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転移列島  作者: NAO
アナザーワールド編 アナザーワールド
377/462

シャーウッド

【地球アジア地区 旧中華人民共和国 東部地域】


 人工日本列島『タカマガハラ』エリア・対馬から出撃したマイケル・バーネット陸軍中将率いるイスラエル連邦大陸派遣軍は、朝鮮半島西側の黄海を北上、山東半島、遼東半島を迂回して旧遼寧省営口市に上陸、高速道路15号線に沿って北上し瀋陽市に到着した。


 イスラエル連邦軍は瀋陽市で"保護"した人類統合第11都市『成都』から進軍して待機していた羅大佐率いる人民防衛部隊と合流、人民防衛部隊を先頭に吉林省松原市まで進軍した。


 合流地点となった瀋陽市は人類統合第12都市『氷城ハルピン』まで200Kmに位置しており、イスラエル連邦軍は瀋陽市を前進拠点として攻略準備を進めていくのであった。


 人類統合第12都市『氷城ハルピン』がイスラエル連邦軍の総攻撃を受けるのは時間の問題だった。


          ☨          ☨          ☨


2027年(令和9年)4月23日【アジア地区 旧中華人民共和国黒竜江省 牡丹江郊外日本国陸上自衛隊第7師団 一時駐屯地 】


 人類統合第12都市『氷城ハルピン』まであと300Kmの地点に到達した陸上自衛隊第7師団は、飛来してきたイスラエル連邦軍連絡艇と接触していた。


「シャドウ帝国最後の残党である人類統合第12都市を攻略する為に、イスラエル連邦軍本隊が瀋陽市から北上中です。

 日本国自衛隊におかれては、第12都市の防衛軍を攪乱する為に東方から包囲攻略戦に参加して頂きたい。これは攻略軍司令官マイケル・バーネット陸軍中将の強い要請です」


 イスラエル連邦の五芒星を記した空陸両用機動戦闘艇”カゲロウ”から降り立った連絡将校が、出迎えた鷹匠准将に伝える。


「貴国の立場はわかりました。ですが、我が師団は貴国からの”人道支援要請”を受け、地球連合防衛軍司令部と日本国総理大臣の命令で作戦行動をしている。

 第12都市の攻略は現在の命令には含まれておりません。

 また、地球連合防衛条約から離脱ブレグジットしている貴国との共同作戦参加は本職の権限を超えています」


 連絡将校に応える鷹匠准将。


「……そもそも、何故最初から第12都市を敵視、攻撃しようと考えるのですか?

 エリア51亡き今は、各都市に独自の考えを持つものが居るのではありませんか? 

 貴国が第11都市『成都』を”保護”した様には出来ないのでしょうか?」


 シャドウ帝国軍が使用するカゲロウの機体に記された五芒星を指し示しながら鷹匠が訊く。

 イスラエル連邦軍はシャドウ帝国軍の兵器を使いこなしているのだと内心驚きながら。


「……ふぅ。相変わらず日本人は情勢認識が甘いですね。失礼いたしました。

 第12都市に対しては幾度となく”あらゆる電子的手段”で交信による対話を求めてきましたが、一度も応答を受けておりません。既に7回、地上から接触を試みても武力で撃退されております。

 奴らは我々に敵対していると判断せざるを得ません。第11都市『成都』を我々が”救済保護”した様にはいかないのです」


 肩を竦めて答える連絡将校。


「貴国がその様な状況に直面しているとは……」


 腕を組んで考え込む振りの鷹匠准将。


「我々イスラエル連邦は、人工日本列島タカマガハラを拠点にした地球復興を推し進めています。

 ユーラシア大陸極東地区である此処もいずれ我が連邦の領土となるにあたり、イスラエル連邦領土に敵対勢力を存在させておくわけにはいかないのです。

 此方からの要請はお伝えした通りです。貴国の賢明な判断を期待します」


 連絡将校は鷹匠准将に再度力説するとカゲロウに乗り込むなり、さっさと西へ飛び去っていくのだった。


「……”あらゆる電子的手段”とは、電子戦闘機によるジャミングも含まれるのかねぇ」


 西へ飛び去るカゲロウを見送りながら、皮肉気に呟く鷹匠准将だった。


「いやぁ~バレないものですね」

「私達の偽装能力に恐れ入ったか!なのだぞっ!っと」


 冷や汗を流しながらホッとするソールズベリーと自慢げな黄星舞。


 移動してきた第2都市『バンデンバーグ』は、道中で採取した森林を未だに丸ごと都市内部に乗せていた。


「まぁ、”動くシャーウッド”の伝承もありますしね。そろそろ本格的にこれからの動きを皆さんと詰めていく必要がありますね」


 肩を竦めるソールズベリーだった。


          ☨          ☨          ☨


――――――【ハンカ湖畔 移動型人類統合第2都市『バンデンバーグ』】


 火星日本列島の英国連邦極東本国のケビン首相からあらためて第2都市バンデンバーグ住民の保護・救出の依頼を受けたソールズベリー商会は、第2都市バンデンバーグに関係者を集めて脱出作戦会議を主催していた。


「イスラエル連邦軍が第12都市『氷城ハルピン』に本格攻撃を始める前に、脱出出来れば大成功です」


 最初に勝利条件を商会長のソールズベリーが提示する。


 会議に出席しているメンバーは、第12都市の周暫定代表、黄少佐、黄星三姉妹、第7師団長の鷹匠准将、ソールズベリー商会の岬渚紗、クリスである。


『イスラエル連邦軍に抵抗するという選択肢は無いのですか?』


 訪問者黄星輝美が形成した秘匿電波通信機器を使用してオンライン参加していた周暫定代表が確認する。


「残念ながら、選択肢としては現実的ではありません。第2都市防衛部隊と我が第7師団の全力を持ってしても及ばないでしょう。

 我が師団は継戦能力が弱いのです。輸送艦の弾薬や燃料が尽きればそこで戦闘不能となりますから。もっとも、これは守護神黄星三姉妹の参戦が無い場合ですが」


 鷹匠准将が慎重に答える。


「守護神黄星三姉妹の皆さんは、二つの都市の惑星間転移にエネルギーを注力して頂く予定ですから参戦は出来ないでしょう」


 ソールズベリーが説明する。


「最善の選択肢として戦場からの離脱になるのは分かりました。ですが、脱出するにしても何処の惑星へ脱出すれば良いのでしょうか?」


 鷹匠が会議参加者に問いかける。


「私達人類統合都市住民の存在は”他の人類の方”からすると極めて異質でしょう。価値観一つとっても相互理解をするには相当な時間がかかるでしょう……」


 悲観的な見方をする黄少佐。


「黄少佐。どれくらい時間がかかろうとも、共存する意志さえ貫ければ道は必ず開けます!」


 岬渚紗が反論する。


「岬さんの意見を尊重します。だが今はその相互理解を図る時間が無きに等しい。

 共存する意志を持った者同士で対話を進めるうえで、出来ればイスラエル連邦の影響が及ばない所が望ましい」


 鷹匠准将が意見する。


「その考えで行くと、イスラエル連邦の影響力が及ぶ地球、月、火星は無理ですね」

ソールズベリーが指摘する。


「となると、フロンティアは五番目の星”木星”しかないのだぞっ!と」

ニコリと笑う黄星舞だった。


「そうなると遠方への移動に当たっては薬品補給が不可欠。やはり、第12都市のホストコンピューターにアクセスを試みる必要があります」


 黄少佐は第12都市防衛司令部が健在していることに注目し、薬剤解析に必要な情報がホストコンピューターに記録されているのではないかと期待する。


「では薬剤解析の後、脱出作戦へ移行という流れですね。この線で計画の立案でしょうか商会長?」


 岬渚紗がソールズベリーに確認する。


「そうですねレディ。第2都市『バンデンバーグ』、第12都市『氷城ハルピン』の住民およそ合計18万人を脱出させる計画を立案しなければなりません。成功報酬が楽しみですね」


 ホクホク顔で答えるソールズベリーだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】

・ソールズベリー=英国連邦極東企業『ソールズベリー・カンパニー』会長。元英国連邦極東外務大臣。クリスを引き当てた事で独立起業した。

挿絵(By みてみん)

イラストは七七七 様です。


・岬 渚紗=海洋生物学博士。ソールズベリー商会所属。元ミツル商事海洋養殖・医療開発担当。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーターさち様です。


・黄星 舞=真世界大戦時、突如火星日本列島に出現した”介入者”。美衣子達マルス・アカデミー三姉妹と何らかの関連が有ると思われるが詳細は不明。美衣子に諭され罪滅ぼし中。元神聖女子学院小等部新任教師。守美の姉的ポジション。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、しっぽ様です。


コウ 浩宇ハオユー=人類統合第2都市『バンデンバーグ』住民代表。少佐。北米大陸西海岸の戦いで地球連合防衛軍ロイド提督と停戦を結んだ後、黄星三姉妹と行動を共にしている。第12都市出身。

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