デキる女達
「まぁ、ぱっと見からリオさんはただの巫女じゃ無い。初めて会った時からなんか特別な感じ……、の…………。ん? こんなところで、なんでモンスター?」
ここまで穏やかな顔をしていたモリガンの顔が、突然険を帯びる。
「どうしたモリガン。モンスター、だと? ここは王都の中だぞ。……近い、のか?」
「姉御。慌てる距離じゃ無い、結界の向こう側なんだが。……なぁ、結界の向こう側。姉御の“真実の目”で何か見えないか?」
「何も見えんが……。だが、お前さえも気が付くのなら。なるほど。これは錯覚では無いのだろうな」
アテネーはそう言うと、背を伸ばしてちょっと目を細める。
「具体的な位置がどうして……。大結界のむこうに、隠遁結界? この距離でなにも聞こえん、音まで遮断するなどと。むぅ、意図が読めんな」
アテネーと同じ方向を向いていたニケが椅子から立ち上がる。
「ネー様、絶対なんか居る! 間違い無く気配はあるのに、風向き正面なのに臭いもしないよ。……モリィ、なんで?」
「ニケちゃん。すまん、私じゃわからん」
三人とも何かに気が付いたようだが。
「おいアテネー。その話、結界は大丈夫なんだろうな?」
「心配には及ばん主殿。投石器はもとより、魔導弾の一〇や二〇なら、別段無視しても良いくらいだ。気にする必要性も無い思うのだが、……しかし、なんでワイバーンが、しかも群れで」
どうやら、話ながらも気配は探っていたらしい。
確かにワイバーンはドラゴンに分類される生き物。基本的に群れることは無い。
「姉御もやはりワイバーンだとおもうか? ――“真実の目”でさえ、なにも見えんと言うなら、むしろ気にした方が良いんじゃないか?」
他の二人よりもスピードも持久力もない分、目には絶対の自信を持つモリガン。
もちろんスキルとして“真実の目”を持つアテネー別格だろうが、それでも。
初めて会ったとき。
アテネーの本気の一撃。これを見切りだけで一度はかわして見せた。
ここまで見た限り。遠くを飛ぶ鳥の種類をあっさりと、雄雌まで詳細に見分けることができるし。細かいものの判別も虫眼鏡が要らない。単純な目の良さなら一番だ。
だから自分が見えない、と言うことを心配しているらしい。
まして彼女。モリガンは、専門こそ蟲ではあるが、優秀な使役師なのである。
アテネーさえも気が付くほどの強力なモンスターならば。
当然、気配だけで位置詳細がわかるはず。
だから。モリガンに限ってはその気配の先に何も見えない、と言うのはあり得ない。
彼女の言いたいことは理解できた。
「モリガン。お前、数とか種類ってわかるか?」
「多分ワイバーンが三〇以上は居そうだが、――すまないマイスター。ここからではこれ以上……」
「ニオイはしないけど、地面には普通に人間の気配がいっぱいある。多分一〇〇人は超えてるよ。ほかにモンスターも相当集まってる感じなのに、こっちもニオイがしないんだ」
「アテネー。魔法が、人間が介在している。ってことか? これ」
「主殿? まぁ、結界が自然になどとは、――まさかワイバーンを人間が召喚した、とでも……!」
「当然、俺ではわからんけど、さ……。どう思う? モリガン」
「わからんが、可能性は高い。……姉御、とにかく現地へ行こう!」
「そうだな、修復工事中である以上何かがあったら不味い。……私達にはさんざ、ただ飯を頂いた義理もある」
「ネー様、僕もいく!」
「ゆうりくん……」
亜里須が椅子から立ち上がる。
「……いこ?」
「ん? あぁ、だな。俺達も宿泊費分くらいは、働くか」
ウチのパーティだったら、ワイバーンだとしても二〇や三〇だと言うなら。
それなら、なんの問題もないはずだしな。





