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異世界から令嬢を持ち帰ってしまった件  作者: シュミ


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8/9

学校とバイト

   土日が終わり月曜日となった。

 当然、学校に行かなければならないわけだ。


「悪いなリーシャ、お昼作れなくて」


「いえいえ、普通なら住ませてもらってる私がやるべき事ですから」


 土日の疲れが溜まっていたせいか、寝起きが悪く、朝の時間に余裕が無くなってしまったのだ。

 そのせいで自分のお弁当とリーシャの昼ご飯を作ることが出来なかった。


「お湯を沸かすのは出来るんだったよな」


「はい! それは完璧です!」


「じゃあカップ麺で我慢してくれるか?」


「わかりました」


「ありがとう。それじゃあ行ってくるよ」


「はい、行ってらっしゃい」


 リーシャは俺が玄関のドアを閉めるまで手を振ってくれた。

 なんというか悪くない──いや最高の気分だ。


 名前 : 天音 旬

 Lv5

 称号 : 鍛治見習い

 HP : 140

 MP : 150

 筋力 : 73(+13)

 耐久 : 65(+2)

 速度 : 62(+3)

 固有スキル : <召喚・帰還><言語理解><複合>

 称号スキル : <武器生成><防具生成>

 スキル : <闇魔法Lv1><火魔法Lv1>

 換金可能ポイント : 5190


 昨日は討伐ミッション2個クリアした。シェリアの言う通り難易度はそれほど高くない。三日目にしてD級昇格の折り返し地点に立った。クエストの進みも順調で少し余裕が出来てきた。ピンチなのは金銭面くらいだろう。

 ミッションのおかげでレベルも5に上がった。

 解放された称号はなんと【鍛治カヌチ】だった。


<武器生成・見習い> : 武器を生成するスキル。

 鍛治見習いのため生成には時間が掛かり、能力も劣る。1度に生成できるのは1つまで。


<防具生成・見習い> : 防具を生成するスキル。

 鍛治見習いのため生成には時間が掛かり、能力も劣る。1度に生成できるのは1つまで。


 といった感じでどうやら戦闘系の【称号】では無いらしい。だが筋力とMPが10ずつ上がった。これが称号によるプラス値と言うやつなのだろう。


 シェリアさん、【鍛治カヌチ】の昇格ってどんな感じですか。


『鍛治見習い→鍛冶士→鍛治職人→錬金者→錬金術師といった感じになります。【錬金術師】を目指して頑張ってください』


 錬金術師か。何だか夢があるな。


 そんな事を考えながら俺は学校へと向かった。



 ※



 教室に入り、席に座ると前に座っている男が俺に話しかけてきた。


「よぉ旬」


「よぉ⋯⋯⋯真守⋯⋯⋯」


 遠藤 真守(えんどうまもる)、高校で知り合った俺の友達だ。


「旬、何だそのしけた面は、まだ月曜だぞ」


「休みが終わったという絶望感に苛まれてるんだ」


「お前、そんなだらけた奴だったか?」


「今週は特別疲れてるんだ」


 異世界に行けるようになって、令嬢を拾って、魔物と戦って、この全てが三日間で起きたとなるとさすがに疲れる。


「なぁ旬、今日のニュース見たか?」


「ニュース? 見てないけど」


「ここら辺じゃねぇんだけどよ。ショッピングモールで爆発事故が起きたんだってさ」


「マジか⋯⋯⋯」


「この事故がな、めちゃくちゃ不思議でよ。何と! 爆発した原因が全く分からないらしいんだぜ」


 真守は目の輝かせてそう言った。


「何だそれ」


「興味引かれるだろ?」


 この流れはまずい───。


「いや、全く」


「はっ!? 嘘だろ! 原因不明の爆発だぞ! 想像が膨らむだろ! 例えばそうだなぁ⋯⋯⋯魔法使いがやったとか!」


「魔法使いね⋯⋯⋯⋯⋯」


 真守は都市伝説やオカルトなどの理屈が通じない系が大好物だ。

 なのでこういったニュースがあると真守は想像力をふくらませて語りまくる。俺も嫌いでは無いのだが、今回の話題はあまり触れない方がいいと思った。


「絶対いるって! だって最近こういうの多いじゃん! 一市民が一昔前の剣を振り回してたり、嵐でもないのに広範囲で停電が起きたり、透明人間がコンビニ強盗をしたり───」


 だってよシェリアさん。


『あはははは⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯一体誰がそんな事を⋯⋯⋯⋯⋯⋯』


 いつもの俺ならもう少し興味を持てたかもしれないが、今回に関してはあらかた予想が着いてしまう。ショッピングモールの事故も含めて全部、異世界に行けるようになった奴らが起こしたんだろう。


「実際目撃情報だって出てる。噂によれば、別世界に飛ばされた人間が帰ってきたって話しさ。どうだ旬気になるだろ?」


 へぇ〜意外といい線いってるんだな。噂って恐ろしい。


「⋯⋯⋯⋯⋯そんな事より、稼げるバイトでも教えてくれ」


「おいおい、ここまで来て興味無しか! どうしちまったんだよ旬! さすがに凹むぜ⋯⋯⋯⋯⋯」


 悪いな真守、原因が分かってる俺からしたら都市伝説でもなんでもないんだ。

 ちなみに俺は異世界のご令嬢と同棲しちゃってる状態だ。

 あんまりこの話題を続けるとボロが出そうで怖い。


「コンビニのバイトじゃ足りないのか?」


「いや、まあ、そんなところだ⋯⋯⋯⋯⋯」


「何だよその曖昧な回答は」


 話題を変えようと出したが、これもまずかったな。

 クエストの余裕も出来たからピンチなお財布事情を改善するためにあの稼ぎ方を試そうと思っていたところなんだった。


「てか、俺に聞かれてもバイトしてねぇから分からん。⋯⋯⋯⋯ていうかなんでピンチなんだ?」


「えっ⋯⋯⋯⋯⋯いや、まあ、とりあえずピンチなんだよ」


 真守が俺に疑いの目を向けてくる。

 俺は目を逸らしてしまった。


「言いたくないならいいけどよ。⋯⋯⋯⋯⋯もし彼女と忙しいとかならちゃ〜んと教えてくれよな」


 ニヤリとした顔でそう言う真守。


「そこは心配するな。俺に彼女が出来るなんて有り得ないからな!」


「旬、そこはあんまり誇るところじゃねぇぞ」


 そんな感じで誤魔化し続け、放課後となった。


 俺は家には帰らず、そのままバイト先であるコンビニへと向かった。


「お疲れ様です店長」


 店長の藤崎 紗枝(ふじさきさえ)さん。

 黒髪ショートカットで目の下にはいつもクマができている。

 年齢は20代後半から30代前半くらいの女性だ。


 そんな店長は無言でジーッと俺を見つめてきた。


「どうしました店長? 俺の顔に何かついてます?」


「⋯⋯⋯⋯いや、何でもない。着替えたらレジ打ちお願いするよ」


「分かりました」


 俺は服を着替え、言われた通りレジ打ちをしにいく。


 コンビニでのバイトを始めて一年ちょっと、仕事にも大分慣れてきた。


 ここでバイトを始めた理由は自宅に近いからという簡単なものだった。

 運良く店長も他のバイトの人達も良い人達ばかりで非常に働きやすい。今日はいないがクラスメイトも一人ここで働いている。



 ※



「お疲れ旬くん」


「お疲れ様です店長」


 バイトが終わった時には辺りはすっかり暗くなっていた。

 店長もちょうど仕事が終わったらしく、帰る時間が被った。


 ふ〜、とタバコを吹く店長。


「あっ、悪いな。いつもの癖が」


「毎度の事ですからもう気にしてませんよ。でもあまり吸いすぎない方がいいですよ。仕事中たまに臭ってますから」


「えっ、ほんとかい?」


「はい、ほんとです」


「そうか、気をつけるよ」


 藤崎さんはどちらかというと仕事が出来る方だ。

 だが少し抜けているところもある。明らかに睡眠不足が原因だろう。何故そうなっているのかは未だによく分かっていない。


「⋯⋯⋯⋯なあ旬くん。最近変わった事とかないか?」


 当然店長は真剣な顔付きでそんなことを言った。


「? ⋯⋯⋯ありませんけど。どうしてですか?」


「いや、無いならいいんだ。何となく今日の旬くんは雰囲気が違う気がしてな」


「そうですか。まあ強いて言うなら寝不足ですかね」


「そうか。なら今日は早く寝ろよ。経験上、寝不足はあまりおすすめしない」


「ハハハ。店長が言うと説得力ありますね。それじゃあ早く寝るため、お先に失礼します」


「ああ、気をつけて帰れよ」


 俺は店長別れ、帰路に着く。


 早々に自宅へ戻った。


 玄関のドアを開け、中に入る。


「ただいま」


「お帰りなさいアマネさん」


 リビングの方からリーシャの声が聞こえた。


 俺は靴を脱ぎ、リビングへと向かった。


 そこには洗濯物を綺麗に畳んでいるリーシャの姿があった。


 何か奥さんみたいだな⋯⋯⋯⋯⋯。


「洗濯物ありがと」


「アマネさんもお疲れ様です」


「お昼は大丈夫だったか?」


「はい、とても美味しかったです。お湯を入れて待つだけであんなに美味しいものが出来るなんて驚きました。向こうの世界にもあったら毎日のように食べていたかもしれません」


「それは体に悪いからダメだぞ」


 確かにカップ麺は簡単に出来て美味しい。

 だからこそ世界中で売れているのだろう。

 向こうの世界でも売れるかな。


 いや、少しコストが掛かりすぎるか。

 今の貯金じゃ大量には買えないな。

 別のものにしよう。


「リーシャ、デニムにある商会の場所を知っているんだったよな?」


「はい」


「了解。じゃあ明日学校が終わったら買い物に行くぞ」


「わかりました。何を買うんですか?」


「もちろん。売りに出す商品だよ」


 金銭面の解決のため。そして黒の商人について探りを入れるためだ。


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