親愛から戦慄・畏怖
2027年(令和9年)5月6日午後11時59分【茨城県東茨城郡大洗町磯浜通 料理旅館『肴や本店』】
17年前から美少女系某戦車アニメで有名な聖地である、茨城県大洗町の料理旅館『肴や本店』の道路すれすれまで降下した水素クジラは、深夜にもかかわらず、顎髭を使って器用に玄関口を開けて呼び鈴を鳴らす。
「はいはい。遅い時間にいらっしゃいませ〜。あらあら……ずいぶんと大きなお客様だこと」
緑色に輝く不思議な霧と共に得体の知れない存在が深夜に尋ねてきたのだが、ほろ酔い気分でおっとりと出迎える女将。
GWに行われた大洗アウトレットモールにおける美少女系某戦車アニメの声優お誕生日会と関連イベントが大成功に終わり、地元商店会の名士達が集まって打ち上げで祝っている最中だったので女将は気分が朗らかだったのかもしれない。
『ココノ海鮮丼ガ美味シイトキイテヤッテキマシタ』
玄関口に少しだけ口を近づけて話す水素クジラ。
「まぁ。ありがたいこと。それでクジラさんは海鮮丼は所望しているのですね?」
ひんやりした緑色の霧を含んだ空気を感じながらおっとりと受け答えしつつ、玄関外側の庇に付けた防犯カメラで水素クジラの全体を確認しつつ、受付内側にある非常連絡ボタンをひっそりと押す。
この非常連絡ボタンは管轄警察の大洗地区交番と水戸警察署に伝わるようになっている。
『ハイ。海鮮丼大盛リデオ願イシマス』
「あらあらどうしましょう。お客様にご満足頂けると大盛りだと、大洗町全部のお米を使っても足りませんわ」
水素クジラの注文を聞くと、頬に手を当てて困惑する女将。
『ムムウ……。オ米ノ代ワリナラ、見ツカルカモ』
水素クジラが呟くと同時に料理旅館の敷地全体が紫色の光に包まれていく。
数十秒後、紫色の光が薄れた料理旅館敷地跡には、緑色の霧の中でぼんやりと光る紫色の空間だけが残されていた。
料理旅館を中心に緑色の濃霧が100mの範囲で立ち込め、濃霧に包まれた範囲の住民は深いこん睡状態に陥っていた。
――――――【太陽系第5惑星『木星』大赤斑上空4000Km 大気圏中層域 老舗料理旅館『肴や本店』】
秒速100m~200mの気流が雲海となって幾つもの筋を描いて流れていく大気圏中層域で、緑色の霧と紫色の光に包まれた老舗料理旅館は雲海の一つに乗って漂流していた。
本来であれば、地球の300倍以上となる濃密な大気圧で瞬時に圧し潰されるが、水素クジラが惑星磁力線を利用した磁力シールドを旅館一帯に展開しており、気圧や空気、重力は大洗町と殆ど変わりない。
この雲海は大部分が水と酸素で構成されており、周囲に在る水素やヘリウムが主成分の雲海とは異なっている。
雲海内部の気温は21度~27度で安定しており、長い年月に渡って安定した環境は原始的微生物から進化した生態系が形成されていた。
『コノ辺リ二オ米ガ有ッタ筈』
長い顎鬚で雲海内部を探索する水素クジラ。
『オヤ?何シテルノ?』
火星日本列島へ行く順番待ちの行列から待ち疲れて気分転換で気流散歩していた1体の水素クラゲ
が雲海で何かを探し回る水素クジラに近寄って声を掛ける。
『オ米二似タモノ探シテイル……海鮮丼大盛リ食ベタイカラ』
答える水素クジラ。
『オ米?海鮮丼……』
答えを聞くと傘をプルプルと振るわせて何かを思い出す仕草をする水素クラゲ。
『チョット一人ジャ思イ出セナイ……』
傘を震わせたり上下に振ったりしても何も出て来ない水素クラゲ。
『仕方ナイ。聞クカ』
水素クジラと自分一人で海鮮丼の独占を諦めた水素クラゲは、仲間に聞く事を決意する。
――――――此処ノ雲海、オ米二似タモノドレダッケ?海鮮丼ガ食ベラレルゾー!
水素クラゲが持つ感覚器官を総動員して周囲を漂うジュピタリアンに呼びかける。
――――――海鮮丼!?
『ソウダ。海鮮丼作ッテクレル人イルミタイ』
――――――何ダッテ―――!
『材料少ナイカラ早イモノ勝チダヨ』
――――――お米モドキ知ッテイルカラ!早ク締メ切ッテ!
『ハイナ。君ハ?』
――――――水素エイ24号ダ
『24号?』
――――――琴乃羽トイウ、三番目星ノ住人カラ与エラレタ名前ダ
『ワカッタ。24号、オ前デ締メ切リダ。早ク来イ』
――――――ガッテンダ―!
行列の片隅で闇空間を形成していたところを琴乃羽美鶴に見つかって行列から追い出され、大気圏中層域を彷徨っていた水素エイは、身体をひらひらと羽ばたかせると水色の雲海目指して雲海の合間を泳いで向かっていく。
【老舗料理旅館『肴や本店』】
自らのお誕生日イベントが盛況に終わり、打ち上げでひれ酒を飲みすぎた美少女系某戦車アニメの風紀委員役である声優の猪沢志桜里は、酔い覚ましで自室へ戻る途中の廊下で奇妙な光景を目にする。
「あれれ~?外が緑色???」
猪沢は特徴的な声で呟くと、二階の廊下から庭を見下ろす窓に近付く。
本来なら静かな月明かりに照らされた静かな太平洋が遠くに臨める光景のはずだったが、窓の外は緑色に光る霧と水色に染まる上空を物凄い速さで流れていく灰色の雲しか見えない。
雲の合間に浮かぶ巨大なクジラとエイが『採ッタドー!』と雄たけびを上げ、水素クラゲがやんややんやとはしゃいでいる光景が猪沢志桜里の視界に入る。
「うむぅ?……やっぱり今夜は飲みすぎたかも」
現実逃避気味に呟くと部屋に戻ってスポーツドリンクを飲んで布団に潜り込む猪沢だった。
猪沢をはじめとする宿泊客や旅館従業員、商店会名士達は、全館挙げての打ち上げ宴会で酔っ払っていたため、辺りの景色が緑色の霧と水色の雲海に包まれて、ジュピタリアンが歓喜の舞を踊っているのを視ても「竜宮城に来ちゃったよ!」と勘違いして更に盛り上がってしまうのだった。
☨ ☨ ☨
2027年(令和9年)5月7日午前7時【茨城県 東茨城郡大洗町磯浜通】
全身迷彩柄の防護服に包まれた化学防護部隊隊員がセンサーを使って緑色に光る霧に包まれた商店街周囲を慎重に捜索していた。
「アンコウ11から幌獅子へ状況報告。グラウンドゼロから出所不明の大気が放出中。組成は酸素と若干の水素・ヘリウム混合体。有害放射線は観測されず。尚、強力な磁力線放出を検知中。グラウンドゼロ内部へ突入しますか?」
全身を防護服で覆った化学防護部隊隊員が無線で報告する。
『こちら幌獅子。了解した。突入は待て』
コードネーム”幌獅子”=百里基地の緊急指揮所が応える。
老舗旅館が丸ごと消失した大洗町の現場は、緑色に光る霧の中心部で紫色に輝く異相空間が開放されたまま、霞ケ浦駐屯地から駆け付けた自衛隊化学防護部隊と警察、消防が取り囲むだけで為すすべがなかった。
周辺の住民と駆け付けた警察パトカーまでもが周囲を包む謎の霧によって昏睡状態に陥っていたため状況確認が遅れ、近隣の防犯カメラでようやく状況が把握されつつあった。
近隣の自衛隊百里基地に設置された緊急指揮所には防衛省から桑田防衛大臣が陸上自衛隊幕僚長を連れて陣頭指揮にあたり、茨城県知事に特殊災害派遣要請を出すよう連絡将校に指示するのだった。
朝のトップニュースでアニメ聖地である観光名所に出現した紫色に光る不気味な異相空間と周囲を包む霧をテレビ中継で視た国民の胸の中には、未知の世界とジュピタリアンへの畏怖の念が広がっていくのだった。
幸い、消失から8時間後に老舗料理旅館『肴や本店』は前触れもなく紫色に光る空間から実体化すると何事も無かったかの如く敷地内に出現した。
紫色の異相空間と周囲に漂っていた霧は旅館の出現と同時にかき消すように消失していた。
この光景に周囲で待機していた自衛隊化学防護部隊と警察や消防隊員が慌てて旅館内に飛び込むと、宿泊客や従業員を保護、自衛隊病院まで搬送したが皆酷く酔っているか昏睡状態のため理論的な事情聴取はすぐには困難だった。
尚、自衛隊・警察の合同鑑識係は旅館厨房と冷蔵庫を確認したが、目ぼしい食べ物は全く残っていなかったという。
また、たどたどしい字で『ゴチソウサマデシタ』と殴り書きされたメモと共に、旅館玄関口に材質不明の金属製インゴットが大量に山積みされていた。
金属製インゴットはつくば市の防衛省防衛技術研究所(技研)で分析された結果、高純度の水素金属であることが判明した。
この量の金属塊を生成するのは現時点に於いて地球人類の技術力では極めて困難とされている。
この出来事は日本国政府からMCDA加盟各国へ直ちに伝えられ、共有された。
☨ ☨ ☨
2027年(令和9年)5月7日午前8時【火星アルテミュア大陸西海岸 ユーロピア共和国首都ニューガリア 首相府】
火星北極の寒気からくる北風で肌寒く感じる早朝のユーロピア共和国首相府では、早朝にも関わらず多くの職員が首相執務室を慌ただしく出入りする中、壁掛けの液晶ディスプレイに映し出された光景に息を吞み、思わず足を止める者もいる。
「……アンビリバボー。有り得ない」
液晶ディスプレイの前で足を止めた首相府職員の一人が呟く。
『日本の北陸地方上空に出現したジュピタリアンと思われる水素クジラと水素クラゲの群れが目撃されました。日本当局は国民にジュピタリアンには安易に近づかない様、警戒を呼び掛けています』
ユーロピア共和国国営放送2ニュースでは、飛行する水素クジラが後ろに数珠つなぎの如く連結した水素クラゲ群を引き連れながら水素とヘリウムからなる緑色の”潮”を吹き上げて悠々と飛行している姿を映していた。
「……吞気に観光需要増加で国力増強だとほくそ笑むレベルではありませんね」
顔を強張らせて呟くクロエ・シモン首相補佐官も同様の反応だった。
アッテンボロー博士から報告された木星大赤斑最深部で地平線まで続くジュピタリアン行列の映像と合わせて視るジャンヌ・シモン首相。
「日本の木星探査隊によると、推定で5億以上のジュピタリアンが大赤斑に集結しており、さらに億単位の群れが幾つも大赤斑へ向かっているのをマルス・アカデミー作業船団が観測中との事です」
「何よそれ!こんな数のジュピタリアンをコントロールなんてナンセンスだわ!」
首相府の秘書官がジャンヌ首相に報告すると、ソファーに座っていたジャンヌは両手を挙げて降参ポーズになると背もたれに寄りかかって天井を仰ぐ。
「ウラニクス湖も含めた全ての異相空間を常時開放にしつつ、新たな異相空間設置場所を今の10倍は増やさないと事態の収拾は覚束ないでしょうね」
ジャンヌと共に映像を視ていたクロエ・シモン首相補佐官が指摘する。
「ムッシュ岩崎とケビンに至急ホットラインを。無制限のジュピタリアン受け入れを彼らにも受け入れてもらわないと」
MCDA(火星通商防衛協定)緊急首脳協議開催を指示するジャンヌ首相だった。
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――――――【火星日本列島 富山県立山市上空】
民放テレビ局のテレビカメラが取材ヘリコプター前方500mを遊弋する水素クジラを映している。
『前方を悠々と遊泳する巨大クジラは全長100m以上はありそうです――――――これは”水素クジラ”と呼ばれるジュピタリアン種の一つです。
政府による突然のジュピタリアン全国自由訪問解禁宣言の1時間後、富山湾上空にジュピタリアンの自由訪問第一陣が出現しました。
関係筋によると、富山県の旬の水産物”白エビ”と”ホタルイカ”目的の来訪との事です。
そして……水素クジラ後方に連なるように続いているのは多数の水素クラゲです――――――
スタジオのミネヤさん……私は夢を見ているのでしょうか?』
非現実的な光景を目の当たりにしたレポーターが茫然して途切れがちになりながらも、ジュピタリアン来訪をお茶の間に伝えている。
富山湾上空を悠々と飛ぶ水素クジラに引率されるかの如く集団で後に付く水素クラゲと距離を置いて警戒する自衛隊戦闘機が住民の撮影した動画がSNSで拡散されると、日本列島に住む人々は困惑から畏怖へ変わっていくのだった。
MCDA加盟国緊急協議直後に各国がジュピタリアン自由訪問解禁を公表し、直後に火星日本列島の過疎化した農村や漁村で数体単位で水素クラゲや水素蟹が出現し、地元の食堂に来訪する事態が頻発していた。
日本国政府から緊急速報でジュピタリアンの全国自由訪問が宣言されており、一度目の来店はせいぜい数体なので微笑ましい惑星間交流の一幕と言えた。
だが数時間後に行われた2回目となる自由訪問は、木星側での口コミでジュピタリアンが大挙して来店、食堂と住民の食材確保で東奔西走する羽目となる自治体が続出、迎え入れる地元のジュピタリアンを見る目は次第に戦慄と畏怖へと変わっていくのだった。
☨ ☨ ☨
――――――【火星アルテミュア大陸中央部 ウラニクス湖 多目的船『ディアナ号』】
満とひかり、美衣子達三姉妹は操舵室内のホログラフィックモニターに映る岩崎総理大臣のジュピタリアン自由訪問解禁宣言を視ていた。
『今回の事態に際し、我が国は国家非常事態宣言はいたしません。
確かに、見慣れない生物が我が物顔で我が国領土、領海、領空を闊歩する事になるのですから国民の皆様が不安に思うのは当然のことでしょう。
……しかし木星原住生物群は我々人類の敵である火星原住生物巨大ワームとは違い、我が国固有の食文化を理解しこよなく愛する知性と理性を持っています。
我が内閣はジュピタリアンと交流を重ねる事でお互いにとって益の在る関係を築く方針であります。
勿論、最初のうちは問題事が起こるかもしれません。しかし我々には木星探査隊のほか、マルス・アカデミーと良好な関係を築いている企業が存在しているのです。これを活用しない手はありません!
今回の事態は我が国や列島各国を始めとする地球人類社会にとって、ピンチではなく”チャンス”に他ならないのであります!』
「……かなり無理筋な説得にも思えるけど、こうでも言わないと駄目だよなぁ」
少しため息をつくと、思いつめたような顔で呟く満。
「そうですねぇ……不透明な状況では誰かが”大丈夫!”と言って欲しいものですよぅ」
満の呟きにひかりが応える。
『木星には現在の生き残った地球人類が使用するエネルギーの数千年分があるのです。
また先日の木星探査隊中間報告にある通り、大気圏中層には莫大な食用に適する有機物の存在が明らかになっております。
厚生労働省からの報告によれば、国立感染症研究所(NIID)の検査では人体への影響はないとの事です。もちろん食べ過ぎなければの話ですが――――――』
岩崎総理大臣の解禁宣言が続く中、満は一つの決意をする。
「今回の事は私の見通しが途中から甘かったと思う。思い切った筈なんだけれどね……。やっぱりダメダメだ。だからといって、それで済ませていては昔のダメな自分の繰り返しだよ。
ダメダメだけど当事者として最後まで関わろうと思う……。
美衣子。今からチューブワームの長と直談判しようと思うけどディアナ号ごと異相空間を通って木星に行けるかな?」
「行けるわ。でもお父さん。直談判で何を話すの?」
依頼する満に尋ねる美衣子。
「ここに居る5億6000万体を無制限に日本列島へ行かせるよりも、チューブワームの長の力を借りて此方が統率しながら案内したほうがいろいろと物事が捗りそうな気がするんだよ」
「いろいろと物事……ねぇ」
思案顔のひかり。
「……わかった。今から準備する。結、瑠奈も手伝って」
「分かったわ姉様」「了解ッス!」
頷いた美衣子が結や瑠奈に協力を求め、頷く結と瑠奈。
「じゃあ一応私から首相官邸に一言伝えておくか」
携帯電話で後輩だった春日官房長官に連絡を入れる満だった。
「働かざる者食うべからず、ですわねぇ……」
満の意図する何かに気付いたひかりは口元を緩めて満の横顔を見つめると、祖父である仁志野清嗣にメールでとある要件について相談したいと連絡をいれるのだった。
☨ ☨ ☨
――――――【島根県出雲市大社町 出雲大社 本殿屋根裏】
「国民恐怖指数が制限値ギリギリに届きそうですよ」
「こっちは日本列島地殻から反発磁力線が発生、増大中よ。火星地殻から放出される惑星磁力線を日本列島が受け付けなくなってきているわ」
冷や汗を額に滲ませる大黒天に弁財天が応える。
多くの日本国民が感じる不安感の高まりに、出雲大社で日本列島生態環境保護育成プログラムにおける緊急避難作動条件となる国民恐怖指数が急上昇し始めるのだった。
「えらいこっちゃ!このままだと確実に……」
「ええ。……転移してしまうわね」
大福様と弁財天は深刻な顔で頷きあうのだった。
「美衣子様に連絡せねば!」
大黒様が打出の小槌を虚空で高鳴らせて日本列島に散らばる800万の神々と電子回路を住処とするAIに非常事態発生を連絡するのを横目にウラニクス湖に居る美衣子へ至急連絡を入れるのだった。
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――――――【東京都千代田区永田町 首相官邸】
「木星からの報告によると、日本列島訪問を熱望するジュピタリアンの制御が不能になりつつあるそうです」
「それが日本各地の上空に現れた自由訪問解禁で現れた水素クジラや水素クラゲのパックツアーですか……」
春日官房長官の報告に応える岩崎総理大臣。
岩崎が視ているテレビは、富山湾上空を飛ぶ水素クジラと水素クラゲの群れの周りをスクランブル発進した航空・宇宙自衛隊のF15戦闘機やアパッチ対戦車ヘリコプターが2機編隊で警戒飛行している様子が民放テレビ局のヘリコプターから撮影されていた。
「段階的に国民の理解を浸透させていく予定でしたが……」
「猶予はありませんね。向こうから押しかけてくるのをいつまでも押し留めたり、警戒監視し続ける事は無理でしょう……」
春日の呟きに岩崎が応える。
手詰まり感が漂って沈黙した首相執務室に一本の電話が入る。
「総理!ミツル商事の大月社長からです。これからチューブワームの長に直談判するとの事です!」
春日官房長官が告げる。
「春日君。私は今直ぐウラニクスへ向かうよ。私も直談判に参加します」
決然と言う岩崎総理大臣。
「分かりました。首相官邸の事は私が対応します」
頷く春日官房長官。
春日の応えに頷いた岩崎はその場で自らの携帯電話で大月社長へ連絡を取る。
「もしもし。岩崎です。チューブワームの長との直談判には私も参加させてもらえませんか?ええ、ええ、はい。後30分でそちらへ着きますので」
岩崎の会話を聞いていた首相警護官が急いで随行の自衛官に耳打ちすると、自衛官は市ヶ谷の防衛省に連絡を取り、待機中のF35‐B複座型戦闘機を首相官邸に呼び寄せるのだった。
ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m
【このお話の登場人物】
・大月 満=ミツル商事社長。
・大月 ひかり=満の妻。ミツル商事副社長。
*イラストはイラストレーター 七七七 様です。
・大月 美衣子=マルス・アカデミー・日本列島生物環境保護育成プログラム人工知能。
*イラストは絵師 里音様です。
・大月 結=マルス・アカデミー・尖山基地管理人工知能。マルス三姉妹の二女。
*イラストは絵師 里音様です。
・大月 瑠奈=マルス・アカデミー・地球観測天体「月」管理人工知能。マルス三姉妹の三女。
*イラストは絵師 里音様です。
・春日 洋一=日本国救国暫定臨時政権の内閣官房長官。元ミツル商事社員。満の後輩にあたる。
*イラストはイラストレーター 倖 様です。
・岩崎 政宗=日本国内閣総理大臣。澁澤政権時の内閣官房長官。
・ジャンヌ・シモン=ユーロピア共和国首相。戦闘機も操る。
*イラストは、イラストレーター七七七様です。
・クロエ・シモン=ユーロピア共和国首相補佐官。妹のジャンヌ・シモンはユーロピア共和国首相。
*イラストは、イラストレーター七七七様です。
・猪沢 志桜里=声優。美少女系某戦車アニメでは風紀委員を演じている。声が特徴的。




