表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移列島  作者: NAO
アナザーワールド編 アナザーワールド
363/462

意趣返し

2027年(令和9年)4月18日午後3時【地球極東地区 旧ロシア沿海州 ナホトカ東方50Km上空】


 ナホトカ市街地を飛び立ったパワードスーツ2機と大黒屋丸Ⅱは西へ延びる幹線道路を上空から辿りつつ、牡丹江を目指していた。


「ないわー。……まさかのヘンテコ船と偵察なんてないわー。折角のクノイチ・デビューだったのに」


『ヘンテコ船ではないですの。私達"AIの神様"であらせられる美衣子神様と結神様が造りたもうた、神々しく究極な性能を持つ千石船ですの』


 げんなりするソフィーの発言を正すAIパナ子。


「そこよ!千石船が空を飛ぶなんてナンセンス極まりないわ!」

『結神様が造ったサキモリに乗るマスターに言われたくないでござるですの』


 突っ込むソフィーを論破するパナ子。


「……ぐぬぬ。正論で来るわね。今日はここまでにしておいてあげるわ」

『完全に負け犬のセリフですの』


 負け惜しみのソフィーに止めを刺すパナ子。


 ソフィーとパナ子がやり合う最中、突然サキモリが北へ方向転換する。


「ちょっ、ちょっと!方向違うじゃない。磁気異常?それとももうポンコツになったのかしら?」


 命令と違う方向に進むサキモリに焦るソフィー。


『この小娘は本当に口が悪いですの』


 額に青筋を立てたサキモリAIのパナ子がコックピット内に紫電を放つ。


「あばばばば」『アババババ』


 揃って感電してしまうソフィーとパナ子。


「……何をしているのだ大尉」


 呆れる高瀬中佐。


「……ちょっと痺れるコミニュニケーションを取っていたのです!普通です!」

「電撃を放って感電するコミニュケーションは普通じゃないぞ!」


 はぐらかし気味にあっけらかんと答えるソフィーに突っ込む高瀬。


「それで、なぜ北へ向かうか分かるか、ケン?」

『Pエネルギーセンサーが北方に磁力線の揺らぎを検知したんだよ』


 突っ込みを終えた高瀬の問いに短く答えるAIケン。


「つまり?」

『マルス・アカデミーと"同等の技術を持つ何者"かが居るね』


「……マジか」


 唖然とする高瀬中佐だった。


「こちら高瀬。ホワイトピース応答せよ。これより北へ向かう。マルス・アカデミーに類似した何者かを探知した。以上」


 ホワイトピースへ連絡した高瀬中佐はソフィー大尉と共に北方のハンカ湖へ向かうのだった。



【ソールズベリー商会多目的船『大黒屋丸Ⅱ』操舵室】


 先ほどまでパワードスーツの後を西へ飛んでいた千石船が急に針路を北へ変えていた。


「ちょ、ちょっとクリスさん!クリスさん?方向違いますよ!」

困惑するソールズベリー。


「マスター。フォースヲ信ジルノデス」


 危ない目付きで操舵輪を操るマルス・メイド・アンドロイドのクリス。


「ええっ!?いきなりのジェダイ!?フォースと共にあらんことを!」


 クリスがそう言うのならば、そうなのだろうとジェダイの合言葉をそらんじてみるソールズベリー。


「ちょっと!商会長までつられてどうするんですか!

 この先ハンカ湖畔に巨大ワーム群を探知。ワーム弾多数飛来します!」


 呆れる岬渚沙だったが、操作卓のレーダー探知機が巨大ワーム群を探知したので報告する。


「シールド多重展開!」

「アイ!俵1から6まで展開!」


 ソールズベリーの指示を直ぐに実行する岬。


「クリス。船をパワードスーツ後方へ。巨大ワームはパワードスーツに任せて私達は捜索開始します」


 矢継ぎ早に指示するソールズベリー。


『ミスターソールズベリー。パワードスーツ隊はこれより巨大ワームを討伐する。ソフィー大尉は先行せよ』

『ラジャ』


 高瀬中佐がソールズベリーに告げ、ソフィーは応答する。


 ホワイトカラーのパワードスーツ『サキモリ』が先行して巨大ワーム目掛けて急降下すると、高瀬のPS21型パワードスーツは後ろからミサイルランチャーを発射して援護しながら追随する。


 後退した大黒屋丸Ⅱは甲板の積み上げた俵から薄いグリーンをした電磁シールドを展開させて航行する。


 ハンカ湖畔では、20体の巨大ワームが湖の中央付近に直立してゆらゆら揺れながら、降下するパワードスーツを狙って次々とワーム弾をブベッと吐き出す。


「此処の巨大ワームは対空迎撃手段としてワーム弾を覚えたという訳なの!?」


 驚きつつ、ワーム弾を避けて眼前に迫る巨大ワームに50mmガトリングガンを撃つソフィー。


『アッテンボロー博士によると、一つの個体が獲得した技能は遺伝的に繋がりが無くても同じ種族の別個体が習得する事があるらしい。

 アルテミュア大陸上陸作戦、先の日本列島近海での迎撃戦で奴等の種族的経験値が蓄積した結果だろう』


 高瀬中佐が後方から支援射撃しながら説明する。


「……火星で経験した事が地球産ワームに伝承されるというの!?有り得ない!ナンセンスだわ!」


 にわかに高瀬の説明が信じられないソフィー。


「大尉が否定したところでワーム弾が減ったりはしないぞ。

 ソフィー大尉、ワーム群を叩くぞ。先陣を任せる。

 ソールズベリー商会は捜索続行せよ」


 高瀬が指摘しつつ、ソフィーとソールズベリーに指示を出す。


「ラジャ」


 高瀬に短く答えると、サキモリを急降下させて地面すれすれを飛びながら湖中央の巨大ワーム群に接近するソフィー。


 湖中央の巨大ワームは、リングを形成する様に並んでいる。


「イソギンチャクみたいだけど、優雅さの欠片もないわね」


 サキモリが構える50mmガトリングガンをズダダン!ズダダン!と短く連射するソフィー。


 50mm大口径弾の連射を食らった巨大ワーム群は中央に居た5体が細切れになって吹き飛んでいく。


「大尉に同感だ」


 高瀬が呼応してバックパックに装填していたミサイルランチャーを全部開放する。


 自動照準で発射された16連装ミサイルランチャーは、先行するサキモリ針路上に残る巨大ワーム群生き残りへ次々と命中して巨体を爆散させていく。


「邪魔なワーム群は片づけたわ。これで落ち着いて探すことが出来るわ。

 しっかり探すのよ!ヘンテコ船のポンコツ商会さん」


 巨大ワーム群の殲滅を確認したソフィーがソールズベリー商会に連絡する。


『安全確保に感謝します、レディ。……”ソールズベリー商会”商会長としてお礼申し上げます。

 ただし、当ポンコツ商会が地球に配送代行していたアニメ『スパイ・ファミリー』につきましては、ヘンテコ船ゆえしばらくは最新話のお届けが出来ないかと』


 自虐を込めて応答するソールズベリー商会長。


「ふぇっ!?」

悲報に涙ぐむソフィー。


『……ハァ。マスターハ大人ゲナイデス』


 ソフィーへ意趣返しするソールズベリーに呆れてため息をつくマルス・メイド・アンドロイドのクリスだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】

・ソフィー・マクドネル=パワードスーツ『サキモリ』パイロット。ユニオンシティ防衛軍大尉。日本国自衛隊 第零特殊機動団に出向中。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター 鈴木 プラモ様です。


・パナ子=パワードスーツ『サキモリ』制御システム人工知能。民間企業PNA総合研究所の人工知能。

挿絵(By みてみん)

*イラストはお絵描きさん らてぃ様です。


・高瀬 翼=日本国自衛隊 統合幕僚監部所属 第零特殊機動団長。階級は中佐。乗機は菱友重工が開発した21型パワードスーツ(H21-PS)。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター 鈴木 プラモ様です。


・ケン=21型パワードスーツに装備された制御システムAI。

 公益財団法人 理化学研究所(理研)が開発した人工知能で、美衣子達三姉妹がセッティングしたお見合いでパナ子とゴールインした。天体観測を生かした遠距離射撃が得意。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、しっぽ様です。


・ソールズベリー=英国連邦極東企業『ソールズベリー・カンパニー』会長。元英国連邦極東外務大臣。クリスを引き当てた事で独立起業した。

挿絵(By みてみん)

イラストは七七七 様です。


・クリス=ソールズベリーの助手。大月家結婚披露宴の大ビンゴ大会で賞品としてソールズベリーが引き当てたマルス・アンドロイド。

挿絵(By みてみん)

イラストは七七七 様です。


・岬 渚紗=海洋生物学博士。ソールズベリー商会所属。元ミツル商事海洋養殖・医療開発担当。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーターさち様です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ