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転移列島  作者: NAO
アナザーワールド編 アナザーワールド
403/462

出動要請

・宇宙空母『サラトガ』=”北米大陸救出作戦”において、オハイオ級戦略原子力潜水艦を月面マルス・アカデミー施設で改装した。F45宇宙戦闘機を搭載。大気圏突入能力はない。


・巡洋艦『インディアナポリス』=”北米大陸救出作戦”において、ロスアンゼルス級攻撃型原子力潜水艦を月面マルス・アカデミー施設で改装した。大気圏突入能力がある。

――――――イスラエル連邦軍による人類統合第12都市『氷城ハルピン』攻略作戦開始12時間前


【月面都市『ユニオンシティ』宇宙ターミナル 送迎ロビー】


「……ちょっと早すぎませんかね」

「ヴォヴォ(ああ)。ビビィービ(どういうことだ!)!」


 両舷に設置された補助ロケットからオレンジ色の噴射炎を吐き出しながら上昇していく巨大な宇宙空母と巡洋艦を見上げる東山龍太郎地球方面大使とユニオンシティ代表ソーンダイク。


 東山の呟きに答えたソーンダイクが腹立たし気に枝をしならせて身震いすると、樹木化した身体から木の葉が数枚舞い落ちる。

 ユニオンシティ代表の彼が掌握している自軍組織から報告を受けていないのだから怒るのも無理はない。


 ライトアップされた宇宙ドックから、オハイオ級戦略ミサイル搭載原子力潜水艦を7ベースに改装した全長170mの飛行甲板を上下に組み合わせた艦型が特徴的な宇宙空母『サラトガ』と、ロスアンゼルス級攻撃型原子力潜水艦を改装した”空飛ぶ箱舟型”巡洋艦『インディアナポリス』が漆黒の宇宙空間へ飛び立って彼方に浮かぶ灰色と青の惑星へ向かっていく。


「ソーンダイク代表閣下、東山大使、申し訳ございません。タカマガハラのイスラエル連邦軍司令部が『サラトガ』に急遽出動要請をしたのです。”東アジア上空に不穏な動き有り。艦載機での偵察求む”と。

 時間がありませんでしたので護衛の巡洋艦1隻だけを付けて出撃させました」


 二人を出迎えた宇宙航行管制室の当直司令が恐縮した体で説明する。


 本来であれば東山とソーンダイクは、人道支援目的で活動する自衛隊第7師団を支援する目的で出撃する日本国自衛隊とユニオンシティ軍の統合任務艦隊を非公式に激励しようと予定時刻よりも早く到着したつもりだった。


「イスラエル連邦は未だに地球連合防衛条約から離脱ブレグジットしているというのに。遠く離れた火星各国の目が緩いのを利用しているのでしょうか」

「ビビビラル(イスラエルは)、ヴァヴァギギ(地球盟主のようです)」


 東山の嘆きにソーンダイクは幹の中程に備え付けられた電光掲示翻訳機で応える。


 不意に頭上から轟音が鈍く響く。


 ターミナルロビーに集まっていた人々が天井を見上げると、透明な高硬度樹脂の窓の向こうに着陸態勢に入った別の空飛ぶ箱舟型巡洋艦がターミナルビルを通過していく。


「5番艦『ミシガン』です。西海岸ネオ・ロサンゼルスと極東タカマガハラから園芸用肥料や害虫駆除薬等の補給物資を搭載しています」


 当直司令が説明する。


「ビビビラル(イスラエル)、ボウブブ(無しには)、バララライ(生きられない)」


 翻訳機で応えるソーンダイク代表の枝葉は心情を表しているのか萎れているように東山の目には映るのだった。


 高硬度樹脂からなる巨大ドームで有害な宇宙放射線から守られている月面都市ユニオンシティだが、5万人を超える国民の過半数はシャドウ帝国の電磁波攻撃で樹木化した人々であり、地球産の優良な肥料と有効な害虫対策は死活問題と言っても過言ではない。


『我々ハ、イツカ必ズちからヲ取リ戻ス……』


 翻訳機を通さず、幹に浮き出た無表情な顔から直接絞り出すように話すソーンダイク代表だった。


          ✝          ✝          ✝


2027年(令和9年)5月5日午前5時30分【地球東アジア 人類統合第12都市『氷城ハルピン』西側上空】


 どんよりと立ち込める火山灰混じりの雪雲が立ち込めるハルピン上空では、イスラエル連邦軍パペット中隊と第12都市防衛軍機動戦闘艇”カゲロウ”の死闘が続いていた。


 一直線に突入を試みるイスラエル連邦軍機に対し、第12都市防衛軍は多数の地対空ミサイルと短距離レーザー搭載型”新型カゲロウ”を投入して都市上空への侵入を阻んでいた。


 パペット中隊は敵機に相討ちの如く肉薄して次々とカゲロウを撃墜していくが未だ都市上空に展開されているシールドは有効であり、空対地ミサイルやレールガンによる砲撃でも都市に被害を与えていなかった。


 膠着する空中戦の下、地上では羅大佐率いる第11都市『成都』人民防衛部隊が第12都市防衛軍戦車部隊の迎撃を搔い潜って間もなく都市外延部に到達しようとしていたが、後続のイスラエル連邦軍メルカバ戦車大隊は何故か成都人民防衛部隊を素通りさせた第12都市防衛軍エイブラムス戦車に行く手を阻まれて至近距離の砲撃戦を展開する状況に陥っていた。

 

 東側を攻略している日本国自衛隊とは強力な電波障害で一切の連絡が途絶えている。 


 混沌としていく戦況にイスラエル連邦軍司令官マイケル・バーネット中将は、月面から宇宙空母『サラトガ』が到着した段階で衛星軌道上とベングリオン双方から核攻撃を行う事を決意するのだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】

・東山 龍太郎=地球方面特命全権大使。ひかりの大学時代の同級生。

・ソーンダイク=月面都市『ユニオンシティ』代表。元アメリカ合衆国宇宙軍宇宙飛行士。シャドウ帝国の電磁波攻撃により大半の住民と共に樹木化人類となる。

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