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リオンデュール・カニュラケイノスの“同居人” Side : Country of Regulations

「やはり存在自体に意味はあったのですね。女神のみならず、女神教団も、公国も」



 現状わたくしが、安易に女神教徒を排斥しないように。

 と、法国や信教上層部の各方面を抑えてまわっている。

 帝国との戦を抱えながら、さらに女神教との宗教戦争。

 などと言う事態になれば、さすがに国の形を支えることが困難になるのは火を見るより明らかなことだ。


 小国ではあるが戦上手で知られるアドメ公国。

 法国はもちろん、帝国との小競り合いでもここまで全戦全勝、負け知らずである。


 もっとも。戦となれば勝つのは間違い無いだろうが、領土が小さい以上得るものもほぼ無い。

 その上、法国軍の被害が何処までとなるか、まるで計算が立たない。

 軍事政権であるはずの帝国でさえ。公国に戦を仕掛けることは控えている。

 正面切って戦を構えるような事態は避けなければいけない。


 それに、法国が開戦となった場合。その機に乗じて帝国が攻め込んでくるのは必然。

 最近の帝国は、“設定”を無視し、国家間バランスを崩すことに一切の躊躇が無い。




 貴重な人財を軒並み失った貴族排斥運動、その二の舞になる。

 と軍師や博士達に言わせれば、保守的な神官達は二の句が継げなくなる。

 半数以上が自身も運動に参加し、結果。


 国を運営する側となった今。現状の人材不足に直面しているのだから、当然と言えば当然だ。

 考えるまでも無く。ある程度の学識を有し、ランド全体を俯瞰して全体を考えることのできるもの。この世界でそれが出来るなら、貴族達を置いて他にない。


 その貴族達が六割以上も殺されてしまったが故。法国では差別を撤廃し、獣人や虫人までをも信教の要職や政府の重職に迎えなければいけなくなったほどなのだ。

 帝国でもこれまで兵士以外に登用されなかった爬虫人ダイノロイド両棲人アンフィビニアンが、信教上層部や帝国政府の要職に就くことになってしまった。


 思いのほか優秀なものが多かったとはいえ、貴族の穴を埋めるには至っていない。一部を除いて教育を施す手間もある。

 計算無しに感情で動いては、結局全てを失う。


 宗教戦争の側面があまり強調されると、そこは宗教が国の根幹にある法国である。戦へと舵を切らざるをえなくなる。

 とにかく中央を如何にして抑えるか、現状はそこに注力するしか無い。




『どうやって女神を顕現させたのか、そこが気になるが』

「わたくしの同類である、と仮定したなら理解はできるのでは? ――公王、マスチフ・フィルダ。果たして本当に、畑外はたがいクンであるのでしょうか」


 畑外 満寿夫。名前はいかにもだが、本当にそうであるのか。


『そこまでは知りようが無いが。その者は、神の喪失を知りうる立場であるのか?』

「状況によっては気が付きましょうし、気づいたのがこちらへと来る前なれば。神をも補完する。などと言うことも彼なら出来ましょう」


 彼は前作からのチーフプログラマで、かつ世界感設定のメインスタッフでもある。

 いつの時点で何故来たのかはおくとして。こちらに来る前に気が付いていたなら。


 誰にも知られず世界感のデータに、公国と女神の設定を突っ込むくらいは、造作もないことだろう。

 ゲームシステムに手を入れるわけでは無い。

 スタッフも、システムさえ参照しないテキストが増えるだけ。恐らくは誰も気が付きさえしない


 

「時に。今日はなんの用事があったのです? わたくしと雑談をしに出てきたとも思えませんが」

『ふむ。我が半身が昨日、法王に託宣を下したようだ。この娘と、そしてユーリの一行に関わることで、な』


「それで?」

『間もなくのもの達は、動乱に巻き込まれよう。いや、その中心となると言うべきか。いずれその覚悟はさせ、修練を積ませておけ」


「言われるまでも無いことです」

 いまやそのせいで。

 大事な弟子を失いかけ、わたくしのクビまでもが風前の灯火だ。


『それともう一つ』

「まだなにか?」


『この私の封印が緩み始めている。世のことわりがそのカタチを変えようとしているのやも知れん。そして封印されている力。――この娘に、いや人の身に全てが制御できるとは考えがたい。十分に注意をせよ』

「わたくしにどうせよと?」



 目の前の、リオの姿をしたものは既に神としての力はほぼ無く、自身でさえでさえ完全には制御のできない、ただのパワーの塊と化してしまった。

 “本人”はその力が、自身の意思を離れ魔導や理力のカタチで暴発することを恐れた。

 だから現状、なるべく自身も顕在化を避け。リオの意識の奥深くに“引きこもっている”のである。


 これは本格的に顕現してしまうと理性を失い、破壊衝動のみで行動する可能性が高い。それを自覚しているため。

 それは、かつてのわたくしが神というものをそのように捉えていたから。


 神とはすなわち、すべから荒魂アラミタマなのである、と。


 

『どうとでもするが良い。……警告はした。あとは自身で考えよ』

「あなた自身の問題を、わたくしに丸投げにするとでも仰るつもりですか?」

 


 だからこれは。

 問題を丸投げにしているのでは無く。遠回しに、自身をこのように作り上げたわたくしの責任において解決すべき問題である。と言っているのだ。

 

 自身の成り立ちを完全に理解しているからこそ。

 多少問題があろうとも、このわたくしを灰色の世界から拾い上げ。この世界に居場所を作ったのだから。


 かつては神であった残滓であるが故に、わたくしを拾い上げたのだ。

 もう神では無い自身に変わりこの世界の変節を、幾ばくかでも食い止めるための防波堤にするために。



『その通りだ。実際問題、私自身が世のことわりに触れる事は出来ん故な。今日はこれまでだ。また逢おう、メルカ・アナベル』


 そこまで言うと、“リオの身体”は。ばったりとベットの上に倒れた。




「全く……。今やただの“NPC”に過ぎないわたくしに。いったいなにをどうせよと言うおつもりなのやら……」

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