあとでな。――とにかく、種族をまたいだハーフってことだ」

「……種族。ハーフ」




 そしてこの世界、同族間のシンパシーが異常なまでに強い。

 人とのインコンプリーツは半分とは言え同族で、種族の特徴は良く残っていることが多い。

 その上、表面上差別の無いフェリシニア法国民なら、殺されることは無い。


 それでもインコンプリーツは忌み子として隔離され、外部には生まれたことさえ秘匿される。

 だから法国政府だって、何処の集落に何人居るか。正確にはつかんではいないはずだ。

 表面上、種族間の差別などないはずの法国であっても、インコンプリーツに対する扱い。それは変わらない。


 女性しかいない種族である蛇女ラミア蜘蛛女アラクネーなら。相手の種族を問わず、子を成すことはできるし、可能性としても普通より高いくらい。

 でも、その99.99%はラミアやアラクネーとして生まれてくる。

 ラミアやアラクネーでさえ、相手の特性を受け継いだハーフ。と言うのはほぼ生まれない。

 だからこそ、差別の対象になるのだ。



 それに、ゲーム内では驚異的な戦闘能力や回復力を誇りながら、あからさまな欠点がある。

 出身地以外のNPCにはまるで相手にされない。と言うマイナスがついて回るため、普段の生活が難しいどころでは無いのだ。


 AdMEのゲーム内世界では、NPCと関わらずに生活するのは、事実上不可能。

 そしてインコンプリーツとなれば普通の商人はおろか、騎士や聖職者からさえ無視される。どころか、なにか間違えば攻撃される。

 仲間を見つけるどころか、食事をして初期装備を調えるだけでも一苦労どころの話では無い。


 インコンプリーツとして出来上がったキャラが、パーティーを組む前に戦闘にも出られず経験値無しで10連続死亡、再起不能で再度キャラメイク画面へ。

 戦闘のみならず、疲労の蓄積での死亡や餓死もあるAdMEの世界。珍しいことでは無い。





「細かい話はおいといて。――リオ、彼女は人と獣人のインコンプリーツ。……ということか?」

「多分、そうだと思う……」

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