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亜里須の語る、亜里須の話

「……ゲーム、の話。だよね?」

 いつも以上に力の無いかすれた声の後。ぴゅい! またメッセージが着信する。


【従兄弟のお兄ちゃんに借りてから、いわゆるレトロゲーム的なものに興味を持った。中学二年の時だったわ】


【それから約一年で一〇〇本ほど遊んだ。その後自分でゲーム機も買ったのよ、ネット通販で】


【意外と安かったので予備含めて、今は16ビット時代の機種を中心に12機種、携帯型ゲーム含めて22台】


【新品はもう買えないから、簡単な修理は自分で出来るようにもなった。わたし、電子工作得意で半田ごて使えるの。意外でしょ?】


【ソフトは全部で五二〇本ほど所有しているわ】



 ……本物のレトロゲーマーだった! マジでか!?



【それまではゲ-ムなんか触ったことなかった。だって誰かと点数を競ったり、アイテムを融通したり、攻略法を話し合ったり。そんなのが嫌だったから】


 あぁ、なんとなくその辺は。

 俺も“興亡”にハマるまではイヤだったからな。


【その点お兄ちゃんの貸してくれたゲームは良かったわ。だって、ゲームだけですべてが完結しているのだもの】


【テレビの画面ですべて終わりなのだもの。ネットに繋がなくても総てのイベントが見られるのだもの。誰ともむりやり繋がらなくて良いのだもの】


【だからお兄ちゃんには感謝しているわ。もっとも、後で私のお母さんには、かなり怒られたらしいのだけれどもwww】


 お前さ、草生やしてる場合じゃねぇだろうよ……。

「あの、な? 亜里須」

 ――話したくないことは話さなくて良いし、もちろん書くことも無いんだぞ?



 チェッカに寄れば、この世界で二人きりの転移人じゃ無いか。

 お前に言われたら聞いちゃうし、書かれたら読んじゃうからさ、俺。



【ステイタスチェッカ。ホント、ふざけているわねこのアプリ。わたしがコミュ障だなんて。わたしの本当の、本当のこと。本当が。本当のことを、裕利くんに本当の本当にほんとうはほんとうのわたしほんとはわた】


 ……どっちかと言えば“テキスト亜里須さん”の方が作ってる人格だとおもう。

 本体はモタモタ喋るけど意外と辛辣しんらつな方。

 そのテキスト亜里須さんが。

 文字をこれ以上紡げなくなって、“黙った”。


「だから、亜里須。あのさ……」

 携帯から顔を上げた亜里須と目が合う。ほおには静かに涙が伝っている。


「わ、たし。……人と話すのは、……得意じゃ、ない」

「うん」

「……でも。……ゆうりくんとお話。……したいの」

「だよな?」

「……え?」


「俺はお前の話を聞くし、メッセージも読む。会話はきちんと成立してるよ。――見てたらわかる。喋るの下手なだけだろ? だからそれを強要されたら人付き合いもうざったい。ってさ?」

 ――異世界に来てまで気に病むの止めろよ。良いじゃん、もう。

「……ゆうり、くん?」


「少なくともそれは俺が知ってる。なら、もう気にすること無いだろ? どうせまともに話が通じる相手は俺しか居ない」


 そう言う意味では。リオも“こっち側”の人間だしな。

 そして着信の度に画面が毒々しい文字で埋め尽くされる“テキスト亜里須さん”。

 その姿を借りて、亜里須が毒を吐く姿を知るのもまた、俺一人。

「……それにチェッカを信じるなら、俺達は二人共、救世主様だぜ!?」


 ――リオより弱い俺達が何をどう救うんだか、皆目見当もつかないけどな!

 話をちょっと変えようと思ったんだが壮大な話になった。

 それはそれで良いさ。


「考えても見ろ。この世界の連中は、だ」

「…………?」

「シスコンとストーカーを召喚して世界を救わせようとしてるんだぜ? もう笑うしかないだろ? ……お前はどう思う?」

 頬に伝う涙はそのままに、亜里須は口元にちょっとだけ笑顔を浮かべて。

 こくん、と頷く。



「俺が最初に見張りをする。今日は何も無かったら、疲れてるみたいだしリオは起こさない。――巫女様には寝ててもらって、見張りはシスコンとストーカーだけ。今晩はそれで、良いよな?」

 涙を拭きながら亜里須が頷く。





「眠くなったら起こすから亜里須は先、寝ててくれ」

「……わかった。無理……しないで、適当に、起こしてね?」

 と亜里須が言い終わる前にはメッセージが着信する。


【ちょっと用を足しつつ、アレをアレしながらアレしてくるので5分ほど待って。怖いから見ていて欲しいのだけれど、でも見ないで横を向いていて欲しいのだけれど、どうしてもらったら良いかしら】


【だって、どこまで行っても平原で隠れるところが無いのだもの。一応わたしも女の子なので、男子に見られていると思うとつい興奮してしまって、用足しどころでは無くなってしまうから……】


 見られると興奮するような、そう言う性癖の持ち主なのか、お前!

 って。――この状況下でネタに走る余裕が何処にあるんだよ……。


【ここまで気にしていなかったのだけれど、野生動物相手なのだから血のニオイはいけないのかしら? さっきリオちゃんに聞いておくべきだったわ。土に埋めればそれで大丈夫なものなのかどうか】


【一応穴が掘れるような棒は、さっき薪拾いのついでに拾って置いたのだけれども。……それにその。おしっこだって、そう言う意味ではニオイ。するわよね?】


 だから、書くなっつーのに! 書かれたら読んじゃうんだから!


【りおちゃんはどうしていたのか、ここまでみていなかったのだけれども。裕利君はその、用足しの時はどうしているの?】


 ――全く。このギャップ、少なくても樺藤亜里須。彼女はそう簡単に折れるような女の子では無かったらしい。

 まぁ良かった。……んだよな?


次話はこのあと6:00に投稿となります。

よろしくお付き合い下さい。

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