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転移列島  作者: NAO
アナザーワールド編 アナザーワールド
370/462

夢物語【後編】

 陸上自衛隊、人類統合第2都市バンデンバーグ、人類統合第12都市氷城ハルピンとの打ち合わせは、イスラエル連邦との交戦可能性について議論が煮詰まった状況に陥っていた。


『ああっ!もう面倒くさいから、私達が飛び込んで”五芒の民”をみんな片付けちゃえばいいのだぞっ!』


 痺れを切らして物騒な事を口走る黄星輝美の周囲には紫電がバチバチと生じていた。


「ライちん。それだと美衣子祖母様グランマザーとの約束が守れないのですぅ」


 困り顔の黄星守美。


「じゃあいっそのこと皆を地球ここから持っていっちゃう?」


 長姉である黄星舞が提案する。


「ええっ!?ちょっと待ってください!それだと大規模陸地転移ですよね?また大変動が起きませんか?」


 慌てて第7師団長である鷹匠准将が心配する。


「”たかが惑星の質量調整”でそんなに慌てることですかねぇ……」

「……そんなことって」「……正気なのか!?」

 

 首を傾げる守美を見て、この存在は”人ではない”事を実感して唖然とするソフィーと高瀬。


 ソールズベリー商会が交代で上空警戒に当たっているため、ソフィーと高瀬は地上でこの打ち合わせに立ちあっている。


 立ち合いはソフィーが希望し高瀬が名取艦長を通じて鷹匠准将の了承を得ている。


 アメリカ育ちのソフィーに人生経験を積ませる高瀬の親心である。普通の人生経験とは違いすぎるのだが、この場にそれを突っ込む者は居ない。


『単独惑星質量調整が駄目なら”惑星入れ替えっこ”してみるのだぞっ!』


 輝美が提案する。


「惑星間の均衡を取るのですね……どちらの惑星と入れ替えるのですか?」


 実は話に追いつけないが冷静さを装って鷹匠准将が訊く。


「移転させる対象と移転先との距離によりますけどねぇ~」


 黄星守美が答える。


「基本は日本列島を火星へ転移させた美衣子祖母様グランマザーの技術と同じだぞっ!と。惑星磁力線の作用と反作用を利用するのだぞっ!と。

 もっとも日本列島の転移は突然だったし、システムが稼働して46億年ぶりだったから相互転移対象を選ぶ余裕もなかったから仕方がないのだぞっ!と」


 黄星舞が説明する。


 原理としては地球の核から放射される惑星磁力線に"乗って"他惑星の磁力線を跳ね返す”バネの力”で第2都市と第12都市を跳ばす。


 地球磁力線が弱まった段階で他惑星の磁力線に切り替えて移動先の惑星磁力線が重力に変換するのに乗っかって行く。

 同じ方法で移動先の惑星からも“同質量の物体“を地球に引き寄せる。


「仮に火星だとしたら、地球磁力線の方が強いから跳ばすのは可能ですぅ~。

 ただ、転移先のポイント調整に物凄いエネルギーを使い果たしてしまうのですねぇ~」


 守美が説明する。


「出来ない事は無いけれども、此処で使うとしばらくの間はあっちこっちいったり、跳んだり刎ねたり、ガードする事も出来ないのだぞ!」


 輝美が忠告する。


「しばらくとは、どの位の期間でしょうか?」


 黄少佐が尋ねる。


「ほんの僅かだけど200年ちょっとだぞっ!」

「……は、はい」『……200年』


 僅かを強調する輝美だが、黄少佐の顔は強張り、周に至っては言葉が出て来ない状態だった。


「周代表閣下。我々は第12都市に合流する為に具体的な作戦を立案したいと思います。具体的手段が見つかり次第、連絡を取り合って交信しましょう。

 交信をこの周波数帯でお願します。盗聴対策は施しております」


『わかった』


 衝撃的な情報や”人外の存在”である黄星輝美の来訪もあって混乱しているであろう第12都市の心情を慮って本日の交信を切り上げる黄少佐だった。


          ♰          ♰          ♰


 第12都市との交信を終えた直後、黄星輝美が忽然と第2都市バンデンバーグ中央広場のテント下に現れる。


「向こうは周代表始め住民が気遣ってくれるけど、悲壮感半端無かったから此方が逆に疲れるたのだぞっ!」


 テントの近くでパワードスーツのシステムチェックをしていたソフィー大尉に近寄ってきた輝美は珍しく疲れた様子だった。


「ですよね~。お疲れ様でした」


 輝美に同情するソフィー。


「ともあれ、これで美衣子祖母様グランマザーとの約束”地球人類を救うこと”を守れるのだぞっと」


 舞が惑星間相互転移を行う意義を認める。


「黄少佐。我々は貴官達の選択に従います。要請されれば第12都市救援にも同行いたしましょう。

 ただし部下達に甚大な被害が生じる場合は、此方の判断で行動させていただきます」


 鷹匠准将が告げる。


「准将閣下のお申し出に感謝します。此方も住民達や守護神様と話し合った上であらためてお返事させていただく」


 黄少佐が応え、ホバークラフト装甲車に搭乗して住民達の待つ地下居住施設へ戻っていく。


「じゃ、私達も行ってくるのだぞっと!」「お話合いですぅ」『聞き届けるのだぞっ!』


 黄星三姉妹も口々に鷹匠達に別れを告げるとその場から忽然と消え去っていくのだった。


「ねぇパナ子さん。なんか割と普通に打ち合わせしましたって感じでしたが、惑星間相互転換ってそんな普通なんだっけ?」


 システムチェックを再開しながら首を傾げるソフィー大尉。


『……んな訳あるかいっ!ですの!』


 思いっ切り突っ込みを入れるとソールズベリー商会の“良識派“岬渚沙に連絡を入れるAIパナ子だった。


 案の定、連絡を受けた岬渚沙は驚愕すると惑星間携帯電話でミツル商事を通じてMCDA加盟国へ惑星間相互転換技術について照会するのだった。


「やっぱり今の地球人類には夢物語の技術だったのね……」


 後日、パナ子からMCDA加盟国の技術水準では逆立ちしても無理との検証結果を聞いたソフィー大尉は呟くのだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】

・ソフィー・マクドネル=パワードスーツ『サキモリ』パイロット。ユニオンシティ防衛軍大尉。日本国自衛隊 第零特殊機動団に出向中。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター 鈴木 プラモ様です。


・パナ子=パワードスーツ『サキモリ』機体制御システム担当人工知能(AI)。民間企業PNA総合研究所の人工知能。

挿絵(By みてみん)

*イラストはお絵描きさん らてぃ様です。


・黄星 舞=真世界大戦時、ホウライ世界から突如火星日本列島に出現した”介入者”。美衣子達マルス・アカデミー三姉妹と何らかの関連が有ると思われるが詳細は不明。美衣子に諭され罪滅ぼし中。神聖女子学院小等部新任教師。黄星姉妹の姉的ポジション。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、らてぃ様です。


・黄星 守美=真世界大戦時、ホウライ世界から突如火星日本列島に出現した”介入者”。美衣子達マルス・アカデミー三姉妹と何らかの関連が有ると思われるが詳細は不明。美衣子に諭され罪滅ぼし中。神聖女子学院小等部教育実習生。輝美の姉的存在。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、しっぽ様です。


・黄星 輝美=真世界大戦時、ホウライ世界から突如火星日本列島に出現した”介入者”。美衣子達マルス・アカデミー三姉妹と何らかの関連が有ると思われるが詳細は不明。美衣子に諭され罪滅ぼし中。神聖女子学院小等部6年生に転入。守美の妹的存在。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、しっぽ様です。


・ソールズベリー=英国連邦極東企業『ソールズベリー・カンパニー』会長。元英国連邦極東外務大臣。クリスを引き当てた事で独立起業した。

挿絵(By みてみん)

イラストは七七七 様です。


・鷹匠=日本国陸上自衛隊第7師団師団長。准将。一時的に強襲揚陸護衛艦『ホワイトピース』艦長を兼務。

コウ 浩宇ハオユー=人類統合第2都市『バンデンバーグ』住民代表。少佐。北米大陸西海岸の戦いで地球連合防衛軍ロイド提督と停戦を結んだ後、黄星三姉妹と行動を共にしている。第12都市出身。

・周平=人類統合第12都市『氷城ハルピン』暫定代表。

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