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転移列島  作者: NAO
アナザーワールド編 アナザーワールド
357/462

ナホトカ上陸作戦

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター 鈴木 プラモ様です。

2027年(令和9年)4月16日未明【地球極東地区 旧ロシア沿海州 ナホトカ湾東方沖上空】


 どんよりとした雪雲と火山灰が入り交じった雲が一面に垂れ込めた空の下、日の丸を船体に掲げた空中艦隊がロシア沿海州に接近していた。


『こちらCIC(戦闘管制室)。対地上レーダーに反応。ナホトカ港湾地区及び西部海域に巨大ワーム群!』


「全艦隊空対地戦闘準備。艦載機は出撃態勢を取れ!」


 自衛隊空中艦隊旗艦『播磨』の艦橋で、CICの報告を受けた鷹匠准将が即座に指示する。


 空中艦隊各艦では非常ベルが鳴らされて搭乗員が配置につく。 


『CICよりミサイル警報!地上より多数のワーム弾飛来っ!』

「全艦隊対空防御シールド展開!最大出力!」


 旗艦『播磨』では情報参謀がCICが収集した各種情報を読み込んで艦隊に警報を発令する。


 輪形陣を形成した艦隊各艦から薄いグリーン色をしたシールドが展開され、近接防御火器の20mmバルカン砲が弾幕を艦隊外周に形成していく。


 ロシア沿海州港湾都市に接近した航空・宇宙自衛隊による50隻からなる空中艦隊は、港湾地区やナホトカ湾西側の岬に潜んでいた巨大ワームが放つワーム弾の一斉攻撃を受けていた。


 航空・宇宙自衛隊 強襲揚陸護衛艦『ホワイトピース』は、艦底にマルス・アカデミー・Pエネルギー転換システムによる電磁シールドを展開しながら5インチ・レールガンや空対地ミサイル、20mmバルカン砲を間断なく発射してワーム弾を発射する巨大ワームに対抗していた。


 強襲揚陸護衛艦『ホワイトピース』は、とあるロボットのアニメに痛く触発された美衣子と結によってマルス・アカデミー技術をフル活用してカスタマイズされており、旗艦『播磨』に代表されるマンスフィールド級戦艦よりも強力な電磁シールドに防護されている。


 それでもワーム弾が直撃するとズガン!と艦全体が振動する。


「右舷!20mm機銃弾幕薄いぞ!何やってんの!」


 艦長の名取大佐がお決まりのセリフで隊員を叱咤する。


「4番艦『利根』右舷エンジンに被弾!後退します」


 通信士が鷹匠に報告する。


 ホワイトピースの右舷側を航行するマンスフィールド級空中巡洋艦『利根』に電磁シールドを突き破ったワーム弾が右舷エンジンを直撃する。

 

 『利根』は垂直姿勢を保つ役割の右舷エンジンから炎と黒煙を上げると、右へ傾きながら徐々に高度を落としていく。


「利根中破。艦隊から脱落します」

「此処から先に修理可能な場所はないだろう……。『あしがら』をサポートに充ててエリア・千歳へ戻れ。

 ホワイトピースからパワードスーツを出せ!地上を掃討させるんだ!」


 現地修理は不可能と判断して利根と随伴艦の後退と、ワーム群への近接攻撃を指示する鷹匠准将。


「高瀬中佐、ソフィー大尉。ナホトカ湾西側の岬に居る巨大ワーム群に降下してワーム弾を撃っているミミズ集団を黙らせろ」


『『ラジャ』』


 鷹匠の命令に同時に返事をすると、ホワイトピース甲板から2機のパワードスーツが背中のバーニアを噴射しながら発艦して急降下していく。


「ソフィー大尉、先頭を任せる。50mmを連射して急速離脱だ!」

「ラジャ。女は度胸ね!」


 高瀬の指示に短く答えると、ホワイトスノーに塗装されたパワードスーツ『サキモリ』がライフル銃の様な50mmガトリングガンを眼下の巨大ワーム群の中心目がけてズドドドッと連射する。


 巨大ワーム群中心で大空の獲物に向かってワーム弾を吐き出す赤錆色の巨大ワームは、ワーム弾を掠める様に飛び込んできたガトリングガンの50mm砲弾に巨体を真っ二つにされると、青い血しぶきを上げて倒れていく。


 地上すれすれまで降下したソフィー少佐のパワードスーツのすぐ後を高瀬中佐のネイビーブルーのパワードスーツが追いつきながら、ミサイルランチャーを周囲の巨大ワーム群へ向けて放つ。


 灰色の雪と氷と海水混じりの汚泥を巻き上げて地上スレスレを急速離脱するパワードスーツ2機の背後で連続爆発が起こり巨大ワーム群が巨体を四散させてバタバタと倒れていく。


「やったわ!」

『流石私の一番弟子』


 歓声を上げるソフィー大尉と何故か上から目線のサキモリAIのパナ子。


「他にワーム弾を打ち上げている群れは?」

『居ないね。元々アレは空に向かって何かを吐くなんて習性は無いよ』


 高瀬の確認に答える21型パワードスーツAIのケン。 


 急降下攻撃を終えたサキモリと21型パワードスーツ2機は、ホワイトピースを中心とした空中艦隊外周を旋回しながら地上からのワーム弾攻撃を警戒する。


「……それにしても、盛大な攻防戦ですね」


 地上へ向けて一斉に5インチ・レールガンやミサイル、20mmバルカン砲による艦砲射撃を開始する自衛隊空中艦隊を眺めながら感想を呟くソフィー。


「これも現地で救出を待ち望む住民の為だ」


 自らに言い聞かすように応える高瀬中佐。


「……中佐。まさかイスラエル連邦の要請をまともに信じているのですか?」


 呆れた様に尋ねるソフィー。


「今回のナホトカ攻略は、現地住民を救出して欲しいというイスラエル連邦政府首相官邸直々の人道支援要請なんだ。

 腹心のモサード長官自ら師団司令部に要請してきたから間違いない」


 気丈に答える高瀬。


「そんなの自衛隊を戦場に駆り出す為の方便じゃあないですか!

 人道支援なんておだてられて、おまけにヘンテコな船にのったマスコミまで付いて来て……。日本人は本当にお人好しですねぇ~」


 ホワイトピースの後方に付かず離れずで進むソールズベリー商会『大黒屋丸Ⅱ』をちらりと見ながら呆れた様に応えるソフィー。


『お人好しだろうが何だろうが、助けを求める人に応え全力を尽くすのが我々の任務だ。高瀬中佐、ソフィー大尉。もうひと働きしてもらうぞ!』


 会話を聴いていたのか、すんなりと会話に入って命令する名取艦長。


『パワードスーツ部隊は、降下するWB21空中戦闘砲台部隊を先導してナホトカ市街地に進入せよ!』


「「ラジャ」」


 ホワイトピース後方のずんぐりしたシェフィールド級空中輸送艦から、アパッチ対戦車ヘリとハリアー垂直離発着戦闘機を融合させたWB21空中戦闘砲台が次々と発進してナホトカ市街地へ向けて降下していく。


 鷹匠の命令を受けた2機のパワードスーツは、空中艦隊から降下するWB21空中戦闘砲台編隊の先頭に移動するとシールドを展開、散発的にワーム弾を撃ち上げる生き残りの巨大ワーム目がけてガトリングガンやミサイルランチャーを放ちながら降下を開始するのだった。

ここまで読んで頂き、ありがとうございましたm(__)m


【このお話の登場人物】

・ソフィー・マクドネル=パワードスーツ『サキモリ』パイロット。ユニオンシティ防衛軍大尉。日本国自衛隊 第零特殊機動団に出向中。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター 鈴木 プラモ様です。


・パナ子=パワードスーツ『サキモリ』機体制御システム担当人工知能。民間企業PNA総合研究所の人工知能。

挿絵(By みてみん)

*イラストはお絵描きさん らてぃ様です。


・高瀬 翼=日本国自衛隊 統合幕僚監部所属 第零特殊機動団長。階級は中佐。乗機は菱友重工が開発した21型パワードスーツ(H21-PS)。

挿絵(By みてみん)

*イラストはイラストレーター 鈴木 プラモ様です。


・ケン=21型パワードスーツに装備された機体制御AI。

 公益財団法人 理化学研究所(理研)が開発した人工知能で、美衣子達三姉妹がセッティングしたお見合いでパナ子とゴールインした。天体観測を生かした遠距離射撃が得意。

挿絵(By みてみん)

*イラストは、しっぽ様です。


・鷹匠=陸上自衛隊第7師団師団長。准将。

・名取=航空・宇宙自衛隊 強襲揚陸護衛艦『ホワイトピース』艦長。大佐。

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