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転移列島  作者: NAO
アナザーワールド編 アナザーワールド
361/462

捜索

2027年(令和9年)4月中旬【秘密軍事都市ユジュニ375から南西200Kmの幹線道路上 人類統合第2都市『バンデンバーグ』】


 ウスリー川沿いに南下する旧ロシア幹線道路上には、立ち枯れた樹木と雪でカムフラージュされた移動都市が小休止していた。


 幹線道路といっても大変動以降に人間が使用した事は殆どなく、大部分は雪と火山灰と氷に埋もれていたのだが、移動都市はウスリー川沿いに時折点在するロシア語道路標識や鉄塔などを辿りながらゆっくりと南下していた。


 ユジュニ375が星屑デブリ空爆で完全に破壊された事を確認したイスラエル連邦軍戦闘機はタカマガハラへ帰還していった。


 ようやく安全を確認した黄星三姉妹は小休止した移動都市に合流すると、星屑デブリ空爆を避けるため、移動都市となった人類統合第2都市『バンデンバーグ』の載った荷台を曳いて南下を始めるのだった。


 小休止の時間を使い、黄星三姉妹は黄少佐達バンデンバーグ住民にユジュニ375で遭遇した出来事について伝えるのだった。


 都市中央広場に置かれた即席貨物列車からは、ユジュニ375から収集したロシア製の武器弾薬、若干の鉱物資源が積み降ろされ並べられており、バンデンバーグ住民によって仕分けされ都市格所へ運ばれている。

 

「……そうですか。これが同胞らしき者達が使っていた機器ですか」


 黄少佐が黄星舞から手渡された通信機器を中央広場のテント下で組み立てると”受信オンリー”で起動させる。


 僅かなノイズの後、微かなビーコン音がスピーカーから聞こえてくる。


「おおっ!動いたのだぞっ!」


 目を輝かせた黄星輝美が黄少佐の傍で通信機器を見つめる。


「……これだけでは手掛かりはちょっと」


 通信機器の取扱説明書を見ながら悔し気に黄星舞に告げる黄少佐。


「……じゃあこれでどうだ、だぞっ!と」


 ひょいと身を翻して広場に置かれた即席貨物列車の荷台から箱型の装甲戦闘車を取り出してテント脇まで持ってくる舞。


 箱形装甲戦闘車はユジュニ375のパラボラアンテナ下に停車していたものである。


「最初から出して欲しかったです……」


 心中イラッとした黄少佐は毎度のボケに突っ込みを入れようかと思ったが、危険を冒して秘密軍事都市へ出向いてくれた事を思い出し、軽く息を吐いて心を鎮める。


 心を静めた後、箱型装甲戦闘車の外観と内部機器を見た黄少佐は舞に告げる。


「これは同胞の第12都市『氷城ハルピン』防衛軍のものではありません。

 ……というか、我々人類統合政府防衛軍で使っていた兵器系統とは明らかに異なるものですね」


 黄少佐が知る限りの人類統合政府防衛軍の装備は、旧ソヴィエト時代に開発・配備されたものが殆どである。

 この箱形戦闘車は内部に収容する人員の居住性や利便性に重きを置いた設計思想に思え、黄少佐からすると”使いやすそう”と思えるものだった。


 人類統合政府防衛軍の装備は”これはこういうものだから慣れろ”と言わんばかりに使用者の忍耐を強いるものだったなと思い出す黄少佐。


「なるほど~。ではでは、これは何処のお国製でしょうね~?」

首を傾げる守美。


 即席貨物列車の積み降ろしに飽きたのか、しれっと黄少佐との会話に参加している。


「という事は、黄少佐が言う所の”西側製”というのが一番しっくりくるのだぞっ!と」


 守美の問いに納得顔で答える舞。


「西側製だとすると、それは以前会談したロイド提督率いる地球連合防衛軍エイリアンという事でしょうか?」


 ヘッドセットをしながら通信機器の受信チャンネルを調整する黄少佐が訊く。


「ノンノン。美衣子祖母グランマザーとデーター交換した時の記録によると、あれは砂漠地帯で多用されるタイプだぞっ!と。

 そう言う事で砂漠地帯で西側製を使う”現存する国家”と言えば……」


 黄少佐に答える形で特大ヒントを仄めかす黄星舞。


「あちゃ~。やっぱりここでも”五芒の民”絡みですか~」

「ピンポン正解!景品のロシア軍糧食黒パン缶詰だぞっ!とキャビアを載せると美味しい、らしい?」


 舞のヒントで答えを言い当てた黄星守美が、あらあらまあまあと頬に手を当てて困惑しながら舞から黒パンの缶詰を受け取る。


 ”五榜の民”とは、美衣子祖母グランマザーのデータベースを探ることなく”既に”黄星三姉妹は基本知識として持っていた。


「んんん?でも舞姉の言う通りだとしても、どうして”五芒の民”は味方の装甲戦闘車にデブリを落とすのか分からないのだぞっ!」


 舞の見解に疑問を持つ輝美が首を傾げる。


「……そんなの決まっているのだぞっ!と。

 あの装甲戦闘車の搭乗員はどうでもいい存在—――—――捨て石だったと言う事だぞっ!と」


 輝美の目をしっかりと見つめながら答える黄星舞だった。


「……同胞を捨て石として使役する存在と我々は対峙しなければならないのですね」


 黄少佐の呟きを聞いた黄星三姉妹は沈黙するしかなかった。


 泥炭が乾いた砂埃と湿気を含んだ一陣の風がバンデンバーグ都市中央広場を吹き抜けていくのだった。


「……気持ち悪いのだぞっ」


 ボソッと呟く黄星輝美だった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】

・黄星 舞=真世界大戦時、突如火星日本列島に出現した”介入者”。美衣子達マルス・アカデミー三姉妹と何らかの関連が有ると思われるが詳細は不明。美衣子に諭され罪滅ぼし中。元神聖女子学院小等部新任教師。守美の姉的ポジション。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、しっぽ様です。


・黄星 守美=真世界大戦時、突如火星日本列島に出現した”介入者”。美衣子達マルス・アカデミー三姉妹と何らかの関連が有ると思われるが詳細は不明。美衣子に諭され罪滅ぼし中。元神聖女子学院小等部教育実習生。輝美の姉的存在。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、しっぽ様です。


・黄星 輝美=真世界大戦時、突如火星日本列島に出現した”介入者”。美衣子達マルス・アカデミー三姉妹と何らかの関連が有ると思われるが詳細は不明。美衣子に諭され罪滅ぼし中。神聖女子学院小等部6年生に転入していた。舞と守美の妹的存在。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、しっぽ様です。


コウ 浩宇ハオユー=人類統合第2都市『バンデンバーグ』住民代表。少佐。北米大陸西海岸の戦いで地球連合防衛軍ロイド提督と停戦を結んだ後、黄星三姉妹と行動を共にしている。第12都市出身。

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