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異世界から令嬢を持ち帰ってしまった件  作者: シュミ


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7/9

複合魔法

 ホブゴブリンが巨大な棍棒を振り回す。

 その一撃一撃が気を抜けば当たりそうなスピードだ。


 俺は隙を見て、ホブゴブリンの懐へと潜り、剣を振るう。


「グェェェェ⋯⋯⋯⋯」


 直前で飛んだか、傷が浅いな。


 ホブゴブリンは怯む様子もなく、間合いを詰めようと、足を一歩踏み出す。


氷の風(フリーズ)


 するとルナがホブゴブリンのもう片方の足を氷漬けにして、その場に固定した。


 それにより、ホブゴブリンはバランスを崩し、転倒する。


 俺はその隙に攻撃を仕掛ける。


漆黒の炎(シャドウフレイム)


 漆黒の炎がホブゴブリンに向かって放たれた。


 これが俺の固有スキル<複合>だ。

 スキルを掛け合せて新たな魔法を作ることが出来る。

<漆黒の炎(シャドウフレイム)>は闇魔法と火魔法を複合したものだ。


「グェェェェェェェ⋯⋯⋯⋯⋯!!」


 漆黒の炎がホブゴブリンを包み込む。

 その熱さに悶え、火を消そうと暴れ狂う。だが火は消える気配を見せず──逆に全身に燃え移っていく。


「グェェェェ⋯⋯⋯⋯⋯」


 そうしてホブゴブリンは全身が灰になるまで燃やし尽くされた。


 我ながらヤバすぎる魔法だな⋯⋯⋯⋯。


 <漆黒の炎(シャドウフレイム)>は選択した敵を燃やし尽くすこのができる魔法──言わば呪いの炎だ。


 これが<複合>か。結構使えるじゃん。


「アマネさん⋯⋯⋯⋯今の魔法は?」


「俺の固有魔法ってところだ」


「へぇ〜! なんと言うか、かっこいいですね!」


「えっ、そ、そうか?」


「はい! かっこいいです!」


 俺は正直そう言ってくれたのが嬉しかった。

 全く小学生か、と自分でツッコミたくなってしまった。


 Lv3→4


 名前 : 天音 旬

 Lv4

 称号 :【Lv5で解放】

 HP : 130

 MP : 115/130

 筋力 : 60(+2)

 耐久 : 63(+3)

 速度 : 59(+2)

 固有スキル : <召喚・帰還><言語理解><複合>

 スキル : <闇魔法Lv1><火魔法Lv1>

 換金可能ポイント : 1190


 レベルも上がりやすいし、これからはD級ミッションを受けるようにするか。

 魔物の強さもちょうどいいくらいだしな。



 ※



 冒険者ギルドに戻り、ミッション達成の報告をした。


「確認が取れましたが⋯⋯⋯⋯アマネ様、ホブゴブリンも倒したのですか?」


「そうですね」


 受付嬢は少し驚いた顔をした。


「では臨時報酬と言うことで1500ラーツ追加させていただきます」


「ほんとですか! ありがとうございます!」


 これはラッキーすぎる!


 という訳で臨時報酬を合わせて2000ラーツを獲得した。


「やりましたねアマネさん!」


「ああ、俺達は運が良い」


 ホブゴブリンの奇襲によって特別にミッション三連続成功にもさせて貰った。

 一回のミッションでもう一回分成功した事になるとは、いいペースだ。


 当然だがランクが高いミッション程、報酬が高い。その分、危険が増すが経験値も多く貰えるだろう。

 強くなるためには、それも必要になる。


「へっ、ホブゴブリンを倒した程度で運がいいとは、幸せもんだな黒の英雄さんよ」


 このだる絡み。何だか覚えがある。


 俺はその声がする方に顔を向け、蛇顔が見えたところで思いっきりため息をついた。

 しかも今回は三人のお仲間連れと来た。

 俺は追加で肩も落としてしまった。


「おい、てめぇ⋯⋯⋯」


 その態度に苛立ちを見せるガウス。


「何ですかあの人?」


 ルナはそう言う。


 腹は立つがあんまり関わりたくはないし、干渉しない方がいいだろう。


「知らない人だよ。行こうか」


 俺がそう言ってギルドを後にしようとすると、ガウス達が行く手を阻んできた。


「行かせるとでも思ってんのか?」


 ガウスの暴走にギルドはピリ付き、静まり返る。


「どいてください!」


 ルナは頬膨らましてそう言う。


「どけよガウス。また縛られたいのか? あっ、もしかしてそういう趣味?」


 俺がそう言うと酒の入っている冒険者の一人が「プッ」と吹き出し、それを仕切りに一斉にガウスをバカにしたような笑いが起きた。


「プハハ⋯⋯マジかよ! ガウス」

「束縛が趣味とかやべ〜〜!」

「だからボコられた事のある黒の英雄にまた絡んでんのか」


「変態さんなんですね⋯⋯⋯⋯」


 ルナはガウスに向かって引き気味にそう言った。


 さすがのガウスにもこれは効いたようで顔を真っ赤にしてプルプルと震え出した。


「チッ。外野は黙ってろ!」


 ガウスはそう叫ぶが、誰も聞いはしない。

 いくら報復が怖いからといっても、酒が入り団結した冒険者達は無敵だ。彼がどれだけ威圧的に叫ぼうが、鳥のさえずり程度にしか受け取られない。


 ガウスの一味が俺を睨みつけてきた。


「お前、ガウスさんになんて口を聞きやがる!」

「謝れ!」


「はっ? 外野は黙ってろよ」


 俺がそう言うと一味も明らかに苛立ちを顕にした。

 だがその中の一人───ショートカットの緑髪の少女だけは申し訳なさそうな顔で俺たちを見てきていた。


「そうそうだ! 黙てろ!」

「ほら、さっさと出ていけ!」

「次は体に縄でも巻き付けて来いよ!」


 ヤバい。焚き付けたのは俺だが、ここまでになるとは思わなかった。

 短気なガウスにこれは少々まずい気がする。


「束縛のガウス〜!」

「ハハハ。新しい通り名だ!」

「よっ! 束縛のガウスさ〜ん!」


「チッ。いつもは萎縮してるだけの外野が囀りやがってぇぇぇぇ⋯⋯⋯⋯⋯」


 ほらほら本気怒っちゃってるって。


 全身に寒気が走る。

 これが殺気というものなのだろうか。


「⋯⋯⋯⋯⋯てめぇら、皆殺しにしてやるよ」


「えっ?」


 するとガウスはあろう事か、その場で剣を抜いた。


「ガウスさん、それはまずいですよ!」

「しまってください!」

「ガウスしまって!」


 仲間もさすがにやばい、とガウスを宥める。


「うっせぇ!! 黙ってろ!!」


 その気迫に押され、仲間は萎縮し、口を閉じた。


 ただ事では無いと笑い転げていた冒険者達も静かになり「マジかよ」という驚きで溢れかえった。


「乱暴はやめてください!」


 そう言ってルナが俺の前に立つ。


「おい、ルナ⋯⋯⋯⋯」


「何だてめぇ」


「アマネさんを傷つけるつもりなら許しませんよ!」


 リナはそう言ってガウスに手を向け、氷を生成した。


「ハハ、そうか。じゃあてめぇから切ってやるよ!!」


 そう言ってガウスは構えを取る。


 ほんとにやる気だ。


「危ないルナ!」


 俺はルナを引っ張り、後ろに下げる。


 その時───。


「そこまでです! ガウス!」


 そう言って俺たちの前に一人の女性が立ちはだかった。

 背筋が凍りそうなほどに鋭い口調に思わず、ガウスも剣を振るおうとする腕を止めた。


 驚いた事にその声の正体はミルティさんだった。


「ギルド内での抜刀は規則違反です。今すぐ仕舞いなさい!! でなければギルド証を無効にしますよ」


「⋯⋯⋯⋯チッ。行くぞお前ら⋯⋯⋯⋯⋯」


 それを聞いたガウスは剣を戻し、仲間を連れてギルドの外へと向かい出した。


 さすがにギルド証無効は困るのだろう。


「次、このような事があった場合は即刻無効ですからね」


「へいへーい」


 するとガウスの仲間の一人である少女が俺たちの方を見て「ご迷惑をおかけしました」と深く頭を上げた。


「おい、エリス! さっさと来い!」


 ガウスがぶっきらぼうに少女を呼ぶ。


「ごめん⋯⋯⋯。すぐ行くよ」


 少女は少し怯えたようにそう言い、ガウスの方へと走って行った。


 あのパティーにまともな子が居たとは。

 ていうかなんであの子はガウスなんかに付いて行ってるんだろうか。


「助かりました。ミルティさん」


「まさか剣を抜くとは⋯⋯⋯⋯最近の彼は少し乱暴が過ぎます。あぁ〜〜⋯⋯⋯ほんと迷惑だわ⋯⋯⋯⋯」


 ミルティさんは心の声を漏らし、はぁーと深くため息をつき、疲れきった顔を見せた。


「それにしてもすげぇなミルティ。まさか【剣士ソード】相手に立ちはだかるとは。俺と同じ【格闘家ファイター】の香りがしたぜ」


 そう言ってグッとポーズをするバルト。


「私をバルト様と一緒にしないでください。だいたい私、無称号者ですよ」


 それを聞いたリーシャがバッとミルティさんの方を凝視した。


 どうしたんだろ?


「尚更すげーじゃねぇか。どうだ? お前も武の道へ進まねぇか?」


「進みませんよ。私は戦いが好きじゃないので」


「マジかよ。勿体ねぇな」


 そんな感じでまたもや発生したガウス騒ぎも一応は収集がついた。


「じゃあルナ、今日はもう帰るか」


「⋯⋯⋯⋯⋯⋯」


 ルナは心ここに在らずといった様子で固まっている。


「ルナ?」


 もう一度そう言うと彼女はハッとし、俺の方を見てきた。


「どうしましたアマネさん」


「大丈夫か?」


「はい。元気ですよ!」


「⋯⋯⋯⋯そうか。まあいい。とりあえず帰るぞ」


 俺は「帰還」と口にし、自宅へと戻った。



 ※



「意外とバレなかったな」


「そうですね。でも少しドキドキしました」


 そう言って軽くため息を着くリーシャ。


 さてと⋯⋯⋯⋯⋯。


「それでリーシャ。さっきから上の空なのはどうしてだ?」


 リーシャが何か隠しているのは明確だった。だがそれは向こうの世界では話しにくい内容だったのではないか、そう思った俺は深くは追求しなかった。


「えっと⋯⋯⋯⋯それがですね。⋯⋯⋯⋯ミルティさんが嘘をついていたんです」


「っ!! ⋯⋯⋯⋯⋯もしかしてリーシャがミルティさんを凝視した時か?」


「はい」


 つまりは『私をバルト様と一緒にしないでください。だいたい私、無称号者ですよ』この発言のどこかに嘘があったということだ。


「ギルドの受付嬢ですからトラブルなどを避けるため、嘘をつく事は良くあります。でも称号の話だったので少し気になったんです」


「確かにそれは気になるな⋯⋯⋯⋯」


 仮に無称号者の方が嘘だった場合、【鑑定サーチ】を隠している可能性もある。


 だが一緒にしないで、が嘘だった場合。

 バルト様と一緒にして欲しい! という恋愛ルート。

 もしくは、ミルティさんも【格闘家ファイター】という事になる。


 ⋯⋯⋯⋯⋯うん。確かにこれは気になってしまうな。


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