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君の盾になりたい  作者: もも


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6 デート

 デートに誘ったはいいけど場所やプランはどうしたら良いのか分からなかったクリスは、恥をしのんで学院で唯一話せる友人サリバンに相談した。サリバンは子爵家の次男だがよっぽどクリスの家より豊福だ。同じ子爵家総領令嬢の婚約者もいた。

「えっ婚約したの?あのリンドバーグ家のご令嬢と?確かこの間婚約破棄をされたって噂になってたけど」


「その後たまたま縁があって知り合った。一目惚れなんだ」


そういう契約だから友人にもそういう話にした。


「へえー女の子に興味が無いかと思ってたけどやる時はやるんだね。良かったよ、クリスが幸せになれそうで。それにリンドバーグ男爵令嬢って可愛いのに夜会でいつも元婚約者に嫌われて侮られていたから気の毒でならなかった。クリスなら安心だ。いや良かった。良かった」

陽気で善良な友人はクリスの肩を叩きながらそう言った。


「そんなに有名だったのか?その元婚約者の態度って」


夜会に出たことがないクリスはサリバンさえ知っているレイチェル嬢の元婚約者のことに驚きを隠せなかった。



「好みじゃ無くても家の決めた婚約者だろう?普通は表面だけでも取り繕うよな。

あれは酷かった。最初だけ話して後は知らん顔だ。話題もドレスを貶したり化粧が派手だとか聞いていて気分の良い話題では無かった。聞こうとしたわけではないけど声が大きくてな。

彼女いつも壁の花だったよ。婚約者がいるのに踊ったりしたら奴に何を言われるか分からないから控えていたんだろうな。

余計なお世話だけど結婚生活が心配になるほどだった。ああこれは婚約者と話していたことだからね。俺だけの意見じゃない。で?デートか、話は出来たのか?ほらクリスは人見知りじゃないか」


「うん、不思議と彼女とは話せるんだ。サリバンよく見てたんだな」


「あの二人は悪目立ちしてたからな。クリス彼女とは話せるんだ、良かったな。花は薔薇なら一本で愛してますって意味があるから持っていくといいよ。間違いがない。他の花は分からん。俺の婚約者が薔薇が好きなんだ。何でも本数で花言葉が変わるそうで必死で覚えた。でもリンドバーグ男爵令嬢が好きな花は聞いてみたほうがいいぞ。じゃあ人気のカフェとかどうだ?」


愛の告白みたいになるのは避けた方がいいだろうなとクリスはサリバンの言葉を聞きながら考えていた。


「女性ばかりなのか?」


「女性は多かったな。けどデートで来てる奴もいた。店は賑わっていたから予約した方が良いかもしれない。その後で公園はどうだ?」



「・・・働いてからなら良いが取りあえず公園にするよ、果実水とか売ってるしね。相談に乗ってくれてありがとう」


クリスの懐具合を知っているサリバンは何とも言えない顔になった。


「想い合っている二人ならきっとどこでも楽しいよ」


「そうだね、聞いた僕が悪かった。余計な気を使わせた、ごめん。カフェは一回くらいなら行けると思う」

クリスはデートは当分図書館か公園だと思ったが、正直にレイチェルに相談しようと決めた。



 デートにはレイチェルに贈られたシャツとパンツで行くことにした。生地とデザインが良いのが着ると分かった。スタイルが良く見える。出来るだけ背筋を伸ばすようにした。

花束は黄色のガーベラにした。花言葉を図書館で調べたら「希望」「前向き」だったので安心できた。色々と参考にさせて貰うつもりでノートに移した。


デートは街をぶらぶらしてから公園に行くコースにした。

寮からリンドバーグ家までは歩いて行った。花束を持って歩くというのは中々に恥ずかしいものだと実感した。街の人の視線が生温かい物に感じた。

屋台のおじさん達から「おお、兄ちゃん告白か?頑張れよ」と大きな声で応援され、変な汗の出たクリスはもう二度と花束を持って歩かないと決めた。



 リンドバーグ家に着くと門番がすっと重厚な門を開けてくれた。玄関には馬車が停まっていて、側で薄水色のワンピースに白い帽子のレイチェルが待っていてくれた。メイドが傘を差し掛けていた。


「ごきげんよう、シャツとパンツだけなのに素敵だわ」


「仕立てが良いからだよ。君もそのワンピースよく似合っている。これどうぞ、何の花が好きか分からなかったからガーベラにしてみた」



「ガーベラは好き。可愛くて明るいもの。ありがとう、嬉しいわ。お部屋に飾っておいて」

側にいたメイドに渡すとにっこり笑って

「今日の予定は?」

と聞いて来た。


「街歩きと公園に行くつもりだよ」


「それじゃあ馬車に乗りましょう」

と言うレイチェルにクリスはエスコートの手を差し出した。


クリスはこんなレイチェルのどこが気に入らなかったんだろうと考えた。でもそのお陰で知り合ったんだから良しとすることにした。




 馬車を街の入り口で降ろして貰ったクリスたちはゆっくり歩くことにした。市場に近づくと屋台の匂いがしてきた。焼き菓子の香りや焼串の肉の匂いまでする。街の人の喧騒も聞こえ心が浮き立つような気がした。



「あのさ、あんまり奢ってあげられないんだ。働くようになったら任せて欲しいんだけど。情けなくてごめんね」


「支払いはメイドがするから心配しないで。これから契約が終わるまで財布はうちだと思ってもらっていいわ。常識的な範囲でなら貴方に便宜を図るよう父から言われてるの。あなたの口座を教えて貰えれば当分困らないだけの額を振り込むわ。婚約のお礼よ」


レイチェルが小さな声で耳の近くで告げた。クリスは初めての女の子との接触と言われた内容に胸がどきどきした。







 デートを数回重ねた頃には領地で採れる石が石炭だと分かったと父から連絡があった。事業の支援もして貰えると喜びの手紙が届きクリスはほっとした。

文官になるのを辞めて手伝おうかと返事を送ったら、まだどう転ぶか分からないし、自分も若いのだから辞めないほうが良いと送られてきた。堅実な父らしい。


クリスは図書館で石炭層について調べた。それによると長い間の地質活動で出来た物らしい。発掘する時はガスが出ることもあり岩盤の崩落にも注意が必要だと書かれていた。


念の為に父に知らせることにした。


ちょうどいい時にレイチェルと契約が結べて良かったとクリスは胸を撫でおろした。


















読んでくださりありがとうございます!

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