再会 / エリアN1205
申し訳ございません。このお話はプロットであり、未完成です。
2027年(令和9年)5月8日午前6時30分【太陽系第五惑星 大赤斑地上 ミツル商事多目的船『ディアナ号』】
(大月満 視点)
大赤斑上空の衛星軌道上に居る木星探査船『おとひめ』のイワフネ船長代理と連絡を取った俺達は、大脱出作戦で転移した自衛隊や2つの人類統合都市、ソールズベリー商会と合流すべく、見知らぬ海岸沿いを北上する事となった。
恐らく自衛隊側も周辺に偵察部隊を派遣する筈だが、行き違いを防ぐために此処の海岸に美衣子謹製であるモノリス状のビーコンが設置する事にした。
このビーコンは、ディアナ号とリアルタイムで接続して通信コードと現在位置、俺達が海岸沿いを北上する旨のメッセージを定期的に発信する予定だ。
「……この辺りでいいかな」
ビーコンの設置場所を見定める俺。
「あなたー!海水が気持ちいいですよー」
久し振りの海に機嫌が良いひかりさん。
食後の運動をすべく、全員がディアナ号から砂利だらけの浜辺へと降り立ってエメラルドグリーンの海水が波となって打ち寄せるのから逃れたり、緑青色の砂利を拾ってみたりとはしゃいでいる。
「瑠奈、ここにビーコンをよろしくね」
緑青色の砂利だらけの海岸に高さ1.2mの白いのっぺりしたモノリスをパワードスーツに搭乗した瑠奈が両腕で持ち上げて砂利の浜辺にザシュッと深く突き刺す様に埋め込んでゆく。
「これでOKっス!」
瑠奈が親指を立てて美衣子に合図する。
「大月家木星征服への第一歩を記したモノリスよ!」「ステキですわ美衣子姉様クエッ!」
感慨深い美衣子とキラキラした瞳で美衣子を称賛する結。
「それでは、ビーコンのスイッチオン!」
美衣子が道路やトンネルの開通式で使われる白い箱に取り付けられた赤いボタンをフンすと押す。
『わたし美衣子。今、見知らぬ海岸を北上するわ。会いに行くので連絡ください……』
んん?留守番電話にメッセージを残す感じかな?
『わたし美衣子。今、エリアN1205を北上中よ。会いに行くので連絡ください……』
……やけにリアルな留守番電話メッセージだな。
『わたし美衣子。もう近くに来たわ。連絡ください……』
――――――なんかメッセージ怖くね?
「……なんか妙に印象に残るメッセージだね」
精一杯のコメントを美衣子にする。
「ふふん。このビーコンはディアナ号と常時データリンクしていて移動する度にメッセージの現在位置とセリフが更新されてゆく優れモノよ」
「ステキ美衣子姉様」
どや顔の美衣子が薄い胸を張る姿を尊敬の眼差しで見つめる結。
あまり影響を受けないで欲しいのだが。
ひかりさんは白いモノリスをひとしきり眺めた後、俺に目配せすると、瑠奈を引き連れてディアナ号へと戻ってゆく。
え?俺に、何とかしろと?
うーん。
「美衣子。ビーコン設置ありがとうね。メッセージみんな聞いてくれるといいね」
いかん、日和ってしまった。
「フンス。これくらいお茶の子さいさいよ。結、細かい調整は全て優秀な妹に任せるわ」
「クェッ!わかりました美衣子姉様」
満足した美衣子は踵を返してひかりさんを追いかけるようにディスプレイへ戻ってゆく。
「……さてと。やるわ」
一人残された結が呟くと、おもむろに白衣から手拭いを取り出して額に巻くと、タブレット端末片手にモノリスの微調整を手早く行ってゆく。
「……こんなモノかしら」
数分後、結がタブレット端末に表示されたビーコンスイッチを起動させる。
『こちらはミツル商事所属ディアナ号です。通信コード――――――。現在地点N1205、海岸沿いを北上中。このメッセージを聞いたら返信されたし』
……おお、結。分かってるじゃん。
「流石結、よくやった」
思わず結の頭を撫でる俺。結も気持ちよさげに目を細めている。
「フンス。これくらいお茶の子さいさいのさいよ。クェッ!」
誇らしげに薄い胸を張る結が眩しく見える俺だった。




