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転移列島  作者: NAO
アナザーワールド編 アナザーワールド
401/462

ジャミング

2027年(令和9年)5月5日午前4時15分【第12都市北東 40Km上空 航空・宇宙自衛隊 強襲揚陸護衛艦『ホワイトピース』】


「名取艦長。イスラエル連邦軍旗艦『ベングリオン』から通信。『我、突撃ヲ開始セリ』」

通信担当オペレーターが報告する。


「始まったか。第12都市にハープーン対地対艦ミサイル発射」


 名取艦長が命令すると、ホワイトピース全部甲板のVLS(垂直発射機)からハープーン対地対艦ミサイルが白煙を曳いて西の彼方へ飛び去って行く。


「第12都市から複数のバンデット飛来!速度マッハ0.8」


 多数の敵を意味する”バンデット”という表現で報告するレーダー担当オペレーター。


 英語でも分かりやすい表現を使うのは、ホワイトピースが収集したデータは指揮統合システムが一時的にリンクしているイスラエル連邦軍にも伝わるからである。


「対空戦闘始め!高瀬、ソフィーのパワードスーツは前方からの賊を可能な限り撃墜。撃ち漏らしはホワイトピースの近接防御システムで対応する」


『ラジャ』『盾になるわ』


 名取艦長の指令に応えてホワイトピース前方に展開して50mmガトリングガンとミサイルランチャーを構えるサキモリとPS21型パワードスーツ。


「接近中の賊は”カゲロウ”タイプと識別。数200」

「全て叩き落せ!こいつらを通すと陸自が苦戦する」


 レーダーオペレーターの報告を受けた名取が全力で撃墜するよう命令する。


蚊柱の様な奇妙な編隊を組んだカゲロウタイプが旋回しながらホワイトピースまで数キロに接近する。


 通常であれば十分過ぎる程の対艦ミサイル発射距離にもかかわらず、そのまま接近するカゲロウタイプ。


「敵の発砲無し」「敵編隊内部は旋回するカゲロウタイプで構成」「意味が分からん。何を考えているんだ」


 ざわめくホワイトピースのオペレーター達。


「しっかりしろ!自爆タイプだったら一機当たっても轟沈するぞ!対空戦闘始めっ!」


 オペレーター達を叱咤する名取艦長。


 ホワイトピースから短距離対空ミサイルや20mm近接防御火器が次々と発射され迫り来るカゲロウを撃墜していく。


「このカゲロウは小さくてお腹が膨れていて変な形ですね」

『無駄口叩いてないで銃を撃つことに集中しろ大尉』


 ソフィーの知るカゲロウ機動戦闘艇と異なるので首を傾げるが、高瀬中佐に注意されて50mmガトリングガンを連射してカゲロウタイプを撃墜していく。


 ソフィー操るサキモリの50mmガトリングガンがカゲロウタイプの胴体に命中するとあっけなく爆発四散していくが、爆炎よりもキラキラ輝くセラミック片が空中に広がっていく。


「チャフ!?」「そうらしい。だが今はこいつらを此処で落とすことに集中しろ」


 カゲロウタイプの異変にソフィーは気付くが陸自を空爆させない為に撃墜を優先させる高瀬。


 高瀬操る21型パワードスーツのミサイルランチャーがカゲロウタイプに命中して爆発すると、破片が飛び散りさらに周囲の数機も爆発して爆炎と鈍色のセラミック片が拡散されていく。


『マスター。センサー、通信機器にダメージですの』


 サキモリAIのパナ子が異常発生を知らせる。


「やっぱりこれは敵の罠ですよ中佐殿!」

焦るソフィー大尉。


「落ち着け大尉。敵の狙いはこの空域全体をジャミングさせることだろう。ケンはどう思う?」


 ソフィーに答えながらAIケンに訊く高瀬中佐。


『セラミック片は明らかにレーダー反応を無効化させるものだね。カゲロウタイプは編隊を組んで旋回する事で、爆発と同時にセラミック片が拡散しやすい様に配置されている』


 高瀬の考えを肯定する21型パワードスーツのAIケン。


『こちら艦長。各員は引き続き対空戦闘を継続せよ。カゲロウタイプ全機を撃墜せよ』


 ホワイトピース名取艦長から指示が出る。


「なんでわざわざ敵の思惑に乗るのよっ!」


 動揺するソフィー。


「ソフィー大尉。よく考えろ。第12都市は”我々”日本自衛隊や第2都市の敵なのか?」


 近くまで来た21型パワードスーツがサキモリの肩に手を当てると、高瀬が直接通信で語りかける。


「第12都市はイスラエル連邦軍と戦闘しているけど……あっ!こちらに来ているカゲロウタイプは何もしてこない」


 何かに気付くソフィー。


「よくわからんが、第12都市むこうさんの作戦なんだろう。だから今は名取艦長の指示に従うんだ」


 そう言うと機体から離れた21型パワードスーツがミサイルランチャーをカゲロウタイプ編隊のど真ん中に放って爆発させる。


 ますます多くの爆炎とセラミック片が戦場を覆う様に拡がっていく。



 同様の状態は第7師団進撃地点でも起きていた。


――――――同時刻【第12都市東方 40Km地点の幹線道路沿い 日本国陸上自衛隊第7師団】


 第12都市氷城ハルピンヘ至る幹線道路上では、陸上自衛隊第7師団の機甲部隊が接近するカゲロウタイプに向けて自走対空機関砲やスティンガー歩兵対空ミサイルを発射して撃墜していた。


 上空を航行している空中艦隊は陸上部隊上空で輪形陣を形成して大挙飛来したカゲロウタイプを

対空火器で迎撃していた。


 空中艦隊の効率的な対空防御システムが正常に機能した事で次々とカゲロウタイプは撃墜されていくが、次第に第7師団周辺の通信やレーダーシステムに障害が発生し稼働しなくなっていく。


――――――【ソールズベリー商会『大黒屋丸Ⅱ』】


 空中艦隊後方で情報収集に当たっていたソールズベリー商会でも異変を感知していた。


「商会長!レーダー、統合通信システム機能していません!ジャミングです」


 岬渚沙が報告する。


「マスター。コレハヤハリ」

「そうだね、レデイ。黄少佐が伝えてくれた作戦だね」


 クリスの問いに答えるソールズベリー。


「商会長。今からマルス・アカデミー通信システム起動でよろしいですか?」


 岬渚沙が確認する。


「ええ。予定通り、”私達の作戦”を始めましょう」


 答えるソールズベリーだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】

・ソフィー・マクドネル=パワードスーツ『サキモリ』パイロット。ユニオンシティ防衛軍大尉。日本国自衛隊 第零特殊機動団に出向中。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター 鈴木 プラモ様です。


・パナ子=パワードスーツ『サキモリ』機体制御システム担当人工知能。民間企業PNA総合研究所の人工知能。

挿絵(By みてみん)

*イラストはお絵描きさん らてぃ様です。


・高瀬 翼=日本国自衛隊 統合幕僚監部所属 第零特殊機動団長。階級は中佐。乗機は菱友重工が開発した21型パワードスーツ(H21-PS)。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター 鈴木 プラモ様です。


・ケン=21型パワードスーツに装備された機体制御AI。

 公益財団法人 理化学研究所(理研)が開発した人工知能で、美衣子達三姉妹がセッティングしたお見合いでパナ子とゴールインした。天体観測を生かした遠距離射撃が得意。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、しっぽ様です。


・ソールズベリー=英国連邦極東企業『ソールズベリー・カンパニー』商会長。元英国連邦極東外務大臣。クリスを引き当てた事で独立起業した。

挿絵(By みてみん)

イラストは七七七 様です。


・クリス=ソールズベリーの助手。大月家結婚披露宴の大ビンゴ大会で賞品としてソールズベリーが引き当てたマルス・アンドロイド。

挿絵(By みてみん)

イラストは七七七 様です。


・岬 渚紗=海洋生物学博士。ソールズベリー商会所属。元ミツル商事海洋養殖・医療開発担当。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーターさち様です。


・名取=航空・宇宙自衛隊強襲揚陸護衛艦『ホワイトピース』艦長。大佐。

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